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訳者解説(末尾)をご覧下さい

訳者注:この医療職法は200059日に改訂されたが、以下の翻訳は古い版のままである。改定版によると、医療職法に含まれる職種に新たに心理療法士が加えられた。これにより、医療職は医師、薬剤師、心理療法士、獣医師、歯科医師の5職種となり(§1参照)、これに伴い心理療法士の卒後研修に関する条文も加えられた(未訳)。

D107

ドイツ Nordrhein-Westfalen 州における

  医療職法

1994年4月27日の公布条文による

 

Heilberufsgesetz(HeilBerG)

in der Fassung der Bekanntmachung

vom 27.April 1994

 


目次



第1章 カンマー(複数)

 

§1 設立と所在地

§2 所属

§3 欧州連合EU加盟国の国民

§4 地方及び地区の支所

§5 カンマー所属者のリスト

§6 任務

§7 倫理委員会

§8 診療過誤の鑑定

§9 指図に基づいて履行する行政の 必要事務

§10 組織

§11 委員の選挙

§12 選挙権

§13 被選挙権

§14 委員資格喪失

§15 カンマー会議の構成

§16 候補者の推薦

§17 補充委員

§18 選挙規則

§19 改選

§20 議決

§21 院内会派の形成

§22 委員会

§23 議決事項

§24 カンマー理事会の任務

§25 カンマー理事会と州政府

§26 理事長

§27 主規定

§28 監督

 

第2章 職業

 

§29 職業義務−開業

§30 生涯研修−救急業務−記録

§31 職業規則の公布

§32 職業規則の内容

 

第3章 卒後研修

 

§33 専門科称号

§34 称号の規定

§35 称号の承認

§36 卒後研修

§37 卒後研修機関

§38 卒後研修を指導する資格

§39 試験

§40 旧東ドイツ地域

§41 専門科−代理−救急業務の制限

§42 卒後研修規則

§43 以前になされた承認

 

第1節 医師の卒後研修

 

§44 専門科及び専門分科の称号

§45 卒後研修の対象

§46 連邦の他の州による承認

 

第2節 薬剤師の卒後研修

 

§47 薬剤師

 

第3節 獣医師の卒後研

 

§48 獣医師

 

第4節 歯科医師の卒後研修

 

§49 歯科医師

§50 卒後研修の対象

§51 連邦の他の州による承認

 

第4章 一般医学専門教育

 

§52 実務医Praktischer Arzt

§53 卒後実地修練

§54 EU−加盟国における教育

§55 教育規則

 

第5章 責

 

§56 軽微性−責問

 

第6章 職業裁判権

 

§57 職業義務違反

§58 職業裁判の処分

§59 職業裁判所の種類

§60 構成

§61 職業裁判官

§62 非裁判官の陪席裁判官

§63 代理人

§64 職務からの排除

§65 事務分配

§66 宣誓

§67 補償

§68 地域管轄

§69 申請−自己の嫌疑を晴らす手続

§70 弁護

§71 申請の取扱

§72 手続の段階

§73 開始の決定−審査の指揮者

§74 刑事訴訟手続が優先

§75 被疑者の尋問

§76 証拠調べ

§77 関係人の召喚

§78 証人及び鑑定人

§79 開始決定の補足

§80 調査の終了

§81 決定手続

§82 公判手続の準備

§83 公開−法廷警備

§84 欠席−手続不能

§85 公判手続

§86 証拠調

§87 最終審問

§88 追加された非難

§89 判決確定の対象

§90 判決の言葉

§91 評決

§92 判決の言渡

§93 手続の打切り

§94 打切りの決定

§95 移送決定

§96 控訴

§97 不利益変更(改悪)の禁止

§98 州職業裁判所の事前手続

§99 決定の棄却

§100 期日指定

§101 控訴審判決

§102 却下

§103 異議申立

§104 再審

§105 費用の決定

§106 被疑者の必要な経費

§107 訴訟費用の確定

§108 判決の確定力及び執行力

§109 剥奪された権利の回復

§110 刑事訴訟法の適用

§111 職務共助と司法共助

§112 職業裁判権の費用


 

 



 

 


【 】内は訳者が書き加えた注である。

第1章

カンマー(複数)

 


§1 設立と所在地

ノルトライン-ヴェストファーレン州では職業を代表するものとして【訳者注:これらはアルファベット順】

1)      医師はノルトライン及びヴェストファーレン−リッペ医師会(複数)Arztekammern Nordrhein und Westfalen-Lippe、

2)      薬剤師はノルトライン及びヴェストファーレン−リッペ薬剤師会(複数)Apothekerkammern Nordrhein und Westfalen-Lippe、

3)      心理学的心理療法士及び小児・思春期心理療法士はノルトライン-ヴェストファーレン心理療法士会(単数)Psychologischen Psychotherapeutinnen und Psychotherapeuten sowie der Kinder- und Jugendlichenpsychotherapeutinnen und der Kinder- und Jugendlichenpsychotherapeuten (Psychotherapeutinnen und Psychotherapeuten) 【訳者注:2000年5月9日に追加された】

4)      獣医師はノルトライン及びヴェストファーレン−リッペ獣医師会(複数)Tierarztekammern Nordrhein und Westfalen-Lippe、

5)      歯科医師はノルトライン及びヴェストファーレン−リッペ歯科医師会(単数) Zahnarztekammer Nordrhein und Westfalen-Lippe

を設立する。 2これらは公法の団体で公印を使用する。 3主規則でカンマーの所在地を定める。

【ドイツには16の州があり、各州に1つのカンマーがある。しかし、人口の大きいノルトライン・ヴェストファーレン州は例外として、上記のように2つのカンマーを有する】

 

§2 所属

(1) 1カンマーに所属するのは N−W州において職業に従事する総ての医師、薬剤師、獣医師及び歯科医師であるが、職業に従事しなくても通常の住所を有する者も所属する。 2監督官庁で官吏として従事している者は除く。 3薬剤師のための免許規則による実務製剤教育を受けている者には、任意加入が認められている。

(2) N−W州で職業に従事、または職業に従事しなくても通常の住所を有し、国が認定したデンティストも歯科医師会に所属する。

【訳者注:デンティストは以前存在した修業年限の短い教育を受けた歯科医師で、現在の歯科教育を受けた歯科医師と異なる】

(3) 1総てのカンマー所属者は、1ヵ月以内に管轄のカンマーに申告し、法的に必要な資格証明書を提出しなければならない。 2カンマー所属者は職業従事の開始、終了、及びその他の変更並びに住所の変更を届け出て、カンマーの命令を守らなければならない。

 

§3 欧州連合EU加盟国の国民

(1) 欧州連合の他の加盟国、または欧州経済圏に関する協定の他の契約国の国民として、この法律の適用地域において、欧州連合の法律により貿易外取引の枠内で、そこにおいて職業的開業、または居所を持たずにその職業に時折または一時的に従事する医師、薬剤師、獣医師及び歯科医師は、欧州連合の他の加盟国、または欧州経済圏に関する協定の他の契約国内に同人の居所を有するかぎり、§2 (1) 1項の例外としてカンマーには所属しない。

(2) 1このような者は、この法律の適用地域内での予定した職業従事を管轄のカンマーに届け出なければならない。 2届出には、職業従事に必要な証明書類を添える。 3緊急な場合には、届出を遅滞なく後から提出することができる。

(3) 1かれらは、職業従事に関してカンマー所属者と同じ権利と義務を有する。 2かれらには、§29 (1)、§30 及び§31 により公布された職業規則並びに本法律の第4章が準用される。

 

§4 地方及び地区の支所

カンマー(複数)は必要に応じ地域(Bezirk)及び地区(Kreis)の支所を設置する。

 

§5 カンマー所属者のリスト

(1) カンマーはカンマー所属者のリストを作成する;総てのカンマー所属者は、各自のカンマーにそれが必要とする事項を伝える義務がある。

(2) 必要な事項に属するものは:

1.     氏名、性別、生年月日、出生地、出生州、現在及び過去の国籍、職業及び自宅の住所;

2.     国家試験、免許または職業従事許可、必要な場合には就労許可;認定を受けた専門科−、専門分科−及び付加称号、及び現在医療職として従事している専門科;職業従事の期間;自立従業の場合は専門職の協力者の数;

3.     国内及び外国のアカデミックな資格の取得;

4.     §35 による卒後研修の認定。

 

§6 任務

(1) カンマーの任務は:

1.     公的保健医療業務と公的獣医業務の任務を満たすことを支援する、

2.     監督官庁の要請により意見を述べる、並びに監督官庁の要請により専門的意見を述べ、専門の鑑定を行うために専門家を指名する、

3.     診療時間外における医師及び歯科医師の救急業務を確保して公示し、並びに救急業務規則を公布する、

4.     保健医療及び獣医制度の質の確保並びにカンマー所属者の職業上の生涯研修を促進、及びこの法律に準拠した卒後研修を規定すること並びにカンマー所属者の付加資格取得を証明する、

5.     高度の職業的社会身分を保つように配慮し、カンマー所属者が職業義務を満たすことを監督する;このために行政行為の法律・条令などを公布する、

6.     カンマー所属者の職業上の利益を擁護する、

7.     カンマー所属者相互の順調な関係のために配慮し、職業従事から発生したカンマー所属者同士の間、並びにそれと第三者との間の争いを、カンマーとして扱えるレベルのものであれば調停をする、

8.     監督官庁の同意を得たケースにおいて、診療過誤の鑑定のための部署を設立する、

9.     カンマー所属者とその家族に対する特別規定により、福祉施設及び監督官庁の許可を得て援護施設を設置する、

10.  氏名、専門科称号、専門分科称号、付加称号及び住所を付したカンマー所属者の届出とその取消は、職業従事地域を管轄する郡長または市長 − 保健局/獣医局 − に伝える。同じことは§3 (2) による届出にも適用される。

11.  カンマー所属者に証明書を公布する。

(2) 国及び市町村の役所はカンマーに、その職務範囲の問題について発言する機会を与える。

(3) 1カンマーは、ドイツ連邦共和国に住所を有する同じ職業の他のカンマー所属者を、他のカンマーの同意を得て、その援護施設に収容することができる、そしてその援護施設をドイツ連邦共和国に住所を有する同じ職業の他の援護施設または保険施設に結びつけたり、または他の援護施設と一緒に共同の援護施設を創設することができる。 2カンマーは詳細を規定により定めることができる。

