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 判定基準設定は,英語ではstandard settingと呼ばれる.standardとは,学生集団において点数がある分布をなすときに,ある点数以上か未満かによって判定を下すときの分割点cut off)の数値であり,判定基準設定という日本語における「判定基準」がstandardの訳であると言える.ややこしいのは,「これだけのことができていれば合格である」という合格要件規準)が英語でcriterionと呼ばれ,日本語が基準なのか規準なのか話し言葉では分からなくなる点である.criterionは合格要件の「質的記述」なので,数値的基準とは異なることを改めて述べておきたい.
 現在のところ,現場では慣習的に60%を合否判定基準として使い続ける形の「似非絶対評価」がはびこっている印象が強い.なぜ60%なら合格なのかについて何ら理論的説明ができないし,問題の難易度が低くても高くてもお構いなしという点で,「似非絶対評価」としか呼べないのである.
 一方,平均-標準偏差×1.5とか,受験者の下位10%といった点を合否判定基準にする方法は一般的に相対評価と呼ばれてきたが,正確には成績分布による判定基準設定(norm-referenced standard setting)と表現すべきであろう.成績分布さえあれば合否判定基準が設定できるため,非常に簡便な方法である.また,入学試験のように合格者数が予め定まっている場合には,この方法を選択することになる.しかし,成績分布による判定基準設定は,学習者に「誰かを蹴落とせば自分が合格できる」という印象を与え,無為な競争意識を促してしまうという悪影響が指摘される.また,クラス全員が定められた学習目標をきちんとマスターしているのに,一定の人数が不合格になるのであれば,学習目標を設定した意味がない.進級試験においては,成績分布による判定基準設定は教育学的に最善ではないと言える.
 より望ましいと考えられるのは,到達度評価による判定基準設定(criterion-referenced standard setting)である.教育者側が「最低限この程度は修得して欲しい」と考える学習者のパフォーマンスを評価の測定値に置き換え,それを合否判定基準とする方法と言える.到達度評価による判定基準設定は,一般的に絶対評価と呼ばれてきた.