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D124

(原 型) 卒 後 研 修 規 則

連 邦 医 師 会

95回ドイツ医師会議1992(ケルン)の議決による

(Muster-)Weiterbildungsordnung

Bundesaerztekammer

 

解説:「T604 ドイツの専門医試験」もご覧下さい

訳者解説

これは1992年に改正されたドイツの卒後研修規則(原型)である。

規則は総論部分と各論部分で構成される。ここに翻訳したのは総論部分(各科共通)で研修の目的、研修の種類と基本事項、審査、専門資格の標榜などについて規定している。研修指導者の資格を記述した§8、§9は、研修の質の確保という意味で、私たちにとって参考になると思われる。

各論部分は、下記の表に示したように複雑に分類され、それぞれの専門領域における研修事項の詳細が解説されている(その内容は莫大な量で翻訳は不可能である。詳細はドイツ医師会のホームページを参照されたい)。

1992年の改正により、専門領域の分類が下記のように5種類に増えたので、理解の助けとなるように、訳者は色分けの表示を試みた。

分類

例示

資格の標榜

審査(書類審査のほかに)

専門科

内科、外科、皮膚科、眼科

「○○科専門医」

口頭試験

 

重点領域

サブスペシャルティに相当する

内科の内分泌

外科の血管外科

重点領域を専門医称号と併記

口頭試験

 

自由選択卒後研修

一般医学の老人医学

外科の専門的集中医療

不可

証明書のみ

口頭試験

 

診断治療専攻

内科の心エコー法

婦人科的内分泌学と生殖医学

不可

証明書のみ

通常は書類審査のみ

特殊領域

温泉及び医学気候学

医学情報

ホメオパシー

特殊領域を専門医称号と併記

口頭試験

 

専門領域の分類に用いられる用語を翻訳することは大変難しい。ここでは便宜的に上記のような表現を使用したが、それらの原語は以下の通りである:

Gebiet(専門科)、 Schwerpunkt(重点領域)、Fakultative Weiterbildung(自由選択卒後研修)、 Fachkunde(診断治療専攻)、Bereich(特殊領域)。Bereich は領域を意味する 言葉で、特殊というニュアンスはないが、適切な用語が見つからないので、このような使い方をしてしまった。なお、以前の規則ではサブスペシャルティに対してTeilgebiet(専門分科)が使われていたが、今回はこの用語が消えた。

重 要

医学の進歩と実情に適合するために、2001年のドイツ医師大会で卒後研修規則の再構築の方針が承認され、2003年の医師大会で「改定:卒後研修規則」が発表される予定である。まだ詳細は分かっていないが、上記の自由選択卒後研修と診断治療専攻という分類は形を変え、別の能力証明書となる可能性がある。これによって、職業に従事しながら、すなわち開業しながら資格を習得できる可能性も開かれるようになるという。また、すべての専門医に義務づける必要のないきわめて専門的な内容は、このような能力証明に位置づけられるようになる。また、この改定により、一般医学専門医(家庭医)と内科専門医の卒後研修は、その初期過程が共通する形で融合し、一般医学専門医の内科的基礎がより充実する見込みである。

新しい案は2002年10月に各州医師会に提示されて意見が求められ、2003年1月に連邦医師会の理事会で討議され、同年の医師大会(5月)の議決を経て実施に移されることになる。

2002年10月25日 

訳者  岡嶋道夫

 

 

目 次

§ 1 卒後研修の目標と構造

§ 2 専門科重点領域及び特殊領域

§ 3 専門科の中における自由選択卒後研修、及び専門科の中における特定の診断及び治療方法の卒後研修(診断治療専攻

§ 4 卒後研修の種類、内容、期間及び時間的経過

§ 5 卒後研修の資格認定の内容

§ 6 専門医名称

§ 7 複数の専門医名称の標榜

§ 8 卒後教育の資格

§ 9 開業医の診療所または医師が管理する他の施設を卒後研修機関として許可する場合

§10 資格の取消

§11 卒後研修に関する証明書の交付

§12 医師名称の認定

§13 自由選択卒後研修及び診断治療専攻の習得のための卒後研修に関する証明書

§14 試験委員会及び異議審査委員会

§15 受験の許可

§16 試験

§17 試験の決定

§18 再試験

§19 同等の卒後研修の認定

§20 ドイツ連邦共和国以外での卒後研修

§21 医師名称の剥奪

§22 医師の義務

§23 移行規定

 