(4) 共同の施設、とくに診療過誤の鑑定所は、原則として同じ医療職のカンマーだけで運営される。

 

§7 倫理委員会

(1) 医師会は、規則により倫理委員会を設立し、とくに以下のことを規定する:

1.     任務と管轄、

2.     活動の条件、

3.     構成、

4.     専門知識の要請、独立性及び会員の義務、

5.     手続、

6.     事務管理、

7.     議長の任務、

8.     手続の費用、

9.     会員の賠償。

(2) 大学の医学部に設置されている倫理委員会は、大学領域に対して医師会の倫理委員会の代りをする。

 

§8 診療過誤の鑑定

診療過誤の鑑定のための部署が、規則により付随した施設として設置されるときは、特に以下のことを規定する:

1.     その任務、

2.     その業務に対する条件、

3.     その構成、

4.     専門知識の要請、独立性及び会員の義務、

5.     申立権限を含む手続、

6.     議長の任務、

7.     カンマーの業務報告の枠内での報告。

 

§9 指図に基づいて履行する行政の必要事務

(1) 指図に基づいて履行する行政の必要事務として、以下の任務の権限が薬剤師会、医師会、歯科医師会及び獣医師会に委ねられる:

【訳者注:指図は上級官庁が下級官庁に任務の遂行に必要な指図を行う権限を有すること】

1.     医師会は、1988年12月20日の社会福祉法典(SGB)第5編(V)公的医療保険(BGBl. I S.2477)の§121 a (改訂版に合せて)による人工受精実施のための認可を交付する権限を有する。

2.     医師会と歯科医師会は、1987年1月8日のレントゲン法(RoV)(BGBl. I S.114)§16 (3) (改訂版に合せて)による医師及び歯科医師の職を置く。

【訳者注:この職は、放射線防護に責任を有する者及び放射線を扱う医師に、放射線被曝を減少させる提案をする】

3.     医師会、歯科医師会及び獣医師会は、法規命令により保健医療及び労働保護を管轄する省からその任務が委譲されていれば、RoV 及び1989年6月30日の放射線保護法(BGBl. I S.1321)(改訂版に合せて)による専門の能力知識習得に関する証明書の発行に対して権限を有する、

4.     薬剤師会は、1987年2月9日の薬剤師営業規則(BGBl. I S.547)§§23 及び 24 (改訂版に合せて)による時間外待機【営業】の規定と処方箋集積所の認可に対して権限を有する。

【訳者注:§24 によると、処方箋集積所は、薬局のない辺鄙な地域に、薬局所有者によって設置することが許可される。また、処方箋を集め、調剤を渡す手続が示されているが、一般企業や医療職の近親者は処方箋集積所を持つことができない。】

(2) 1監督官庁は、(1) による任務を法によって実施するために指図することができる。 2それは、任務の目的に適った実施のために以下のことができる

1.     一般的指図を与える、

2.     規則に適合した任務の遂行が保証されないと思われたり、または超地域的な利益が脅かされると思われたときには、特別な指図を与える。

(3) 監督官庁は保健医療を管轄する省であ

る。

(4) 費用補填のためにカンマーは料金を徴収する。

 

§10 組織

カンマーの組織は:

1.     カンマー会議、

2.     カンマー理事会、

3.     理事長。

 

§11 委員の選挙

(1) 1カンマー会議の委員は直接、自由、同等及び秘密の選挙によって選出される。 2選挙期間は§19 の場合以外は4年である。 3期間は新しいカンマー会議の招集によって終る。

(2) 1選挙は、比例代表制選挙の原則により、カンマー地域内において各選挙地区に分れ、名簿と立候補者推薦に基づいて実施される。 2選挙区は行政の地域とする。 3各有権者は1票を有する。

(3) 11名だけの立候補者推薦が有効である選挙区では、応募者の中から相対的多数投票の原則によって選出される。 2有権者は、その選挙区において選出されるカンマー会議の委員の数と同数の票を有する。

【選挙のやり方には各種の方式がある。(3)の選挙方式は私たちに馴染みの少ない方式であるが、法律辞典を読んでも理解できなかった】

 

§12 選挙権

(1) 総てのカンマー所属者はカンマー会議に対して選挙権を有するが、以下の者を除く、

a.     総ての要件の処理に対して世話を受けている者。世話人の任務の範囲が、民法§1896 (4) 及び§1905 に記された要件を含んでいなくても適用される。

b.     判決により選挙権を有しない。

(2) 選挙権の行使の条件は選挙人名簿への登録である。

 

§13 被選挙権

(1) 選挙日に最低3ヵ月カンマーに所属していて、選挙権を有するカンマー所属者は誰でも被選挙権を有する。

(2) 選挙日に以下に該当するカンマー所属者は被選挙権がない

a.     判決により被選挙権または公職に就任する資格を有しない、

b.     職業裁判所の決定により被選挙権を有しない(§58 (1) c)、または

c.     専任職としてカンマーまたは監督官庁で従事している。

 

§14 委員資格喪失

(1) カンマー会議の委員は以下の場合にカンマー会議のポストを喪失する:

a.     放棄、これはカンマーの理事会に対して書面で明らかにしなければならない、また取消はできない;

b.     後日になって被選挙権を喪失(§13)。未決拘禁はカンマー会議のポストの喪失を招かない。

(2) 1(1) b の場合、カンマーの理事会は、ポスト喪失となったかどうかを決定する。 2決定は、理由を付し、協力した理事会の委員によって署名され、ポストを喪失することになったカンマー会議の委員に送付される。

 

§15 カンマー会議の構成

(1) 何れのカンマー会議も最低41名、最高121名の委員によって構成される。

(2) 各選挙地区ごとに

a.     250名の医師会所属者、

b.     40名の薬剤師会所属者、

c.     30名の獣医師会所属者、

d.     75名の歯科医師会所属者

に対して1名のカンマー会議の委員を選出する。

(3) (2)により最低数に達しなかったり、または最高数を超えている場合には、選挙地区のカンマー所属者の数を考慮し、カンマー会議の委員を選ぶ選挙地区に相応して、その数を増減する。

 

§16 候補者の推薦

(1) 1選挙は候補者の推薦に基づいて行われるが、それは医師会では最低40名、薬剤師会では最低20名、歯科医師会では最低15名、獣医師会では最低10名の選挙地区内で選挙権を有する者によって署名されなければならない。 2候補者推薦を編成する場合に、女性も適切に考慮されるものとする。

(2) カンマーは、候補者の信任者の要請があれば、氏名及び自宅を記入したカンマー所属者の名簿を手渡す。

 

§17 補充委員

カンマー会議の委員が退いたときは、選挙候補者に推薦され、それまでに選出された者に次ぐカンマー所属者、§11 (3) の場合は最高の投票数を得たカンマー所属者がそのポストに就く。

 

§18 選挙規則

監督官庁は、カンマーから選挙規則について聴取した後、とくに下記に関してカンマー選挙に必要な法規を公布する、

1.     選挙の日時の決定と公示、

2.     選挙組織の形成と任務、

3.     選挙区における委員定数とその公示、

4.     選挙人名簿に掲載される条件、その実施、閲覧、訂正、まとめ、選挙人名簿に対する異議、及び有権者の告知について、

5.     立候補者推薦、その認可及び公示の条件、

6.     投票用紙の形態、

7.     投票のための書類の送付、

8.     選挙行為、

9.     票計算と有効の条件、

10.  各立候補者の席次を含む選挙結果のまとめとその公示、

11.  カンマー会議における委員資格の取得と喪失、後継者の任命及びその公示、

12.  選挙調査、

13.  選挙異議申立、

14.  再選挙に対する条件、

15.  申立によるカンマー会議の改選(§19)。

 

§19 改選

カンマー所属者の少なくとも3分の2の要望がある場合には、監督官庁によって改選の命令が出される。

 

§20 議決

(1) 1本法または主規定または他の規定が別に定めていなければ、カンマー会議の決定は多数決による。 2同数票のときは否決されたものと決定する。

(2) 委員が少なくとも半数出席していれば、カンマー会議の議決は有効となる。

(3) カンマー会議は主規定または他の規定の定めるところにより理事会と理事長を選出する。

 

§21 院内会派の形成

(1) カンマー会議の委員の少なくとも百分の5の提携により、院内会派を作ることができる。

(2) 院内会派の形成、その名称、会長、代理人及び会派のメンバーの氏名は理事長に書面で提出する。

 

§22 委員会

(1) カンマー会議は、審議の準備のために、選挙期間の期間に相当する委員会を設置する。

(2) 委員会委員及び代理人はカンマー議会によって決定する;院内会派が形成されていれば、そのパーセント割合が考慮される。

(3) 委員会はその中から1名の委員長とその代理人を選出する。

 

§23 議決事項

(1) カンマー会議は主規定、業務規則、料金規則、会費規則、予算案を議決する。

(2) 1主規定、業務規則、料金規則及び会費規則は監督官庁の承認を必要とする;監督官庁は例外を定める。 援護施設に対する規定の承認は、保険企業監督を管轄する省の了解によって得られる。

(3) 1承認された規定はカンマーの費用で Nordrhein-Westfalen 州の省報に公示される。 例外は監督官庁が定める。

(4) 1カンマー会議は、職業を代表する連邦レベルの委員会に、その代表を選出する。 2§22(2)の後半が準用される。

 

§24 カンマー理事会の任務

(1) カンマー理事会は理事長、副理事長及び最低3名の理事で構成される。

(2) 1カンマー理事会は主規定によりカンマーの業務を行う。 2理事会は職業教育法§58 (2)1項により法規を公布する。

【訳者注:職業教育法(連邦法)の§58 (2) 1項:職業教育実施のために、職業教育委員会は本法に基づき管轄官庁によって公布される法規を決定しなければならない】

(3) カンマー理事会は、選挙期間が経過した後も、新しいカンマー理事会が業務執行を引継ぐまでは業務を継続する。

(4) カンマー会議の絶対多数が要望すれば、カンマー理事会の改選は選挙期間の経過前でも行われる。

 

§25 カンマー理事会と州政府

それぞれの職業のカンマー理事会は、職業的身分に共通した審議とその代表となるために、州政府から権利と義務が与えられている。

 

§26 理事長

(1) 1理事長は法律的に、また法律外でもカンマーを代表する。 2カンマーが財産法上義務づけている説明は書面形式を必要とする。 3それがカンマー理事会の理事長及び他の1名の理事によって署名されていれば、法律的に拘束力がある。

