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訳者解説(末尾)をご覧下さい

D106

ドイツ州医師会(WL医師会):

医事法規集(1996)から

序言と目次

 

Arztrecht in Westfalen-Lippe (1996)

Vorwort und Inhaltsverzeichnis

 

 

序言

 

【 】内は訳者が書き加えたもの

医師は教育を受けている期間には、後に契約医あるいは勤務医として関わってくる権利と義務については、僅かしか経験しない。

わが国では規則の密度が顕著に増加した;人は法律の洪水と表現している。保健医療においても、連邦や州レベルの法律、並びに疾病金庫との契約及び各種の指針が増加した。医師の行動は、法律のコルセットに取り巻かれたようなもので、個々の場合において妥当と判断される領域は著しく狭められた。医師の業務を行うときに、基準が総て満たされているかを調べることに集中力が割かれてしまうと、医師の一部から嘆かれている。何か争いが生じたときに基準違反は問題になると語り伝えられている。争い事が生じたときには、患者や裁判はそのような規則を根拠とする。そのような対決から身を守り、とくに医師としての綿密さが不足したという非難にさらされないようにするために、多くの医師は、医師賠償責任法のために制限的に物事を決定する結果として、合理的に考えれば絶対に必要とは言えないのに、可能なかぎりの安全策を講じたあとに残されたリスクさえ除外しようとする。裁判の判決は、それによって医師の行動にも影響を及ぼす。これは一方において費用がかかり、他方において患者には、処置にリスクが存在するかのような印象を残すことになり、嘆かわしい。アメリカ合衆国では比較にならないほど恐るべき量に増加したことを、われわれは嘆きたい;しかしながら各医師が、このような法的な懸念を早期に考慮に入れることによって、効果的に身を守ることができる。

この「WLの医事法規」の特集号は、医師に関連する現時点における基準を映し出したものである。1991年6月の最終版以後に、ほとんど総ての法規定は内容的に全面的または部分的に変更された。1993年1月1日に発効した医療保険構造法がそれらの一部に影響を与えている、そして、例えばKVWL(ウエストファーレン−リッペ地方の保険医協会)の規則、契約医の開業認可規則及び Bundesmantelvertrag 【連邦レベルで定めた大綱的協約で、諸般の規定の基礎となる規定を集めたものと訳者は解釈している】に変更が生じた。KVWLの規則の変更後、二つの選挙規定もそれに合わせることになった。これらの法規定と、判例に合わせた懲戒規定も新しい版に掲載されている。

さらにWL医師会の職業規則及び卒後研修規則も根本的に改訂された。1993年1月30日と1994年4月23日の医師会総会の決定に先行して、同じことが連邦レベルで審議されている。WLでは職業規則と同様に卒後研修規則も、ドイツ医師大会で決められた原型規則に準拠している。特に卒後研修規則は、ドイツ再統一という背景の下に包括的に改訂された。これは多数の新たに加わった専門科に現われているだけでなく、「自由選択卒後研修」や「Fachkunden特殊技術の専門」に分類されるような資格の種類を新たに設けたことにも見られる。

「共同救急業務規則」並びにその実施規定もまた改訂を必要としている。変更された条件によって、救急業務にいろいろな問題が生じたので、基本的な助言が出されている。WL保険医協会は、目下WL医師会で審議されている草案を提出した。救急業務規則の新しい版が出るのは、1996年中頃になるであろう。この時点まで他の法規の印刷を延期することはできなかった。したがって、新しい救急業務規則が議決され次第、追加の形で発表することにする。

この特集号は前の版と同様に数項目よりなる:

  1. 組織一覧:読者はここでWL医師会、保険医協会、並びに両者に共通の組織と下部組織の構成の全体像を見ることができる。
  2. 連邦法による規定:ここには連邦医師法だけを印刷した。社会福祉法第X編【医療保険構造法】は、多くの医師が別の出版物として全文または抜粋を見ることができるので、ここでの印刷は省略した。
  3. WLの医事法規:ここにはWL医師会関連規定(T)、WL保険医協会関連規定(U)及び共同規定(V)を掲載した。

十分な法律の知識は法律に適った行動を容易にする。法律資料は最初はなじめないかもしれないが、面倒なことを回避するために、この言葉を思い出してほしい。ここに集録したものは、医師に知ってもらわなければならない核心部分だけを含んでいる。これらの法規を通覧することによって、行動や判断が一層確実になる。もっと質問があれば、両組織は情報を提供する。

 

1995年、ミュンスター/ドルトムント

 

Dr.med. Ingo Flenker

Praesident der Aerztekammer

Westfalen-Lippe 

(WL医師会会長)