T章  専門科重点領域自由選択卒後研修診断治療専攻(項目のみ紹介)

U章  特殊領域(項目のみ紹介)

 

*******************************************************

 

§1 卒後研修の目標と構造

 

  (1) 卒後研修の目標は、職業教育を完了することにより、定義された医師の業務のための深い知識、経験及び技能を規定された通り習得することにある。これは、有資格医師による卒後研修指導の下で、数年間職業に従事することによって達成される。卒後研修は、基本的には試験によって終了する。卒後研修の目標は、医師の職業業務の質を保証することでもある。卒後研修期間と卒後研修内容は、最低期間と最低内容である。

 

  (2) 卒後研修は、本卒後研修規則に従って、以下の領域で資格認定が得られる。

1.     専門科 Gebiet 【内科、外科、眼科のような専門】

2.     専門科の中における特定の診断及び治療方法(診断治療専攻 Fachkunde)

3.     専門科の中の自由選択卒後研修 Fakultative Weiterbildung

4.     重点領域 Schwerpunkt 【内科の中の内分泌のようなサブスペシャルティ】

5.     特殊領域 Bereich

 

  (3) 以下の卒後研修

-        専門科(2) 1.]

-        重点領域(2) 4.]

-        特殊領域(2) 5.]

を成果を収めて終了することにより、深い知識、経験及び技能、または特殊な知識と経験が証明され、それによって

-        専門医名称

-        専門医名称に付加される重点領域名称

-        付加名称

を標榜して、専門的な医師業務を一般に示す権限が本卒後研修規則により与えられる。

 

  (4) 専門科の中の自由選択卒後研修、または専門科の中の特定の診断及び治療方法(診断治療専攻の習得)を成果を収めて終了することにより、専門的な知識、経験及び技能、または深い知識と経験及び技能が証明され、それについて医師は証明書を入手する。しかし、これらの専門的な医師業務には、その名称を標榜して一般に示す権限が与えられていない。

 

  (5) 医師、医師の標榜名称、並びに卒後研修者及び有資格医師の名称が男性名詞で表現されているが、女医の場合には女性形に置き換えて読むものとする。

 

§2 専門科重点領域及び特殊領域

【アルファベット順】【旧東ドイツとの統合により、旧東ドイツ時代の専門医名称、例えば解剖学、生理学、生化学なども混ざっている】

 

  (1) 医師は、以下の専門科及び重点領域において、専門医名称または重点領域名称を標榜する権利を得るために、卒後研修を行なうことができる:

      .一般医学  Allgemeinmedizin

      .麻酔  Anaesthesiologie

      .解剖学  Anatomie

      .労働医学  Arbeitsmedizin

      .眼科 Augenheilkunde

      .生化学 Biochemie

      .外科  Chirurgie

      重点領域

      血管外科  Gefaesschirurgie,

      胸部外科  Thoraxchirurgie,

      災害外科  Unfallchirurgie,

      内蔵外科  Visceralchirurgie.

      .診断放射線学  Diagnostische Radiologie

      重点領域

      小児放射線学  Kinderradiologie,

      神経放射線学  Neuroradiologie.

      .産婦人科  Frauenheilkunde und Geburtshilfe

      10.耳鼻咽喉科  Hals-Nasen-Ohrenheilkunde

      11.皮膚及び性病科  Haut- und Geschlechtskrankheiten

      12.心臓外科  Herzchirurgie

      重点領域

      胸部外科  Thoraxchirurgie.

      13.人類遺伝  Humangenetik

      14.衛生及び環境医学  Hygiene und Umweltmedizin

      15.内科  Innere Medizin

      重点領域

      血管学  Angiologie,

      内分泌学  Endokrinologie,

      消化器学  Gastroenterologie,

      血液学及び内科腫瘍学  Haematologie und Internistische Onkologie,

      心臓学  Kardiologie,

      腎臓学  Nephrologie,

      肺臓学  Pneumologie,

      リユーマチ学  Rheumatologie.

      16.小児外科  Kinderchirurgie

      17.小児科  Kinderheilkunde:

      重点領域

      小児心臓学  Kinderkardiologie,

      新生児学  Neonatologie.