(2) 1理事長はカンマーの経常業務を処理し、カンマー理事会の決定を実行する。 2理事長はカンマー会議並びに理事会の会議を召集し、この会議において議長を務める。

(3) 委員の3分の1が要請するか、またはカンマー理事会が決定した場合には、理事長はカンマー会議を召集しなければならない。

(4) 理事長に支障があるときは、副理事長が代理をする。

(5) カンマーの理事長は、保険医協会または保険歯科医協会の理事を兼ねることはできない。

 

§27 主規定

カンマーの組織の権利と義務(§10)は、本法によって規定されていなければ、主規定によって定められる。

 

§28 監督

(1) 1監督官庁はそれぞれを管轄する専門分野の省である。 2それは一般的な団体監督を行う(州組織法§20 (1))。【訳者注:州組織法§20 (1) 団体の監督は、団体がその任務を、適用される法律に一致して満たしていることを含む(一般的な団体監督)】 3援護施設は、管轄の省が専門分野の省と合意するならば、保険監督の下に置かれる。 4業務計画認可、資本、資産、及び監督権限に関する保険業監督法の規定が準用される(§7 (2)、§§13, 14, 53c, 54, 54a, 54d, §55 (1, 4, 6 及び 7)§§56, 57-59, 81, 81a, 82, 83, 84 及び 86)。

(2) 監督官庁はカンマー会議の会議に招待される。

(3) 各カンマーは監督官庁に満了した業務年に関する報告を毎年提出する。


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第2章

職業従事


 


§29 職業義務−開業

 (1) カンマー所属者は、その職業に良心的に従事し、その職業に関連して寄せられた信頼に応える義務がある。

(2) 自立して従事しようとするカンマー所属者は、従事する前に開業地区を管轄する郡長または市長 − 保健局/獣医局 − に個人的に申請し、資格証明書の認証を受けたコピーを提出する。

(3) 1病院外及び個人病院施設外での医師及び歯科医師としての従業は、営業法の§30 により、自分の診療所における開業に結びつく。法律外の規定が別途の許可を与えるか、または指示に従うよう義務付けられた医師または歯科医師業務を、開業している医師/歯科医の診療所で行うときは別である。

【訳者注:営業法(連邦法):§30 私的診療施設 (1) 私的診療施設及び私的助産所並びに私的神経クリニックの経営者は、管轄官庁の認可を得ることが必要である。下記の場合には認可されない、1. 施設またはクリニックの指導または管理に関連して、経営者が信頼できないことを明らかにする事実が存在する、1a. 患者の十分な医学的及び看護的給付が保証されないと思わせる事実が存在する、2. 経営者により提出された記載と計画により、施設またはクリニックの建築上及び他の技術的設備が、衛生警察の条件に適合しない、3. 施設またはクリニックが、他の人たちが住んでいる建物の一部分に設けられることになっており、診療を実施することによりこの建物の共同居住者に対して、大きな支障や危険をもたらす可能性がある、または 4. 施設またはクリニックが伝染性疾患を有する患者または精神疾患患者の入院のためと定められ、それが場所的に隣接の土地の所有者または居住者に対して支障または危険をまねく可能性があるとき。 (2) 認可を与える前に、地区警察及び町村役場は (1) 3. 及び 4. の問題に関して聴取を行う。】

2非営業的または職業的な医師/歯科医師の給付を提供する所有者のところでの従事は例外である。 3診療所の共同利用は、各参加者が医師/歯科医師の職業に従事する資格を有するときにだけ認可される。 4 1項と 3項は獣医師にも準用される。 5職業法上の利益が損われないと保証されたときには、カンマーは 1項による禁止から、特別な個別ケースにおいて例外を許可することができる。

(4) 郡長または市長は、カンマー所属者による職業義務違反の疑いがある場合には、カンマーに教えなければならない。

(5) 1職業義務違反の存在に対して十分な根拠があるときは、カンマーはその解明に必要な個人に関連するデータを公的な役所に上げて処理する権限がある。 2これらの役所は必要な説明を行う義務がある。

 

§30 生涯研修−救急業務−記録

職業に従事しているカンマー所属者は、とくに以下の義務を有する、

1.     職業上の生涯研修を行い、そのさいにその職業従事に対して適用される規定について知る、

2.     医師及び歯科医師として自分の診療所で従事するかぎり、原則として救急業務に参加する、そして

3.     医師、歯科医師及び獣医師として従事するかぎり、その職業従事において行った確認事項及び用いた処置に関して記録を作成する。

 

§31 職業規則の公布

 (1) 1職業規則は§30 の詳細を規定する。 2それは特に§30 2. については、参加の義務は特定の行政地域に対してのみ適用される;救急業務参加からの免除は、重大な理由、特に身体的障害または負担のかかる家族への義務、並びに救急給付を伴った臨床待機業務への参加の理由があるときに、申請によって全部、部分的または一時的に認められる。

(2) 職業規則は管轄のカンマーが公布し、管轄の専門分野の省による承認が必要である。

【訳者注:「医師のための職業規則」は本ホームページ資料D101で紹介した】

 

§32 職業規則の内容

職業規則は§29 の枠内において、職業義務に関するより拡大された規定を含み、下記について、特に個々の医療職に対して考慮される、

1.     守秘義務及びその他の職業従事に対して適用される法規定の遵守、

2.     自分の診療所、外来給付を行う診療施設、及び医学的給付を行うその他の施設における職業従事、

3.     質保証処置にカンマー所属者が参加する、

4.     鑑定書及び証明書の発行、

5.     診療所及び薬局の公示、

6.     診療所及び薬局の施設、

7.     診療時間の実施及び薬局の開店時間、

8.     職業業務の共同実施、

9.     報酬が適切であることと後で確かめることが可能であること、

10.  それぞれの医療職の特殊性によって必要とされる宣伝の禁止と制限の程度、

11.  療法及び補装具の処方と推薦、

12.  他の職業所属者に対する職業上の態度、及び職業所属者と他の職業所属者との間の共同作業、

13.  患者のデータの取扱、特に診療所閉鎖、診療所引継ぎ、並びに医師の計算所への伝達、

14.  代理、助手及び他の協力者の従事、及び

15.  人材の教育、

16.  医師、歯科医師及び獣医師の特別な裁判手続の実施、

17.  生涯研修企画への参加、

18.  獣医師クリニックの施設、設備及び経営。


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第3章

卒後研修

 


§33 専門科称号

カンマー所属者はこの章に従って、その職業称号のほかに、特定の職業上の専門科(専門科称号)または専門科の中での専門的知識に対する専門分科(専門分科称号)、または他の付加的に習得した知識(付加称号)を示す称号を別に標榜することができる。

【訳者注:例示。職業称号=医師;専門科称号=一般医学専門医、内科専門医、外科専門医など;専門分科称号=内科専門医に属する内分泌、心臓など、外科専門医に属する胸部外科など;付加称号=医学情報、熱帯医学、スポーツ医学など】

 

§34 称号の規定

 (1) 1カンマーは、科学の発展及び該当する医療職所属者による住民または動物への適切な給付という観点から必要である場合に、そのカンマー所属者に対して、§33 による称号を規定する。 2そのさいに、欧州連合の法律を考慮する。

(2) (1) に示した条件が存在しなくなり、欧州連合の法律が廃止に矛盾しないときには、称号の規定は廃止される。

 

§35 称号の承認

 (1) 1承認を得た者は、§33による称号を標榜することができる。 2規定された卒後研修を成果を挙げて修了したカンマー所属者は承認が得られる。

(2) 関連のある専門科については、複数の専門科称号を標榜することができる。

1970年代から1992年まで、卒後研修規則は二つまで専門科称号を標榜することを認めた。その後は原則として一つに改められた。それは職業選択の自由に関する裁判所の判決によるもので、その事情については、岡嶋:日本医事新報No.3810、73-75頁、1997で述べられている】

(3) 専門分科の称号は、その専門分科が属する専門科の称号を一緒に付けなければ標榜できない。

 

§36 卒後研修

(1) 専門科及び専門分科の卒後研修は、実務の職業従事及び理論の教授による。

(2) 専門科における卒後研修は3年を下回ってはならない。

(3) 専門分科の卒後研修は、その専門分科の属する専門科での卒後研修の枠内において、分割して実施してよい。

(4) 1専門科及び専門分科における卒後研修は、全日性及び本職としてのポストで行われる。 2一つの卒後研修場所及び一人の卒後研修指導者の下における6ヵ月以下の期間は、規定がある場合にのみ算入される。 3管轄のカンマーは、各専門科及び専門分科における卒後研修に対して、卒後研修の目的に合致するならば、2項による例外規定を作ることができるし、また個別の例外を認めることができる。

(5) 1卒後研修は、個人的理由のある場合に、正規の従業時間の半分以上であれば、パートタイムとして行うことができる。 2総合期間と質は、全日性の卒後研修の条件に相当しなければならない。 3決定は管轄のカンマーが行う。

(6) 自分の診療所での従事を含む職業従事期間は、専門科及び専門分科の卒後研修期間として算入されない。

(7) 卒後研修は、§33 のそれぞれの称号の取得に必要な知識と能力を充実させることを包含する。

(8) 詳細、特に卒後研修の内容と期間については、カンマーが卒後研修規則の中で規定する。

 

§37 卒後研修機関

 (1) 専門科、専門分科及び付加称号取得のための卒後研修は、大学の施設または医学的給付を行う認可を受けた施設(卒後研修機関)において、認定を受けたカンマー所属者の責任ある指導によって実施される。

(2) 1(1) による卒後研修指導者の認定は、カンマー所属者が専門的及び人間的に適格であるときにのみ与えられる。 2カンマー所属者への認定は原則として、称号を標榜する専門科または専門分科に対してのみ与えられる;それは複数のカンマー所属者に共通に与えられる。

(3) 1認定されたカンマー所属者は、本法並びに本法に基づいて公布された卒後研修規則の定めるところに従って、卒後研修の指導を行うことが義務付けられる。 この者は卒後研修に関して、いずれのケースにも成績証明書を交付しなければならない。

(4) 1その条件が存在しなくなったときは、認定と許可は取り下げられる。 2その他の場合にはN−W州の行政手続法§49 【訳者注:合法的行政行為の撤回に関して規定した条項】は関与しない。 3認定されたカンマー所属者の卒後研修機関での従事が終ると、卒後教育を指導する認定も失われる。

