【概要】

ドイツ:医師免許規則

(19991110日改定版)

Approbationsordnung für Ärzte (1999)

(医学部入学から医師免許までの教育と医師国家試験を規定した法律)

 

 

医師免許規則の規定によると、医学部入学から医師免許取得までの医学教育は、以下の6つの要素で構成されている。

1.   大学での6年間の医学教育。これは講義、実習、クルズス、セミナーからなるが、最終学年【第6学年】は病院における48週間の実地教育となる。

2.   学部教育を終えたあと、実地研修医師(Arzt im PraktikumAiPとして 18ヶ月の卒後初期研修に従事。

3.   ファースト・エイド(Erste Hilfe)。

4.   2ヶ月の患者看護業務。

5.   4ヶ月のFamulaturファムラツール(病院・社会などでの医学研修)。

6.   以下の4回の医師国家試験。

a.        医師前期試験:これは入学後2年経過すると受験できる。

b.        医師試験第1部:医師前期試験合格後1年間の勉学を終えると受験できる。

c.         医師試験第2部:医師前期試験合格後3年の勉学を終えると受験できるが、医師試験第1部に合格していなければならない。

d.        医師試験第3部:医師試験第2部合格後、1年間の勉学の後に受験できる。

 

上記各項目についての簡単な解説

1.ファースト・エイドの教育:医師前期試験を申請する前に行う。

2.2ヶ月の看護業務:大学での勉学を始める前、または医師前期試験を申請する前の授業のない期間に行う。

3.4ヶ月のファムラツールは医師前期試験合格後から医師試験第2部までの間に、授業のない期間に行う。

 

また、4回に分けて実施される国家試験              の実施方法は以下のようになっている:

医師前期試験:筆答と口答

医師試験第1部:筆答のみ

医師試験第2部:筆答と口答

医師試験第3部:口答のみ。

 

筆答試験はマルチプルチョイス方式を採用するが、問題数と合否判定基準は医師免許規則で規定されている。

口答試験はドイツの伝統的な試験方法である。1回の受験生の数、試験官の数、試験の時間、実施の具体的要領なども医師免許規則で規定されていて厳格に実施される。

【なおドイツでは、専門医の認定試験も口答試験であるが、経験を積んだ試験官が口答試問をすると、受験者の能力が良く分るとのことである。訳者注】

 

ドイツの大学は2学期制で、授業(講義など)は暦の4月から6月、10月から1月の期間に行われる。上記の医師試験は、いずれも授業のない3月と8月に、すなわち年2回実施される。いずれの試験においても、最初の試験で合格しないと、必ず直近の次回に再受験しなければならない(間を置くことはできない)。再受験の機会は2回与えられるが、それでも合格しないときは不合格が確定し、その受験生は医学を再履修して受験することは許可されない【試験は学生が申請することによって開始される。準備が不足と思ったときは申請を控えればよいが、一旦受験申請を出すと、指定された試験日に受験しなければならなくなる。したがって、不合格となった場合の再試験の期日もこれによって決定してしまう。4種類ある医師試験の何れかにおいて不合格となると、その受験生は生涯ドイツでは医師になることができない。この制度は19世紀から引き継がれてきている。訳者注】

 

次に、各試験の内容について要点を説明する。

医師前期試験:これは入学後2年経過すると受験できる。試験項目は、

I.                医師のための物理学と生理学、

II.             医師のための化学と生化学、

III.          医師のための生物学と解剖学、

IV.           医学心理学と医学社会学の基礎。

それぞれの試験項目には詳細な内容が示されている。

 

医師試験第1:医師前期試験合格後1年間の勉学を終えると受験できる。試験項目は、

I.              病理学と神経病理学、人類遺伝学、医学微生物学、免疫学と免疫病理学、医史学の基礎、

II.           患者との対話、臨床検査の基礎、救急の初期処置、放射線学、

III.        薬理学と中毒学、病態生理学と病態生化学、臨床化学、生物統計学の基礎

 

医師試験第2医師前期試験合格後3年の勉学を終えると受験できるが、医師試験第1部に合格していなければならない。

臨床科目が広範に含まれていて、試験の対象は、

I.              非手術領域

II.           手術領域

III.        神経科領域

IV.         一般医学と環境領域


医師試験第3:医師試験第2部合格後、1年間(48週間)の病院での教育の後に受験できる。

 

実地研修医師AiP):

以上のように6年の学部教育を受けて医師試験第3部に合格すると、18ヶ月を実地研修医師AiPとして卒後初期研修を行う。この期間は「医師免許」資格ではなく、勤務場所と内容が限定された「許可を受けた医師の資格」(いわゆる仮免許)で従事する。18ヶ月の研修は、最低9ヶ月は非手術系、最低6ヶ月は手術系で行うことになっている。残りの期間には選択の自由があり、AiPとしての内容に相応しいものであればよいという規定になっているが、外国へ行って経験を積む人も多い。この18ヶ月のうちこの期間に受けた研修が、専門医の研修規定に合致する内容と認定されれば、専門医の卒後研修年限に算入することが可能である。

 

AiPとしての研修修了証明書を提出することにより「医師免許」を取得して医師となり、その後は卒後研修規則で定められた専門医研修コースに入って卒後研修を受ける。

 

以上のように、医師免許を取得するには学部学生として6年(最後の国家試験期間も含めると63ヶ月)、AiPとして18ヶ月、合計76ヶ月を要する。

 

AiPは、1901年に制定された卒後実地修練制度に端を発しているドイツの伝統的な卒後の臨床研修で、1914年に米国が医学教育の大改革を行ったときに、ドイツのこの制度がインターン制度のモデルとなっている。現在医師免許規則の改定作業が進められているが、最近は学部の臨床教育が充実してきたので、AiPの制度が削除される可能性が大きい。は2002年に存続することに決定した