      18.小児思春期精神病学及び精神療法 Kinder- und Jugendpsychiatrie und -psychotherapie

      19.臨床薬理学  Klinische Pharmakologie

      20.臨床検査学  Laboratoriumsmedizin

      21.微生物学及び感染疫学  Mikrobiologie und Infektionsepidemiologie

      22.顔面外科  Mund-Kiefer-Gesichtschirurgie

      23.神経病学  Nervenheilkunde

      24.神経外科  Neurochirurgie

      25.神経学  Neurologie

      26.神経病理学  Neuropathologie

      27.核医学  Nuklearmedizin

      28.公衆衛生  Oeffentliches Gesundheitswesen

      29.整形外科  Orthopaedie

      重点領域

      リューマチ学  Rheumatologie.

      30.病理学  Pathologie

      31.薬理学及び中毒学  Pharmakologie und Toxikologie

      32.音声学及び小児聴覚学  Phoniatrie und Paedaudiologie

      33.理学的及びリハビリテーション医学 Physikalische und Rehabilitative Medizin

      34.生理学  Physiologie

      35.形成外科  Plastische Chirurgie

      36.精神科及び精神療法  Psychatrie und Psychotherapie

      37.精神療法医学  Psychotherapeutische Medizin

      38.法医学  Rechtsmedizin

      39.放射線治療  Strahlentherapie

      40.輸血医学  Transfusionsmedizin

      41.泌尿器科  Urologie

 

  (2) 医師は以下の特殊領域において、付加名称を標榜する権利を得るために、卒後研修を行なうことができる:

1.  アレルギー学 Allergologie

2.  温泉学及び医学気候学 Balneologie und Medizinische Klimatologie

3.  企業医学 Betriebsmedizin

4.  輸血 Bluttransfusionswesen

5.  カイロプラクティック  Chirotherapie

6.  航空医学 Flugmedizin

7.  手の外科 Handchirurgie

8.  ホメオパチー Homoeopathie

9.  医学遺伝学 Medizinische Genetik

10. 医学情報学  Medizinische Informatik

11. 自然療法 Naturheilverfahren

12. 静脈学 Phlebologie

13. 理学療法 Physikalische Therapie

14. 形成手術 Plastische Operationeen

15. 精神分析 Psychoanalyse

16. 精神療法 Psychotherapie

17. リハビリテーション Rehabilitationswesen

18. 社会医学 Sozialmedizin

19. スポーツ医学 Sportmedizin

20. 発声言語障害 Stimm- und Sprachstoerungen

21. 熱帯医学 Tropenmedizin

22. 環境医学 Umweltmedizin

 

§3 専門科の中における自由選択卒後研修、及び専門科の中における特定の診断及び治療方法の卒後研修(診断治療専攻

 

  (1) 医師は以下の専門科の中において、本卒後研修規則による必須内容を超えて、併記されているような専門科を増補する業務に対して、専門的な知識、経験及び技能を習得し(自由選択卒後研修)、それについて証明書を取得することができる:

− 専門科 1:一般医学

自由選択卒後研修

1.臨床老人医学

− 専門科 2:麻酔学

自由選択卒後研修

1.専門的麻酔学的集中医療

− 専門科 7:外科

自由選択卒後研修

1.専門的外科的集中医療

− 専門科 9:産婦人科

自由選択卒後研修

1.婦人科的内分泌学及び生殖医学;

2.専門的産科及び周産期医学;

3.専門的手術的婦人科学

− 専門科 10:耳鼻咽喉科

自由選択卒後研修

1.専門的耳鼻咽喉の外科

− 専門科 12:心臓外科

自由選択卒後研修

1.専門的心臓外科的集中医療

− 専門科 15:内科

自由選択卒後研修

1.臨床老人医学

2.専門的内科的集中医療

− 専門科 16:小児外科

自由選択卒後研修

1.専門的小児外科的集中医療

− 専門科 17:小児科

自由選択卒後研修

1.専門的小児科的集中医療

− 専門科 23:神経治療学

自由選択卒後研修

1.臨床老人医学

− 専門科 24:神経外科

自由選択卒後研修

1.専門的神経外科的集中治療

− 専門科 25:神経学

自由選択卒後研修

1.臨床老人医学

2.専門的神経学的集中医療

− 専門科 29:整形外科

自由選択卒後研修

1.専門的整形外科的外科

− 専門科 30:病理学

自由選択卒後研修

1.分子病理学

− 専門科 35:形成外科

自由選択卒後研修

1.専門的形成−外科的集中医療

− 専門科 36:精神科及び精神療法

自由選択卒後研修

1.臨床老人医学

− 専門科 41:泌尿器科

自由選択卒後研修

1.専門的泌尿器科的外科

 