 

§38 卒後研修を指導する資格

 (1) 1カンマー所属者の認定は管轄のカンマーが行う。 2認定には申請が必要である。

(2) 1管轄のカンマーは認定されたカンマー所属者のリストを作成するが、それにはどのような範囲について認定がなされたかが明記される。 2リストは公示される。

(3) 1卒後研修場所としての公的薬局及び開業している医師、歯科医師及び獣医師の診療所の認可については、申請を受けて管轄のカンマーが決定し、その他については地方の役所が決定する。 2認可された卒後研修機関は適切な形で公示される。 3地方の役所による認可の場合は、専門分野の省により公表される。

(4) 1卒後研修指導のための認定と卒後研修機関としての認可は、取消しの留保を持った期限をつけることができる。 2その他の付帯条件をつけることは許される。

 

§39 試験

 (1) 1§35 (1) の承認は管轄のカンマーに申請する。 2カンマーは、申請について、実施された卒後研修領域の内容、範囲及び結果の証明の審査、及び習得した知識を口頭で述べる試験に基づいて決定を下す。 3付加称号標榜のための承認の場合は、試験を行わなくてもよい;この場合には提出された成績証明書及び証明書に基づいて決定がなされる。

(2) 1試験はそれぞれのカンマーにおいて作られる委員会によって実施される。 2必要に応じて複数の委員会が作られる。 3いずれの委員会にも、最低3名のカンマーによって指定された委員が所属する。 4管轄の専門分野の大臣は、それ以外の委員を指定することができる。 5試験は専門分野の大臣の指定した委員が欠席していても実施できる。

(3) 試験は、申請者が選んだ専門科、専門分科または特殊領域における卒後研修において、承認の条件として規定された特別の、または付加的知識を習得したかどうかを確認することにある。

(4) 1試験を受ける許可を得るには、正規の卒後研修を成績証明書によって証明することが条件となる。 2試験委員会は、試験の結果を確定するために、実施された卒後研修の各過程ごとに作成されて提出された成績証明書の内容、範囲及び結果、並びに申請者によって口頭で述べられた知識によって判定しなければならない。

(5) 試験の詳細については、カンマーが卒後研修規則の中で定める。

(6) 1試験が不合格となった場合には、委員会は規定されている卒後研修期間を延長し、卒後研修に特別な条件を設定する。 2試験は数回繰返すことができる。 3委員会は、卒後研修の延長の代りに、さらに習得すべき個々の知識、経験または能力を証明する試験を義務付けることができる。

(7) 1§36 及び§37 の変則となる卒後研修過程で卒後研修を修了した者は、その卒後研修が同等であれば、申請により承認が得られる。 2同等でない、または修了していない卒後研修は、それまでに行った卒後研修期間をそのままの期間として、または割引いた期間として、本法の規定で算入することができる。 3算入に関しては管轄のカンマーが決定する。

(8) 欧州連合の他の加盟国、または欧州経済圏に関する協定の他の契約国の国民として、欧州連合または欧州経済圏に関する協定の他の契約国の法律で相互に承認された専門に関連するディプローム、試験証明書または他の専門的卒後研修証明書を有する者は、申請に基づき§35 (1) 1項により相当する承認を取得する。

 

§40 旧東ドイツ地域

1東西ドイツの統一条約の3条に示された専門科で1990年10月3日以前に修了、または一部行った卒後研修は、比較しうる卒後研修に相当するときには、同等と見なされる。 2カンマーの法規に存在しない卒後研修の期間は、関連する卒後研修過程に算入することができる。 3カンマーは相当する証明書を交付する。 4§34 (1) 2項が適用される。

 

§41 専門科−代理−救急業務の制限

(1) 専門科称号を標榜する者は、原則としてその標榜する称号の専門科の中だけで従事できる。専門分科称号を標榜する者もその標榜する称号の専門分科の中だけで従事しなければならない。

(2) 専門科を標榜するカンマー所属者は、原則として同じ専門科称号を標榜する職業従事者だけに代理をさせなければならない。

(3) 1§33 による称号を標榜し、医師または歯科医師として自分の診療所で従事する者は、§30 により原則として救急業務に参加する義務がある。 2同人は称号に関連する専門科、専門分科または特殊領域、及び参加に対する条件が存在する場合には、救急業務の枠内の仕事に対しても生涯研修をしなければならない。

 

§42 卒後研修規則

(1) 各カンマーは、管轄の専門分野の大臣の承認を必要とする条例として卒後研修規則を公布する。

(2) 卒後研修規則には以下のことを規定する:

1.     §33 の称号に関連する専門科、専門分科及び特殊領域の内容と範囲、

2.     §34 により称号の制定と廃止、

3.     §35 (2) により称号を併用して標榜できる関連を有する専門科の決定、

4.     §36 による卒後研修の内容と最低期間、とくに個々の卒後研修課程の内容、期間及び順序、並びに§39 (6) による卒後研修延長の期間と特別条件、

5.     §37 (2) と (4) により、カンマー所属者が卒後研修指導の資格を認定される条件と認定取消しの条件、

6.     §37 (3) 2項による成績証明書を要求すること、並びに

7.     §39 (1) による認定の交付のための手続と§39 (5) による試験に関する詳細。

(3) §34 (1) の条件として、卒後研修規則の中に以下の資格の取得を規定することができる

1.     付加の知識、経験及び技能(専門科の中の付加卒後研修)及び

2.     特定の検査及び処置方法の専門技能。これらの資格取得の条件は、必要であれば、この章で専門科、専門分科及び特殊領域の卒後研修に課せられる要求に従った形に整えることができる。カンマーはこれらの資格の取得を証明書によって証明する。カンマーはこれらの資格を発表する権利はない。

 

§43 以前になされた承認

1今までにカンマーによって言い渡された承認は、この法律及び卒後研修規則で定められた対応する称号を標榜できるという条件をつけることによって、この法律による承認と見なすことができる。 2この法律が発効する前に卒後研修をしていたカンマー所属者は、卒後研修を従来適用されていた規定によって完了することができる;このような者は本法律によって承認が得られる。


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第1節

医師の卒後研修

 


§44 専門科及び専門分科の称号

(1) 専門科及び専門分科の称号は、§34 により医師会が下記の専門領域において規定する:

1.     保存的医学 Konservative Medizin

2.     手術的医学 Operative Medizin

3.     神経治療学的医学 Nervenheilkundliche Medizin

4.     基礎医学 Theoretische Medizin

5.     環境学 Okologie

6.     検査技術的医学 Methodisch-technische Medizin

及びこれらの専門領域の統合。

(2) (1) とは別に、「一般医学 Allgemeinmedizin」及び「公衆衛生 Offentliches Gesundheitswesen」の専門科称号もある。

(3) §35 (2) とは関係なく、「一般医学」という専門科称号は他の専門科称号と一緒に標榜することはできない。

 

§45 卒後研修の対象

(1) §36 (7) による卒後研修は、特に医師に対して、人と環境の相互関係を含む疾患、身体障害及び不治の病の予防、診断及び処置、並びにリハビリに必要な処置における知識と能力を深めることを含む。

(2) §§36 から 39 とは関係なく、専門科「公衆衛生」の卒後研修の内容と期間に対しては、それに対する規定が適用される。

(3) 1欧州連合の法規に反しないかぎり、卒後研修は認可された開業医の下で全面的または部分的に実施することができる。 2専門科「公衆衛生」の卒後研修は、専門分野の大臣が特に定めた施設で実施される。

(4) §37 (1) による卒後研修機関としての病院の科の認可は、以下の条件による

1.     卒後研修を受ける医師が、§33 による称号に関連する専門科または専門分科に特有の疾患に習熟する機会を持つのに十分な数と種類の患者を扱っていること、

2.     医学の進歩を考慮に入れた人員と装置が存在すること、及び

3.     規則正しく診断の協議が行われていること。

これは他の総ての卒後研修機関に準用される。

(5) §39 (1) 2項を変更して、専門科「公衆衛生」に対する承認は国家医師試験の合格証明書によって与えられる。【訳者注:医師免許を取得する医師国家試験とは違う】

 

§46 連邦の他の州による承認

1連邦医師法が適用されている他の地域において与えられた§33 による称号を標榜する承認は、卒後研修規則がそのような称号を定めていれば、N−W州でも適用される。 2同じことは卒後研修のための【卒後研修指導者の資格の】認定と【卒後研修機関の】認可に対しても適用される。 3卒後研修規則に相当する専門科称号または専門分科称号があれば、それを標榜してよい。

【訳者注:州によって卒後研修規則に書かれている卒後研修の種類に多少の違いがあるためと思われる】


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第2節

薬剤師の卒後研修

 


§47 薬剤師

(1) 専門科及び専門分科の称号は、薬剤師会が下記の専門領域において規定する:

1.     実務的薬学 Praktische Pharmazie

2.     基礎薬学 Theoretische Pharmazie

3.     医薬品情報 Arzneimittelinformation

4.     検査技術的薬学 Methodisch-technische Pharmazie

5.     環境学 Okologie

及びこれらの専門領域の統合。

(2) (1) とは別に、「公衆衛生 Offentliches Gesundheitswesen」の専門科称号もある。

(3) 1§36 (7) による卒後研修は、特に医薬品の発達、製造、試験及び販売、その鑑定、並びに医薬品に関する情報における知識と能力を深めることを含む。 2卒後研修はさらに、人と環境の相互作用に関する知識を深めること、医薬品並びに毒物と他の健康を害する物質、それらの除去に必要な処置、及びそれらによる危険の予防にも及ぶ。

(4) 1§§36 から 39 までを変更して、専門分野の大臣は、専門科「公衆衛生」における薬剤師に対する卒後研修と試験に関する規則を、法規命令により公布する。 2その場合特に下記について規定する:

1.     卒後研修を認める条件と卒後研修の有効な期間の算定、

2.     卒後研修の目的、内容、期間及び形態、並びに卒後研修のさいの成績の判定、

3.     試験の種類と数、卒後研修期間中の成績を考慮した試験成績の確認を含む試験手続、及び試験委員会の構成、

4.     再試験、

5.     薬剤師に対する専門科称号標榜を承認するための条件で、この称号の導入前に専門科で従事したことを証明できること。

(5) 専門科「公衆衛生」における卒後研修は、専門分野の大臣によって特に定められた施設において実施される。

(6) 1卒後研修は、§37 (1) に示された施設の他に、認可された薬局、病院薬局及び製薬産業の企業、並びに他の適切な施設で実施することができる。 2卒後研修の場所としての薬局、病院薬局または製薬産業の企業の認可の条件は以下の通りである、