 

Dr.med. Ulrich Oesingmann

1. Vorsitzender der

Kassenaerztlichen Vereinigung

Westfalen-Lippe 

(WL保険医協会理事長)

 

 

目次

A)組織の一覧………………………………………………………………………………… 7

WL医師会/医師援護……………………………………………………………………… 7

WL保険医協会……………………………………………………………………………… 8

WL広報室/ウエストファーレン医師会雑誌…………………………………………… 8

WL医師会の行政区画及び各区画のアドレスと構成…………………………………… 9

B)連邦法による医事法規

連邦医師法……………………………………………………………………………………11

医療保険構造法【これは医療保険制度の根幹となるもっとも大切な法律であるが、

膨大であるので、ここには集録されていない】

C)WLの医事法規

I.WL医師会

医療職法……………………………………………………………………………………19

定款…………………………………………………………………………………………39

業務規定……………………………………………………………………………………45

職業規則……………………………………………………………………………………51

卒後研修規則………………………………………………………………………………61

一般医学における専門教育実施に関する規定……………………………………… 127

選挙規定

a)医師会総会……………………………………………………………………… 129

b)地域【12地域よりなる】理事会及び調停委員会………………………… 135

医師供給の規定………………………………………………………………………… 139

調停規則………………………………………………………………………………… 155

「医師責任義務(損害賠償)問題に対する鑑定委員会」の規定………………… 157

医師生涯教育に対するアカデミーの規定…………………………………………… 159

行政手数料規則………………………………………………………………………… 161

会費規則………………………………………………………………………………… 163

倫理委員会規則…………………………………………………………後日雑誌に掲載

U.WL保険医協会

契約医(ZV−医師)に対する開業許可規則……………………………………… 165

医師−一次疾病金庫−連邦基本協約………………………………………………… 175

医師−補充金庫−連邦基本協約……………………………………………………… 195

定款……………………………………………………………………………………… 213

業務規定………………………………………………………………………………… 221

懲戒規定………………………………………………………………………………… 225

選挙規定

a)代議員大会……………………………………………………………………… 229

b)地域の長及び委員会…………………………………………………………… 233

決算−指針……………………………………………………………………………… 237

共同審査協定【保険の診療費請求の審査】………………………………………… 239

V.医師会と保険医協会との共同規定

共同救急業務規則…………………………改訂中……………………後日雑誌に掲載

共同救急業務規則のための実施規定……改訂中……………………後日雑誌に掲載

 

 

訳者解説

 本ホームページ掲載資料 D101 の訳者解説で述べたように、医師の自治組織である州医師会は、州政府から医師を監督する権限を委譲され、医師業務を広範に管轄している。現在ドイツは16の州からなり、各州に一つの州医師会が設置されているが、例外として1,700万人というドイツ最大の人口を有するノルトライン・ウェストファーレン州では、ノルトライン医師会とウェストファーレン・リッペ医師会の二つがあり、何れも州医師会としての機能を有している。

 ここに紹介した医事法規集はウェストファーレン・リッペ医師会が編集したもので、州医師(会)雑誌1996年1月号の別冊として出版されたものである。各州医師会は、所属する医師のために医事法規集を作成している。医療に関連する法律・規則の類は膨大であるが、ここに示した医事法規集には、医師として知っておかなければならない身近な法規類が集録されている。

 序言と目次に目を通すことにより、ドイツの医療・医学教育の輪郭と骨格を伺い知ることができよう。そこには私たちに馴染みの深いアメリカなどの英語圏とは異なった要素が見出せると思うが、私たちにとって示唆に富むものが少なくないので、このホームページにおいて逐次紹介していきたいと思っている。ちなみに、すでにホームページに掲載した「D101:ドイツ医師のための職業規則」も、この医事法規集に含まれている。

 連邦レベルの法規類は、国際法規を整備している図書館で読むことができる。また、連邦レベルの指針類は、ドイツ医師会雑誌に掲載される。一方、州レベルの法規は、いくつかの基本的なものを除いては州の法規集に掲載されていないことが多い。このようなもの、及び医師の日常業務に結びついた規則、指針、研修などの類は、州医師(会)雑誌に詳しく掲載されるが、日本の図書館で州医師(会)雑誌を購入しているところは存在しないと思われるので、私は昨年からウェストファーレン・リッペ医師(会)雑誌を個人的に購入することにした。過去に遡って調べることは不可能であるが、このレベルでの資料が必要になったときには役に立つかもしれないので、どうぞ御照会下さい。

訳者 岡嶋道夫

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