  (2) 実施に当って深い知識と経験と技能の習得及び証明、並びに質の保証が特に要求されるような各専門領域内の特定の検査と治療方法のために、診断治療専攻証明書を導入することができるが、それは、そのために規定された卒後研修を成果を挙げて終了した後に交付される。科学の進歩と住民への適切なサービスを考慮し、また医師の診断と治療の質の確保のために必要とされる場合には、本卒後研修規則を構成する要素として、医師会の決定により診断治療専攻証明書を導入することができる。診断治療専攻証明書は、連邦医師会がそのような提案を出したあとで導入されるものとする。この場合、卒後研修の内容と範囲を定めるとともに、卒後研修が§4 (6) 1 節及び (9) を変更して行うことができるかについても定めるものとする。導入された診断治療専攻証明書に対しては、その他に卒後研修の規定、特に卒後研修の実施、卒後教育を行なう医師の資格、認定及び試験に対する本卒後研修規則の規定が効力を有する。

 

§4 卒後研修の種類、内容、期間及び進行

 

  (1) 卒後研修は、医師免許取得後、または−職業教育完了の場合は−医師の職業を行なう許可が交付された後に始めることができる;口−顎−顔面外科の卒後研修の開始も、歯科医師の免許または歯科医師の職業を行なう許可の交付が前提となる。【訳者注:「許可」というのは外国人医師や(2)の実地研修医師(AiP)のような医師免許取得前の仮免許に相当する資格】

  (2) 医師が実地研修医師(AiP:Arzt im Praktikum)として、本卒後研修規則の必要条件を満たすような勤務をしたことが証明される場合には、この勤務は最低卒後研修期間が短縮されるという形で、卒後研修に算入される。

  (3) 卒後研修は基本的及び包括的でなければならない。それが包括するものは、特に疾患、身体障害及び苦しみの予防、識別及び治療に関する知識、経験及び技能を深めることであって、人間と環境の相互関係、鑑定、リハビリテーションに必要な処置及び質の確保の方法を含んでいる。質の確保のためには、臨床的解剖に定期的に参加することが含まれる。

 

  (4) 卒後研修の期間と内容は、卒後研修規則のT章とU章【訳者注:この本文の後に記載されている各専門についての規則】に示されている。そこに示された卒後研修の期間と内容は、最低の期間と最低の内容である。6ヵ月以下の卒後研修−または勤務の期間は、それが卒後研修規則のT章とU章で述べられている場合に限って、卒後研修期間に算入することができる。病気、妊娠、特別休暇、兵役、その他による卒後研修の中断は、原則的に卒後研修期間には算入されない。これは、暦年内の合計6週間を超えない中断には適用されない。専門科重点領域特殊領域専門科のなかの自由選択卒後研修、及び特別な検査−及び治療方法の卒後研修の内容と範囲は、卒後研修規則のT章とU章に定められている。

  (5) 卒後研修は、卒後研修規則のT章とU章の中で、それぞれの卒後研修目標のために定められた勤務領域と、そこで定められた範囲における知識、経験及び技能を学び、習得することに及んでいる。

  (6) 専門科及び重点領域の卒後研修、並びに自由選択卒後研修は、原則的にフルタイムであって、本務としての身分で実施される。このことは、卒後研修規則に別段の規定がないかぎり、特殊領域の卒後研修にも適用される。フルタイムの卒後研修が可能でないときは、特定の卒後研修区分がフルタイムと規定されていなければ、卒後研修をパートタイムで、しかし規則正しく、勤務時間の少なくとも半分をかけて行なうことができる。パートタイム卒後研修は、あらかじめ所轄の医師会に届け出て、算入可能であると保証してくれたときにだけ、割合に応じて算入してもらうことができる。パートタイムの卒後研修では、その期間中には、専門科、または重点領域、または自由選択卒後研修の枠内、または特殊領域のいずれか一つだけしか行なえない。

  (7) 専門科として算入し得る期間は、原則として卒後研修期間の初期に実施されるべきである。重点領域の卒後研修は、該当する専門科での卒後研修の上に組み立てるべきである;それは卒後研修規則T章により、その重点領域が所属する専門科での卒後研修を行なっている間に、部分的に実施することができる。自由選択卒後研修の場合も同様である。診断治療専攻を習得するための卒後研修は、専門医のための卒後研修に従事している間に行なうことができる。