1.     そこでの従事は内容及び範囲において、卒後研修をする薬剤師に、§33 による称号に関する専門科または専門分科の職業的知識及び能力を習得する機会を与えること、及び

2.     薬学の進歩を考慮した人員及び設備が存在すること。

(7) §39 (1) 2項を変更して、専門科「公衆衛生」に対する承認は、(4) による法規により試験合格に関する証明書に基づいて交付される。

(8) 連邦−薬剤師規則が適用されるその他の地域で交付された§33 による称号を標榜する承認は、N−W州においても適用される。同じことは卒後研修のための認定と認可に対しても適用される。


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第3節

獣医師の卒後研修

 


§48 獣医師

(1) 専門科及び専門分科の称号は、獣医師会が下記の専門領域において規定する:

1.     基礎獣医学 Theoretische Veterinarmedizin

2.     動物飼育及び動物繁殖 Tierhaltung und Tiervermehrung

3.     動物製食料品 Lebensmittel tierischer Herkunft

4.     臨床獣医学 Klinische Veterinarmedizin

5.     検査技術的獣医学 Methodisch-technische Veterinarmedizin

6.     環境学 Okologie

及びこれらの専門領域の統合。

(2) (1) とは別に、「獣医一般診療 Tierarztliche Allgemeinpraxis」及び「公共獣医 Offentliches Veterinarwesen」の称号もある。

(3) 1§35 (2) とは関係なく、「獣医一般診療」という称号は「実地獣医師 Praktischer Tierarzt」という称号と一緒に標榜することはできない。 2「実地獣医師」という称号は、2つ以上の専門科称号と一緒に標榜することはできない。

(4) 専門科「公共獣医」の卒後研修は、§§36 から 39 を変更して、以下のものを含む、

1.     獣医行政部における獣医師業務に進むための能力の習得、及び

2.     習得のあとに行う獣医行政部における2年間の実務従事、しかし屠殺用家畜と肉の検査への専従は除外される。

(5) 1§37 (1) とは別に卒後研修は、認可を受けた獣医クリニック、またはその一部を認定された開業獣医師または獣医診療所の認定された獣医師の下で実施することができる。 2専門科「公共獣医学」の卒後研修は、専門分野の大臣によって特別に規定された施設で実施される。

(6) 1卒後研修場所としての獣医クリニックの認可の条件は、

1.     卒後研修を受ける獣医師が、§33 による称号に関連する専門科または専門分科に特有の疾患に習熟する機会を持つのに十分な数と種類の動物が扱われていること、及び

2.     獣医学の進歩を考慮に入れた人員と装置が存在すること。

1.     2これは他の卒後研修機関にも準用される。

(7) §39 (1) 2項を変更して、専門科「公共獣医」に対する承認は、(4) による卒後研修に関する提出された証明書により、管轄の獣医師カンマーが交付する。

(8) 1連邦獣医師法が適用されるその他の地域において交付された§33 による称号を標榜する承認は、N−W州のおいても適用される。 2同じことは卒後研修のための認定と認可【訳者注:§46 参照】に適用される。 3卒後研修規則に相当する専門科称号または専門分科称号があれば、それを標榜してよい【訳者注:§46 参照】。


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第4節

歯科医師の卒後研修

 


§49 歯科医師

(1) 1歯科医師に対しては、その職業称号に、歯科診療の特定の領域における特別な知識を示す称号(専門科称号)を併用して標榜できるという制限をつけて、§33 の規定が適用される。 2§35 (2) とは関係なく、いくつかの専門科称号を併用して標榜することができる。 3§41 (1) は歯科医師には適用されない。

(2) 専門科称号は、歯科医師会が下記の専門領域において規定する:

1.     保存的歯科治療学 Konservative Zahnheilkunde

2.     外科的歯科治療学 Operative Zahnheilkunde

3.     予防的歯科治療学 Praventive Zahnheilkunde

及びこれらの専門領域の統合。

(3) (2) とは別に、「公衆衛生 Offentliches Gesundheitswesen」という専門科称号もある。

 

§50 卒後研修の対象

(1) §36 (7) による卒後研修は、それぞれの領域の歯科医師に対して、人と環境の相互関係を含む歯、口腔及び顎の疾患の処置、並びにリハビリに必要な処置を含む。

(2) 1§§36 から 39 を変更して、専門分野の大臣は、専門科「公衆衛生」における歯科医師に対する卒後研修及び試験に関する規則を法規命令により公布する。 2その場合特に下記について規定する:

1.     卒後研修を認める条件と卒後研修の有効な期間の算定、

2.     卒後研修の目的、内容、期間及び形態、並びに卒後研修のさいの成績の判定、

3.     試験の種類と数、卒後研修期間中の成績を考慮した試験成績の確認を含む試験手続、及び試験委員会の構成、

4.     再試験、

(3) 1§37 (1) とは別に、卒後研修は認可されたクリニックまたは認定を受けた開業歯科医の下においても実施できる。 2専門科「公衆衛生」の卒後研修は、専門分野の大臣によって特別に規定された施設で実施される。

(4) 1卒後研修機関としての病院部局またはクリニックの認可は以下の条件による、

1.     卒後研修を受ける歯科医師が、歯疾患、口腔疾患及び顎疾患の専門科に特有な処置に習熟する機会を持つのに十分な数と種類の患者を扱っていること、

2.     歯科医学の進歩を考慮に入れた人員と装置が存在すること。これは研究所Institut 及び他の施設にも準用される。

(5) §39 (1) 2項を変更して、専門科「公衆衛生」に対する承認は、(2) による法規命令による試験合格の証明書によって与えられる。

 

§51 連邦の他の州による承認

1歯科診療従事に関する法律の適用される他の地域において与えられた§33 による称号を標榜する承認は、N−W州でも適用される。 2同じことは卒後研修のための認定と認可【訳者注:§46参照】に適用される。 3卒後研修規則に相当する専門科称号または専門分科称号があれば、それを標榜してよい。

【州によって卒後研修規則に書かれている卒後研修の種類、すなわち標榜できる科名に多少の違いがあるため、この規定が作られたものと思われる】


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第4章

一般医学の専門教育

 


§52 実務医Praktischer Arzt

【訳者注:家庭医の業務を行う開業医であるが、一般医(家庭医)としての専門医資格を取得していない医師。実務医と訳してみた。】

(1) 一般医学の専門教育に関する1986年9月15日の理事会指令(86/457/EWG)−1986年9月19日のABl.Nr.L 267/26−による一般医学の専門教育は、法律の精神にのっとって卒後研修である。

【訳者注:これは EEC 理事会指令で、英語版の番号は 86/457/EEC。英語版は Official Journal of the European Communities No.L 267/26 に掲載されている。】

(2) 一般医学の専門教育は、第3期医師試験【最終の医師国家試験】合格後、当該官庁の監督の下で、最低3年間の本務としての全日制の従事によって行われる。【1997年より5年に延長された。イギリスも3年から5年に延長されるという】

(3) 1専門教育は実務的職業従事と理論の教育によって行われる。 2この教育は、大学または医学的給付を認可された施設、並びに保険診療を認められた開業医の診療所における医師の責任ある指導の下に行われる。 3以下のことが証明されなければならない:

1.     認可された病院で最低6ヵ月、

2.     保険医として認可された医師の診療所または一般医学の教育の条件に適った他の診療所において最低6ヵ月、

3.     地方政府が認可していれば、一般医学と係わりを持つ他の認可された施設または保健衛生の公的役務における最高6ヵ月。

内科、外科、婦人科及び産科並びに小児科における期間を特に考慮することができる。領域に対しては、算入の最大期間を定めることができる。算入に関しては医師会が決定する。

(4) 専門教育に参加する者は、教育に対して責任を有する医師と個人的に一緒に働き、連帯責任を持たなければならない。

(5) 1一般医学における専門教育の個々の課程の修了に関しては、それぞれの教育担当機関が証明書を交付する。 2(3) 3項 2.による医師診療所における最低6ヵ月の教育、及び(3) 3項 3.による施設及び公的役務に関する証明書から、これらの教育が、社会的環境を取り入れて診療所に特有な疾患の診断と治療、患者の健康指導、予防処置、疾患の早期発見及びリハビリ処置の導入に及んでいることが明らかにならなければならない。

(6) 連邦医師法の適用地域において医師の職業業務を行う資格が存在するならば、一般医学の中の専門教育を完了した者は、申請により、医師会から「実務医Praktischer Arzt」または「実務女医Praktische Arztin」の称号を標榜する資格を与える証明書が交付される。

(7) 1連邦医師法の適用地域において医師の職業業務を行う資格が存在するならば、1995年12月31日までは、(2) を変更して、少なくとも2年間の専門教育が証明される者も (6) による証明書を入手する。 2(3) に示された最低期間は下回ることはできない。 3医学部における最低学習年限が6年であるかぎり、1 項による期限は延長される。

 

§53 卒後実地修練

(1) 1一般医学における専門教育は、卒後実地修練医師(Arzt im Praktikum)、保険医の準備期間または本法律の第3章の意味における医師卒後研修としての従事の枠内においても修了することができる。 286/457/EEC の指令により全日制従事でなくてもよければ、パートタイムの教育で修了することができる;しかし、総合期間を短縮してはならないし、また週間の教育時間が全日制の 60%以下になってはならない。 3算入については医師会が決定する。

【実地修練医師(AiP)というのは、国家試験合格後に義務付けられた18ヵ月の実地修練で、ドイツ独特の制度。間もなく廃止される可能性がある】

(2) 1§52 (2) による教育期間には、以下の理由による中断は算入される【教育期間から差引かれない】

1.     年間6週間までの休暇、及び

2.     専門教育の参加者に責任のない他の理由、特に病気のときは合計して6週間までの期間。女医の場合は、妊娠による中断も合計6週間までは【差引かれずに】算入される。

 

