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ポートフォリオ.portfolio.ポートフォリオ学習ポートフォリオ評価

学習者の成果や省察の記録,指導者の指導と評価の記録などをファイルなどに蓄積・整理するもの.

ポートフォリオは基本的に学習のためのツールであり,評価が学習者と指導者,あるいは同僚間のやり取りを通じて継続的になされていく.学習者は,自らの臨床経験を学びに変えていく際に,具体的事例に関して,より一般化された理論や教訓と行き来しながら理解を深めていく.その理解の深化プロセスにおいて,自らと,あるいは同僚や指導者との対話を言語化したものがポートフォリオである.

わが国で以前から態度評価と言われてきた領域においては,妥当性の高い評価ツールがなかった.欧米を中心としたアウトカム基盤型カリキュラムの拡大に伴い,プロフェッショナリズム(医療専門職としてあるべき姿というような意味)の教育及びその評価が重視されたため,ポートフォリオ評価が注目されるようになった.

ポートフォリオ評価にまつわる一般的な疑問の一つは,レポート評価との異同である.従来から筆記試験によって評価しにくい領域に対しては,「レポート評価」という手法も用いられてきた.ただレポートには,学習者から指導者への一方通行という印象があるし,学習者の学習の最終結果を示せてもプロセスの評価にはなりにくい.例えば,誰かが代筆したレポートであっても,結果が良ければ良い評価を受ける可能性がある.また,レポートには学習プロセス,省察の内容などを書き込むことは求められないだけでなく,不要な情報とみなされる傾向があるだろう.ポートフォリオは,学習プロセスを学習者と指導者の間で吟味する際の情報を提供するツールであるという考え方もあるため,レポートとは考え方が根本的に異なる.

西岡は,評価基準を誰が設定するかによって,ポートフォリオ評価を,①基準準拠型:予め定まったルーブリックに基づいて評価,②基準創出型:指導者と学習者が絶えず議論しつつ評価項目を選択,③最良作品集(ショーケース型):学習者が主張したい内容を評価,の3タイプに分類した.学習者中心の教育という観点からは,学習者が独自の考えを展開しやすい②や③がよい面がある.一方で,家庭医療専門医試験などにおけるポートフォリオ評価は,ルーブリックの設定が不可欠であり,①が望ましい.

ポートフォリオ評価を総括評価として資格試験等の合否判定の目的で用いるには,評価基準(ルーブリック)を設定すること,口頭試問を組み合わせることが必要である.評価者は,指導者のように学習者の学習プロセスに付き合ってきたわけではなく,学習の最終結果としてのポートフォリオはレポートとさほど違わない.よって,ポートフォリオを学習者自身が省察して記載したかどうかを,評価者は確認する必要がある.ただ,ポートフォリオ評価に組み合わせる口頭試問の設計については,十分な知見が得られているとは言い難い.