  (8) 専門科の規定された卒後研修期間内に、原則として少なくとも1年は、卒後教育の全般にわたる資格を付与された医師の指導を受けて行なわれるべきである。

  (9) 診断治療専攻の証明書取得のための卒後研修に対して (6) が適用される。もし、卒後研修規則T章で別に定められていれば、診断治療専攻の証明書は職業に従事【病院勤務や開業】しながらの卒後研修という枠でも取得できる。

  (10) 卒後研修規則のT章とU章に講習受講が規定されていれば、開催地または各講習の指導者を管轄する医師会によって、各講習とその指導者が事前に認定されていることが必要である。

 

§5 卒後研修の資格認定の内容

 

  (1) 専門医名称取得の証明書は、専門科の卒後研修内容である深い知識、経験及び技能を証明するものである。

  (2) 専門科の深い知識、経験及び技能の習得の対象にはなっていないが、専門科重点領域としての典型的な診断及び治療方法は、卒後研修規則T章に対する指針(§15 (2)) で定められている。

  (3) 医師が専門科の中の重点領域の研修または自由選択卒後研修を成果を挙げて修了したときには、専門科の中の重点領域または自由選択卒後研修の内容に限られた医師業務に対してのみ、特定の知識と経験、または専門的な知識、経験及び技能があると証明されるだけである。

  (4) 診断治療専攻証明書が交付される特別な検査−及び治療方法における深い知識及び経験及び技能は、医師がこの診断治療専攻を習得したときにのみ証明される。

  (5) 専門科の卒後研修において、深い知識、経験及び技能の習得ということの他に、他の専門科の医師との共同作業の能力を深めることになる他科の知識の習得も規定されている場合、この専門科での専門医認定は、これだけで上記の他科の知識の対象領域内において医師業務が行なえるという能力を証明することにはならない。

 

§6 専門医名称

 

  (1) §2 にあげた専門科に対して、以下の専門医名称を定める:

【訳者注:以下に示すように、専門科名に専門医をつけたものが正式名称であるが、慣習などにより、2通りの名称が許されている専門領域もある。例えば、内科の場合には「Facharzt fuer Innere Medizin 内科専門医」または「Internist 内科医」の何れの名称を用いてもよいことになっている。】

1.  一般医学専門医または一般医 Facharzt fuer Allgemeinmedizin oder Allgemeinarzt

2.  麻酔専門医 Facharzt fuer Anaesthesiolo-gie oder Anaesthesist

3.  解剖学専門医 Facharzt fuer Anatomie

4.  労働医学専門医または労働医 Facharzt fuer Arbeitsmedizin oder Arbeitsmediziner

5.  眼科専門医 Facharzt fuer Augenheilkunde oder Augenarzt

6.  生化学専門専門医医 Facharzt fuer Biochemie

7.  外科専門医 Facharzt fuer Chirurgie oder Chirurg

8.  放射線診断専門医 Facharzt fuer Diagnostische Radiologie

9.  産婦人科専門医または婦人科医 Facharzt fuer Frauenheilkunde und Geburtshilfe oder Frauenarzt

10. 耳鼻咽喉科専門医 Facharzt fuer Hals-Nasen-Ohrenheilkunde oder Hals-Nasen-Ohrenarzt

11. 皮膚及び性病科専門医 Facharzt fuer Haut- und Geschlecht

12. 心臓外科専門医 Facharzt fuer Herzchirurgie oder Herzchirurg

13. 人類遺伝学専門医 Facharzt fuer Humangenetik

14. 衛生及び環境医学専門医 Facharzt fuer Hygiene und Umweltmedizin

15. 内科専門医または内科医 Facharzt fuer Innere Medizin oder Internist

16. 小児外科専門医 Facharzt fuer Kinderchirurgie oder Kinderchirurg

17. 小児科専門医 Facharzt fuer Kinderheilkunde oder Kinderarzt

18. 小児思春期精神病学及び精神療法専門医Facharzt fuer Kinder- und Jugend-psychiatrie und -psychotherapie