§54 EU−加盟国における教育

(1) 欧州連合の他の加盟国、または欧州経済圏に関する協定の他の契約国の何れかにおいて、指令 86/457/EEC の意味する教育についてのディプローム、試験成績証明書または他の資格証明書を取得した者、またはその指令の Artikel 7 (4) による証明書を得ている者は、申請により§52 (6) による証明書を入手する。 1995年12月31日までは、欧州連合の法律により医学部における6年の学習を行って医師の職業に従事する資格を取得し、最低2年の専門教育が証明される者も証明書を入手する。 §52 (7) 2項が準用される。

(2) 1教育施設の種類、専門領域及び教育期間の他に、指令 86/457/EEC の Artikel 2 (1) c 2項前半の意味における施設で行われた教育であることを明らかにする加盟国の管轄官庁の証明書が呈示された場合には、欧州連合の他の加盟国、または欧州経済圏に関する協定の他の契約国の何れかにおいて一般医学の専門教育を受けた期間は、申請によりさらに§52 (3) による教育課程に算入される。 2算入に関しては医師会が決定する。

 

§55 教育規則

1詳細は医師会が規則によって規定する。 2その場合、従事したことがどの専門科及びどれだけの期間として考慮されるかについて、特に指示される。 3規則は証明書並びに教育機関の内容も規定する。 4規則は専門分野の大臣の承認を必要とする。


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第5章

責問権

 


§56 軽微性−責問

(1) 1カンマー理事会は、罪が軽微で職業裁判所手続の開始を申請する必要がないと思われるときには、本人に義務づけられた職業義務を傷つけたカンマー所属者を責問することができる。 2これは、公務員がその公務員義務を傷つけた場合には適用されない。

(2) 1同じ事情によって職業裁判手続が開始されれば、責問権は解消する。 2§71 (1) 2項の場合には 1項を変更して、再び責問権を行使することができる。 3その他の場合には§57 (3) が適用される。

(3) 1責問は職業裁判所の支配下にある。 2決定が下されたときには、その法的救済についての教示が伴う。

(4) カンマー所属者を警告する会長の権利には手は触れられない。

(5) 職業裁判上の処置に関する記録は、職業裁判所手続に至らなかったときには決定の確定力後3年間、職業裁判所手続となったときには決定の確定力後10年間保存され、その後破棄される。


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第6章


職業裁判権

 


§57 職業義務違反

(1) 職業義務に違反したカンマー所属者は職業裁判権の支配を受ける。

(2) 公務員義務に違反ということであれば、公務員であるカンマー所属者にはこれは適用されない。

(3) 罰金までに相当する職業義務違反から5年以上経過していれば、職業裁判所の処分は及ばない;期限が経過するまでに職業裁判の手続開始の請求があったり、またはそれと同じ事実によって刑事手続が開始されていれば、期間はこの時点から手続の続く間は停止する。

 

§58 職業裁判の処分

(1) 職業裁判手続で認められるものは:

a.     注意、

b.     戒告、

c.     被選挙権の剥奪、

d.     100 000マルクまでの罰金、

e.     被疑者が職業に従事することが相応しくないという決定。

(2) (1)の b と c に示された処分は、d の処分と一緒に行うことができる。

(3) 特別な場合には、決定を発表することにより公示することができる。

 

§59 職業裁判所の種類

(1) N−W州の地域において、医療職に対する職業裁判所が、第一審としてケルンとミュンスター【訳者注:二つの都市】の行政裁判所にそれぞれ作られる。

(2) N−W州において、上訴審として、医療職に対する州職業裁判所が上級行政裁判所に設置される。

【第一審が職業裁判所、第二審が州職業裁判所、名称が似ているので混同しないように】

 

§60 構成

(1) 医療職に対する職業裁判所は、裁判長として1名の職業裁判官、及び被疑者の職業から2名の職業従事者を陪席裁判官として配置したカンマーにおいて、手続を行い決定をする。

(2) 医療職に対する州職業裁判所は、裁判長を含む3名の職業裁判官及び被疑者の職業からの2名の陪席裁判官を配置した裁判所の部において手続を行い決定をする。

(3) 職業裁判官は、通常の裁判権または一般行政裁判権を有する終身裁判官でなければならない。

(4) カンマーの理事または職員は、医療職に対する職業裁判所の一員になることはできない。

 

§61 職業裁判官

医療職に対する職業裁判所の裁判長、並びに医療職に対する州職業裁判所の裁判長と裁判官の陪席は、州政府から4年の任期で任命される。

 

§62 非裁判官の陪席裁判官

(1) 1医療職に対する職業裁判所及び医療職に対する州職業裁判所の非裁判官の陪席裁判官は、それぞれの裁判所のための選挙委員会によって4年の任期で選出される。 2医師、薬剤師、獣医師及び歯科医師に対して、それぞれ1つの選挙委員会がN−W州に作られる。

(2) 1各選挙委員会は上級行政裁判所の所長、医療職に対する職業裁判所が作られるところの行政裁判所の所長(複数)、並びに管轄のカンマーから任命された各1名のカンマー所属者からなる。 2委員会の各委員に対して、同時に1名の代理人が指名される。 3委員会の委員の任期は4年である。 4任期は第1回の会議から始まる。

(3) 1委員会は上級行政裁判所の所長によって招集される。 2委員会は全委員が出席したときに決議能力がある。

(4) 各カンマーは、選挙委員会に裁判所の種類を考慮して適任の応募者のリストを提出する義務があるが、リストは医師会では最低50名、その他のカンマーでは最低25名を含むものとする。

(5) 最低4票を得た者が選出される。

 

§63 代理人

医療職に対する職業裁判所及び医療職に対する州職業裁判所の各委員に対して、1名の代理人が任命または選ばれる。

 

§64 職務からの排除

(1) 下記の者は非裁判官としての陪席裁判官の職務から排除される、

a)       被選挙権を持たない、

b)       裁判によって公務員の職に就く資格を持たない、

c)       故意の行為によって6ヵ月以上の自由刑の判決を受けた、

d)       公務員の職に就く資格を失う結果となる可能性のある故意の行為により訴えられている、

e)       裁判所の命令により自己の財産処分で制限を受けている、

f)       職業裁判手続で、職業従事が相応しくないと宣告されている。

【訳者注:自由刑は身体の自由を拘束する刑罰:ドイツでは懲役、禁固、拘留の刑の区分が廃止され自由刑に統一された】

(2) 1非裁判官の陪席裁判官は、陪席裁判官の職務を行うのに相応しくないと思われる犯罪または職業義務違反の罪を犯したときは、その職務から解任される。 2陪席裁判官が所属する裁判所の裁判長の申請により、医療職に対する州職業裁判所が決定を下す。 3該当する陪席裁判官は意見を聴取される。

 

§65 事務分配

(1) 歴年の始まる前に以下のことが決定される:

1.     カンマーと裁判所の部の数、

2.     カンマーと裁判所の部との間の事務分配、

3.     裁判長、職業裁判所の他の担当者、並びに各カンマーと裁判所の部のメンバーの代理人の配分、

(2) 決定は、医療職に対する職業裁判所が設けられる裁判所の所長により、医療職に対する職業裁判所の2名の最古参職業裁判官と協調して、一歴年の期間続く。

 

§66 宣誓

(1) 非裁判官の陪席裁判官は、職務に入る前に、裁判官のための一般規則によって宣誓を行う。

(2) 宣誓は裁判長によって行われる。

 

§67 補償

医療職に対する職業裁判所及び州職業裁判所の非裁判官の陪席裁判官への補償は、陪審員に対する規定に従う(裁判所構成法§55)。

 

§68 地域管轄

医療職に対する職業裁判所の地域管轄は、被疑者が手続開始の時点に属していたカンマーの地域に対してなされる。

 

§69 申請−自己の嫌疑を晴らす手続

(1) カンマーまたは監督官庁は、管轄の医療職に対する職業裁判所に、職業裁判手続の開始を申請することができる。

(2) カンマーに属する者はだれでも、職業違反行為の嫌疑を晴らすために、職業裁判手続の開始を申請することができる。

(3) 申立人は公判開始の決定の送達までに申請を取り下げることができる。

 

§70 弁護

被疑者は手続のどのような場合においても、ドイツの裁判所で認められた弁護士、またはカンマー所属者を補佐人とすることができる。

 

§71 申請の取扱

(1) 1職業裁判所手続開始への申請が明らかに許されていないもの、あるいは根拠のないものであるときは、裁判所の裁判長は簡単に却下することができる。 2提起された告発が些細であるため、手続の実施が必要ないと思われる場合も同じことが適用される。

(2) 申請が却下されないときには、裁判長はそれを被疑者に2週間以内に、申請について意見を述べることへの勧告と一緒に送達する。

(3) 申請が却下されたことに対して、申請者は、送達後2週間以内に、医療職に対する職業裁判所の決定内容に意見を述べることができる。

 

§72 手続の段階

医療職に対する職業裁判所の手続は、調査手続と公判手続とからなる。

 

§73 開始の決定−審査の指揮者

(1) 1職業裁判所の手続は、被疑者に責めを負わせた過失を指揮する医療職に対する職業裁判所の決定によって開始される(訴訟係属)。 2裁判所の管轄は、訴訟係属後にそれを根拠とした状況が変化しても影響は受けない。

(2) 1決定は、被疑者、カンマー、及び申立権者の監督官庁である地方の官庁に送達される。 2調査手続が開始されると、決定の中で同時に、医療職に対する職業裁判所の裁判官で調査手続を指揮する者1名が指名される(調査指揮者)。

(3) 事実関係が十分に明らかであれば、医療職に対する裁判所は、調査手続の開始を免除し、直ちに公判手続を命ずるか、または決定手続で決定を下す。

 

§74 刑事訴訟手続が優先

 

(1) 1職業違反行為の被疑者に対して、同じ事実関係で刑事事件の公訴がなされたときは、職業裁判所の手続は開始できるが、刑事裁判の手続が終るまで停止しなければならない。 2同様に、すでに開始された職業裁判所手続は、その途中で公訴が提起されれば停止されなければならない。 3被疑者が逃走中であるため、刑事裁判手続で処理されないときは、職業裁判所の手続を継続することができる。

(2) 被疑者が刑事裁判手続で無罪を宣告されたとき、刑事裁判の審査の対象となった事実関係について、これが刑法の構成要件を満たさなくても職業違反を含んでいるときは、職業裁判手続は開始または継続することができる。

(3) 医療職に対する職業裁判所が再審査に同意しないと決定したときは、刑事裁判の判決の事実確定が職業裁判所の判決に対して拘束力を有する。

(4) 被疑者に対して懲戒手続が開始されるか、または秩序違反のため裁判手続が係属されているときは、(1)から(3)までの規定が準用される。

 

§75 被疑者の尋問

(1) 1調査手続において被疑者は尋問に呼出される。 2申請人またはその代理者は、これについて報告を受ける。 3これらの者は尋問に参加し、要求に応じて聴取することができる。

(2) 1被疑者が止むを得ない理由で出頭できないときは、支障がなくなった後改めて召喚される。 2被疑者を尋問できないときは、証拠調べが困難になる恐れがあるとして、手続を継続することができる。

 

§76 証拠調べ

(1) 1遅延のおそれがあるか、あるいは以後の手続に対して真実の証言を得るために宣誓が必要なときにのみ、証人及び鑑定人に宣誓をさせることが許される。 2宣誓は尋問の後に行われる。

(2) 1行政官庁及び裁判所は、調査の指揮者に職務共助及び司法共助を供与しなければならない。 2被疑者は何れの場合も調査指揮者または裁判所によって尋問される。

【訳者注:職務共助と司法共助については§111 参照】

(3) 調査指揮者は総ての証拠調べに当って記録係に意見を求めなければならないが、記録係が公務員でなければ、同人の義務を良心的に満たすことを誓約させなければならない。

 

§77 関係人の召喚

被疑者及び申請者またはその代理人は、総ての証拠調べに時宜を得て召喚される。

 

§78 証人及び鑑定人

1証人及び専門家の尋問は被疑者のいる前で行われる。 2しかし、調査指揮者は調査の目的を考慮して必要と考えれば、被疑者を関与から外すことができる;しかし被疑者は、再び許されれば、直ちに証拠調べの結果について知らされる。

 

§79 開始決定の補足

(1) 1調査手続の過程で、新たな職業義務違反の疑いを証明する事実が明らかになった場合には、調査指揮者は開始決定の補足として裁判所に記録を提出する。 2被疑者がこの新しい事実関係をすでに調査指揮者から聞いているときは、開始決定は被疑者から事前に意見を聞かずに補足される。

(2) 緊急の場合は、調査指揮者はこれに必要な調査を優先させることができる。

 

§80 調査の終了

1調査指揮者は調査終了後記録を医療職に対する裁判所に送付する。 2医療職に対する職業裁判所の裁判長は、調査の補足を命じたり、または自ら行うことができる。

 

§81 決定手続

(1) 1比較的軽い事件の場合には、医療職に対する職業裁判所は公判手続をせずに、決定で決めることができる。 2この決定手続では注意、戒告または 5000マルクまでの罰金だけが認められる。 3§90 (2)による決定は行うことが認められない。

(2) 決定は被疑者、カンマー及び申立権者の監督官庁の代理者に送付される。

(3) 1決定に反対して被疑者、カンマー、及び申立権者の監督官庁の代理者は、その送達後2週間以内に書面で、医療職に対する職業裁判所の事務局に、手続を口頭で行うように申請することができる。 2申請は公判手続開始までに取り下げることができる。 3申請が間に合い、取り下げられなければ、決定は発せられないことになるが、そうでなければ確定判決として有効である。

 

§82 公判手続の準備

(1) 裁判所が決定手続で決定しないか、または口頭の手続の申請が定まると、裁判長によって公判手続のための期日が指定される。

(2) 裁判長は、公判のために被疑者、その補佐人、申立人、カンマー及び申立権者である監督官庁の代理人を召喚する。

(3) 裁判長はさらに、出頭が必要と考える証人及び鑑定人を召喚する;それらの氏名は被疑者、その補佐人及び申立権者またはその代理人の召喚状の中に示される。

(4) 召喚状の送達と公判手続の間には最低2週間の期間を置かなければならない。

 

§83 公開−法廷警備

この法律に特別な規定がないかぎり、公開、法廷警備、及び法廷用語に関して、裁判所構成法の第14節及び第15節の規定が、医療職に対する職業裁判所及び医療職に対する州職業裁判所の手続に適用される。

【訳者注:第14節は公開及び非公開、法廷秩序維持に関する規定、第15節は法廷言語がドイツ語であること、通訳などに関する規定】

 

§84 欠席−手続不能

(1) 公判手続は、被疑者が出頭しないときでも行われる。

(2) 被疑者が一時的に弁論能力を持たないときは、手続は裁判所が定める期限までの間停止する;被疑者が止むを得ない理由で出頭できないとき、そしてこのことが遅滞なく連絡されたときには、公判手続のための新しい期日が設定される。

 

§85 公判手続

(1) 裁判長は公判手続の開始と進行を行う。

(2) 公判手続において、裁判長または裁判長が定めた主任裁判官が記録の基本的内容を朗読する。

(3) 被疑者が出頭していれば、これを聞く。

 

§86 証拠調

(1) 被疑者の尋問のあと、証人と鑑定人が尋問される;刑事訴訟法第1編第 6 及び 7 章の規定が、§§59、61 及び 62 を除いて準用される。

【訳者注:これらは証人、鑑定人、検証に関する規定】

(2) 裁判所は証拠調の範囲を、申請に拘束されずに定める。

 

§87 最終審問

1証拠調の終了後、申請者、カンマー、及び申立権者の代理人は、出頭していれば審問される。 2そのあとで被疑者とその補佐人が審問される。

 

§88 追加された非難

(1) 公判手続の過程において被疑者に、公判開始の決定またはその補遺に示されていなかった職業義務違反の疑いを証明する事実が出されたときは、被疑者の同意を得て違反の対象とすることができる。

(2) 被疑者が同意しないときは、裁判所は調査指揮者を指名し、公判手続を調査手続の間停止する。

(3) 公判開始の決定は両者の場合に応じて補足される。

 

§89 判決確定の対象

(1) 開始決定またはその補足に挙げられた過失だけが、判決決定の対象とすることができる。

(2) 判決は、公判手続の対象となった事実と証拠調の結果だけを支えにすることができる。

(3) 裁判所は、その自由な、手続の総合結果から得られた確信によって決定する。

 

§90 判決の言葉

(1) 裁判所は職業義務違反が証明されたと思ったときは、§58 で挙げられた処分の一つ、またはいくつかを判決の中で認める。

(2) 他の場合には、裁判所は判決の中で以下のことを確定する、

a.     職業義務違反は存在しない、または

b.     職業義務違反は証明されない。

 

§91 評決

評決については、裁判所構成法第16節の規定が準用される。

【訳者注:これは裁判官の協力、助言、投票に関する規定】

 

§92 判決の言渡

(1) 1判決は判決主文の朗読及び基本的判決理由を伝達することによって言渡される。

2それは書面に作成され、理由をつける。

(2) 判決は裁判長及び陪席裁判官によって署名され、被疑者、その補佐人、カンマー、及び申立権者の監督官庁の代理人に送達される。

 

§93 手続の打切り

(1) 手続は下記の場合に決定により打切られる、

a.     被疑者が死亡したとき;

b.     被疑者が不治の精神疾患に陥っている;

c.     手続の開始ができない。

(2) 1被疑者が死亡した場合に、その配偶者、子供または親がこれを申請するならば、開始決定の布告により継続される。 2申請は被疑者の死亡後3ヵ月以内に、手続が係属していた裁判所に提出する。

(3) 裁判所が、継続された手続において、§90 (2) a に示された確定を捉えなければ、手続は打切られる。

 

§94 打切りの決定

(1) 打切りの決定は根拠をつけて送達される。§92 (2) が準用される。

(2) 被疑者の死亡の場合には、裁判所は§93 (2) による申立権者に属する者に停止の決定を連絡する。

 

§95 移送決定

1裁判所が他の医療職に対する職業裁判所の管轄が適当と考える場合には、決定により事件をこの裁判所に移送する。 2確定決定は他の裁判所を拘束することになる。

 

§96 控訴

(1) 医療職に対する職業裁判所の判決に対して、被疑者及び申立権者またはその代理人は控訴することができる。

(2) 1控訴は医療職に対する職業裁判所における判決の送達後1ヵ月以内に、書面またはNiederschriftで事務局に提出する。 2それは停止効果を有する。 3控訴が期間内に医療職に対する州職業裁判所に提出されたときも、控訴期間は保証される。

(3) 1控訴は書面で理由を示さなければならない。 2これに対して裁判所は期間を設定することができる。

(4) 裁判所は控訴書類を他の控訴有資格者に送付する。

 

§97 不利益変更(改悪)の禁止

(1) 職業義務違反が証明されなかったことを裁判所が決定したときにも、被疑者は控訴することができる。

(2) カンマー及び申立権者の監督官庁の代理人も、被疑者が有利になるように控訴することができる。

(3) 被疑者だけが控訴した場合、または被疑者に有利になるように控訴がなされた場合には、判決を同人の不利益になるように変更することはできない。

 

§98 州職業裁判所の事前手続

医療職に対する州職業裁判所の事前の手続に対しては、この章で別に定められていなければ、医療職に対する職業裁判所の事前手続に関する規定が準用される。

 

§99 決定の棄却

(1) 控訴期間に遅れたり、または他の理由で許可できないときは、控訴は医療職に対する州職業裁判所の裁判長の理由を付した決定により棄却することができる。

(2) 1控訴人は決定の送達後1ヵ月以内に口頭で手続を申請することができる。2申請が期限内に提出されたときは、決定は発せられなかったものとして扱われる;それ以外の場合は、決定は確定判決としての効力を有する。

(3) §81 は控訴手続には適用されない。

 

§100 期日指定

§99 による決定が発せられなかったり、または口頭による手続が申請さたときには、裁判長は口頭手続の期日を定める。

 

§101 控訴審判決

医療職に対する州職業裁判所が控訴を許可し、根拠があると判断したときは、§102 の方法をとらなければ、その裁判所は医療職に対する職業裁判所の判決を破棄し、事案そのものについて決定をする。

 

§102 却下

(1) 下記の場合に、医療職に対する州職業裁判所は判決により、異議申立された決定を無効とし、事件を管轄の医療職に対する職業裁判所に却下することができる、

a.     第一審の手続が本質的に不十分であるとき、または

b.     調査がさらに必要であるとき、または

c.     被疑者が新しい非難を手続に取り入れることに(§88)同意しないとき。

(2) (1) c の場合には、医療職に対する州職業裁判所による開始決定で補うことができる。

 