19. 臨床薬理学専門医 Facharzt fuer KlinischePharmakologie oder Klinischer Pharmakologe

20. 臨床検査専門医 Facharzt fuer Laboratoriumsmedizin oder Laborarzt

21. 微生物学及び感染疫学専門医 Facharzt fuer Mikrobiologie und Infektionsepidemiologie

22. 顔面外科専門医または口顔面外科医 Facharzt fuer Mund-Kiefer-Gesichtschirurgie oder Mund-Kiefer-Gesichtschirurg

23. 神経病学専門医または神経医 Facharzt fuer Nervenheilkunde oder Nervenarzt

24. 神経外科専門医または神経外科医Facharzt fuer Neurochirurgie oder Neurochirurg

25. 神経学専門医 Facharzt fuer Neurologie oder Neurologe

26. 神経病理学専門医 Facharzt fuer Neuropathologie oder Neuropathologe

27. 核医学専門医 Facharzt fuer Nuklearmedizin oder Nuklearmediziner

28. 公衆衛生専門医 Facharzt fuer Oeffentliches Gesundheitswesen

29. 整形外科専門医または整形外科医 Facharzt fuer Orthopaedie oder Orthopaede

30. 病理学専門医または病理医 Facharzt fuer Pathologie oder Pathologe

31. 薬理学及び中毒学専門医 Facharzt fuer Pharmakologie und Toxikologie

32. 音声学及び小児聴覚学専門医 Facharzt fuer Phoniatrie und Paedaudiologie

33. 理学的及びリハビリテーション医学専門医 Facharzt fuer Physikalische und Rehabilitative Medizin

34. 生理学専門医 Facharzt fuer Physiologie

35. 形成外科専門医 Facharzt fuer Plastische Chirurgie

36. 精神科及び精神療法専門医 Facharzt fuer Psychiatrie und Psychotherapie oder Psychiater und Psychotherapeut

37. 精神療法医学専門医 Facharzt fuer Psycho-therapeutische Medizin

38. 法医学専門医または法医 Facharzt fuer Rechtsmedizin oder Rechtsmediziner

39. 放射線治療専門医 Facharzt fuer Strahlentherapie

40. 輸血医学専門医または輸血医 Facharzt fuer Transfusionsmedizin oder Transfusionsmediziner

41. 泌尿器科専門医または泌尿器科医 Facharzt fuer Urologie oder Urologe

 

  (2) 放射線医Radiologe という名称は、放射線診断学専門医としての認定と放射線治療の専門医としての認定を取得した者が標榜できる。

 

§7 複数の専門医名称の標榜

 

  (1) 医師が複数の専門科において専門医名称の標榜を認定されているときは、原則として1専門医名称のみ標榜できる。医師会は、請求があった場合に、さらに1名称の標榜を許可することができる。

  (2) §2 (1) による重点領域名称は、重点領域が所属する専門科の名称と併記するときだけ標榜できる。一つの専門科に対して、原則として2個を超える重点領域名称を併記することはできない。2個の専門科名称を標榜する医師は、各専門科につき一つだけ重点領域名称を標榜して差支えない。

  (3) §2 (2) の付加名称は、”医師”という職業名称、または専門医名称を併記しなければ標榜できない。該当する特殊領域が、医師が標榜する専門科に含まれている場合にのみ、付加名称は専門医名称と一緒に標榜することができる。

 

§8 卒後教育の資格

 

  (1) 専門科及び重点領域、並びに自由選択卒後研修の卒後研修は、医師会から資格を与えられた医師の責任ある指導の下に、大学センター Universitaetszentrum 、大学病院 Universitaetsklinik またはその目的のために当該官庁から許可された医師が管理する施設(卒後研修機関)で行なわれる。資格の要件は、卒後研修規則T章及びU章に別段の規定がないかぎり、特殊領域の卒後研修並びに診断治療専攻の習得のための卒後研修にも適応される。

  (2) 卒後教育の資格は【指導する立場の者】、医師が専門的及び人間的に適性であるときに与えられる。専門科重点領域または特殊領域について卒後教育の資格を与えられた医師は、当人の専門科重点領域または特殊領域において、基本的な卒後教育を行なうことを可能とする包括的な知識、経験及び技能を有していなければならない。当人はこれらの知識、経験及び技能を、卒後研修修了後、責任ある地位での数年間の勤務において習得していなければならない。資格は−次項(3) の場合は別として−医師が名称を標榜している専門科あるいは重点領域あるいは特殊領域に対してのみ与えられる。資格は原則として一つの専門科と所属する一つの重点領域にのみ与えられる。