§103 異議申立

(1) 医療職に対する職業裁判所及び医療職に対する州職業裁判所の事前の手続において、刑事訴訟法の規定により異議申立が許される。

(2) 異議申立は以下に対してもできる

a.     職業裁判所の手続開始の申請を却下;

b.     手続の停止;

a.     C) 手続継続の申請を却下(§93 (2))。

 

§104 再審

1この法律により確定判決で終った手続は、同じ条件の下に刑事訴訟と同様に再審ができる。 2再審は被疑者、カンマーまたは監督官庁によって請求することができる。 3その他の場合は、§361 を含む刑事訴訟法第4編の規定が準用される。

【訳者注:第4編は再審に関する規定。§361 は、有罪判決を受けた者の刑が執行されたり、または死亡していても、再審請求が排除されない場合の規定。】

 

§105 費用の決定

(1) 1事件の対象の決定には、手続の費用に関する決定も含まれなければならない。 2費用は手数料及び現金経費からなる。

(2) 1手数料は被疑者が負担しなければならない。 2§58 に示された処分の一つが認められたときにだけ、手数料が決定される。 3手数料の額は最低 10マルク、最高 500マルクである。 4裁判所は、職業違反の重さ並びに被疑者の個人的行為を考慮し、義務に従った裁量により手数料を決定する。

(3) 手続の現金経費は全額または一部を以下のように課することができる

a.     §58 に示された処分が認められたときは被疑者に;特定の負担または免責の状況をを解明するための検査によって特別な現金経費が生じ、そしてこの検査が被疑者に有利になるような結果となったときには、特別な現金経費は被疑者に負わされなくてもよい、または

b.     現金経費が申請者またはその代理者の行為によって生じたときは、それらの者に。

 

§106 被疑者の必要な経費

(1) 被疑者に発生する必要な経費は、§90 (2)または§93 による決定の場合には、国庫に課せられる。

(2) 1§58 に示された処分が認められたときに、被疑者に発生した必要な経費は、被疑者に負担させることが適切でないと思われる場合には、一部または全額を国庫に課する。 2また、罪を負わされた過誤が一部だけ§90 (1)による決定の根拠を構成し、特定の負担または免責の状況を解明するための検査によって特別な現金経費が生じ、そしてこの検査が被疑者に有利になるような結果となったときには、1項は適用される。

(3) 1被疑者に有利になるようにカンマーまたは監督官庁によって上訴され、それが取り下げられるか、またはその効果がなかった場合には、上訴手続において被疑者に生じた必要な経費は国庫に課せられる。 2被疑者に有利になるようにカンマーまたは監督官庁によってなされた上訴が効果をもたらしたときも、適用は同じである。

(4) 被疑者が上訴を制限し、それが成果を得たときは、被疑者の必要な経費は国庫に課せられる。

(5) 上訴が部分的に成果を得たときは、被疑者に負担させることが適切でないと思われるならば、被疑者の必要な経費は部分的または全額国庫に課せられる。

(6) 被疑者に責任のある怠慢によって生じた必要な経費は、国庫には課せられない。

(7) 1被疑者に責任が負わされる過誤を犯したことを偽ることによって、被疑者が職業裁判所の手続が開始されるきっかけを作ったときには、被疑者の必要経費は国庫には課されない。 2被疑者がかれに対してなされた非難に意見を述べたにもかかわらず、本質的な点で真実に反したり、あるいはかれの後の陳述に矛盾することに本人が責任を有していること、または本質的な免責の状況を述べなかったことによって、被疑者が職業裁判所手続のきっかけを作ったときには、被疑者の必要な経費を国庫に課すことは考慮されない。

(8) 必要な経費に該当するものは

1.     証人の補償に適用される規定による必要な時間の消費に対する補償、及び

2.     手数料、及び民事訴訟法の§91 (2)により弁済されることになる弁護士の経費、並びにその他の補助者の経費。

 

§107 訴訟費用の確定

(1) 費用は第一審裁判所の書記課によって確定される。

(2) 訴訟費用の確定に対する異議に関しては、医療職に対する職業裁判所が最終的に確定する。

 

§108 判決の確定力及び執行力

(1) この法律によりなされた決定は、確定力を有すると同時に執行力を生じる。

(2) 注意と戒告は、判決が確定力を持つことにより執行力が効力を有する。

(3) §58 (1) c 及び e に示された処分は、判決の確定力が生ずることにより効力を持つ。

 

§109 剥奪された権利の回復

(1) 1職業裁判所手続で§58 (1) c または e による処分が科されたときは、医療職に対する州職業裁判所は、該当者の申請により、判決の確定力の後早くても2年以後に、決定により

a.     被選挙権を再認可するか、または

b.     該当者が、再びその職業に従事する資格があることを確定する。

2申立権者の意見が聞かれる。

(2) 決定は、否決の場合にも、裁判長と陪席裁判官によって署名され、該当者、その補佐人、カンマー並びに申請者の監督官庁の代理人に送達される。

(3) 申請が否決されたときは、再度の申請は決定送達後早くても2年後に許可される。

 

§110 刑事訴訟法の適用

1手続がこの法律の規定にないときは、刑事訴訟法の規定が準用される。 2この適用の対象となるのは、とくに裁判所職員の除斥と忌避、期間の算定、及び現状回復である。

 

§111 職務共助と司法共助

総ての裁判所及び官庁、並びに公法の団体は、医療職に対する職業裁判所に職務共助と司法共助を行わなければならない。

【訳者注:職務共助 Amtshilfe と司法共助 Rechtshilfe について。西独基本法(憲法に相当)35条 1項:連邦及び州のすべての官庁は、相互に司法共助(法律上の援助)及び職務共助(職務上の援助)を行う】

 

§112 職業裁判権の費用

(1) 職業裁判権の人的及び物的費用は、各会計年度末にカンマー(複数)から所属者数に対する割合として州に弁済する。

(2) 1手数料、費用及び罰金による収入は州に入る;実際の収入が (1) により州に弁済される費用を上回るときは、それは次期半年に所属者数に対する割合でカンマー(複数)に支払われる。 2カンマー(複数)はこの額を、それらの福祉施設及び援護施設(§6 (1) 9)に提供しなければならない。


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訳者解説


  これは、ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州(N−W州)における医療職法の全文を翻訳したものである。N−W州は 1,735万(1990年)の人口を有するドイツ最大の州である。

 ドイツでは州ごとに医療職法に相当する法律を制定している。「医療職法」の正式名称は「医師、歯科医師、獣医師及び薬剤師の公的職業代表、職業義務、卒後研修及び職業裁判権に関する規則(カンマー法)」という長いものであるが、その名称通りの内容を規定している。この名称は州によって多少異なるが、実質的な内容はほぼ同じと考えてよい。

 医療職法の対象は、いずれの州においても医師、歯科医師、薬剤師及び獣医師の4種類の職種であるが、この法律で規定されているのは:1.これらの職種に従事する者を管轄するカンマー Kammer(医師会、歯科医師会、薬剤師会、獣医師会)に関する規定、2.職業義務などのような職業従事の基本事項、3.卒後研修の基本、4.一般医学の専門教育のような欧州連合(EU)との関連事項、5.職業裁判権(職業裁判所)である。

 医師会、歯科医師会、薬剤師会、獣医師会はそれぞれの職種の自治組織で、それぞれの職種に従事する者はそれに加入する義務があるが、監督官庁に勤務する者にはこの義務はない。何れも自治組織であるが、監督官庁から職業従事者を監督する権限を委譲された公的機関としての性格を有し、この法律で規定されているような事項を管掌する。したがって、例えば医師会と訳しても、日本の医師会とは公的な性格で著しく異なっている。

 なお、ここで用いる医師会、歯科医師会、薬剤師会、獣医師会の「会」は、ドイツ語ではカンマー(Kammer)と表記されている。したがって、翻訳に当り、特定の会を指す場合には例えば「医師会」という訳語を使用するが、不特定の場合には「カンマー」という表現を用いることにした。

 上記のように医療職法は州によって表題や内容に差があり、改訂される年も違っている。その一例として、N−W州の医療職法には、カンマー所属者の会費についての規定はないが、ヘッセン州では会費や滞納の場合の処置まで書かれている。このように、すべての州の医療職法を詳しく比較することは訳者の能力の限界を超えているが、ここにN−W州のものを訳者の判断で選んだ理由は、改訂された年が新しいこと、各条文にタイトルが付いて読みやすくなっていること、他州と比較した場合詳しく書かれているものの一つであることなどによる。この翻訳を終えた後に、他のいくつかの州においても最近改訂が行わたばかりであることを知ったが、体裁はこのN−W州のものに類似している。

 なお、各州の医師会から代議員を出して構成される連邦医師会は、公法上の組織である州医師会とは異なって私的組織であるが、「医師職業規則」、「卒後研修規則」などの原型や、ドイツの医療の基本となる各種の指針類を作成する。

 各州の医師会は、州の「医療職法」に基づいて、連邦医師会が作成した「医師のための職業規則」、「卒後研修規則」などの原型をほぼそのままの形で議決し、監督官庁の承認を得て実施している。また、この医療職法の規定に基づいて「救急業務規則」などの各種の規則を州レベルで作成して公布し、実行する任務を有している。このように、ドイツの州医師会は医師の自治組織で、州政府から医師の監督権を委譲され、医師と医師業務を管轄しているが、その費用は医師会の会費と各種の手数料収入ですべてを購っている。さらに、連邦医師会は私的組織であるが、州医師会からの拠出によって運営されている。医師会関連の各種委員会の委員は名誉職(ボランティア)として、つまり無報酬で働いている[この段落は改訂した(2003.7.20)]。

 ドイツの医事法規の体系はわが国と著しく異なるが、本ホームページの資料D-106からその状況がある程度伺えるものと思う。とくに注目すべきものとして、日本の制度には存在しない職業裁判所を規定する職業裁判権が挙げられるが、これは医師や医療の倫理や質の向上に大きな力となっている。これについてはM-408をご覧ください。[この段落の内容は一部削除した(2003.7.20)]。

 

 訳語について:

カンマー(Kammer):医師会、歯科医師会、薬剤師会、獣医師会の会に相当する

カンマー所属者(Kammerangehorige):直訳であるが、カンマーの会員という意味である


 


 

 

訳者 岡嶋道夫

e-mail: okajimamic@hi-ho.ne.jp

http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/

 

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