  (3)「一般医学」の専門科名称を標榜しない専門医も、適当な場合には、卒後研修の一部分が専門科「一般医学」に算入することが承認されるという条件の下で、同人の専門科の中で卒後教育に従事する資格を与えることができる。

  (4)  (2) 1 から 3 節は、専門科の中の自由選択卒後研修、及び専門科の中の診断治療専攻習得に対する医師の資格に準用される。

  (5) 資格を有する医師は、卒後研修を個人的に指導し、また時間的にも内容的にも本卒後研修規則に沿うような形にする義務がある。資格が一つの研修機関の数人の医師に共通に与えられているときには、資格を有する医師(複数)による規定通りの卒後教育の実施と監督が確保されなければならない。

  (6) 卒後教育の資格の範囲にとって重要なことは、卒後研修の内容、進行及び目標設定に必要とされるものが、卒後研修機関が供給するもの(患者の数並びに疾患と損傷の種類)並びに卒後教育の人的及び物的資源も考慮した上で、資格を有する医師によりどれだけ満たすことができるかということである。それに関する決定のために、医師会は一般行政規則を発布するが、そのなかで、各専門科重点領域における資格の内容と範囲、専門科の中の自由選択卒後研修及び診断治療専攻の学習のために詳細な必要条件を、卒後研修を規定通りのものとするために定めることができる。医師会(州)はそのさいに、連邦医師会の該当する勧告を考慮する。卒後研修機関の構成及び規模に変化があったときは、資格を有する医師は直ちに医師会に届け出なければならない。請求によりこれに相当する許可が与えられる。

  (7) 卒後研修規則のT章とU章に規定されている場合及びそこで定められた範囲において、資格を有する開業医において卒後研修を行なうことができる。卒後研修機関としての開業医の診療所の認定には§9 が適用される。

  (8) 資格は請求することによって与えられる。請求を行なう医師は、資格を請求しようとする専門科重点領域特殊領域専門科の中の自由選択卒後研修、または診断治療専攻、並びに卒後教育期間を詳しく示さなければならない。医師会は資格を有する医師のリスト作成するが、それにより、医師が卒後教育の資格を与えられている卒後研修機関、専門科重点領域特殊領域専門科の中の自由選択卒後研修、または診断治療専攻が明らかにされる。

  (9) 医師会は、規定通りの卒後教育を行なうのに必要な条件を付した資格を与えることができる。

 

§9 開業医の診療所または医師が管理する他の施設を卒後研修機関として許可する場合

 

  (1) 卒後研修機関としての開業医の診療所は、§8 による資格により医師会が認可する。認可は、目指している専門科において、自由選択卒後研修の間に、重点領域または特殊領域において、または診断治療専攻の卒後研修のさいに、卒後研修の医師に典型的な疾患を熟知させるのに十分な数と種類の患者が診療されていることが前提となる。§8 (6) が準用される。

  (2) 適切とされる場合には、専門医名称「一般医学」を標榜しない専門の医師に、そこで行なわれる卒後研修が、専門科「一般医学」の卒後研修の算入に限って認定されるという趣旨により、卒後研修機関としての認可と卒後教育の資格を確立することができる。

  (3) 指導または責任を持つ医師のうち少なくとも1名がこれらの前提の下に卒後教育の資格を与えられることにより、医師が管理指導する施設にも(1) 及び (2) は準用される。

 

§10 資格の取消

 

  (1) 卒後教育の資格は【指導する立場の者】、その前提が存在しなくなったとき、とくに以下のような場合にそれに応じて全部または部分的に取消される

  1. 卒後教育者としての医師の専門的及び/または人間としての適性がなくなったという状況が生じた

  2. 卒後研修規則T章及びU章の中で、専門科重点領域または特殊領域または自由選択卒後研修または診断治療専攻の習得のための卒後研修の内容で定められている必要条件が、満たされていない、またはもはや満たされないであろうということを明らかにする事実が存在する。

  (2) 卒後研修機関の有資格医師の勤務終了、卒後研修機関の閉鎖、あるいは卒後研修機関としての認可の取消によって卒後教育の資格は消滅する。

 

§11 卒後研修に関する証明書の交付

 

  (1) 資格を有する医師は【指導する立場の者】、卒後研修を受けた医師、または実務に携わった医師に、同人の責任の下で遂行された卒後研修期間について、習得した知識、経験及び技能について述べ、また専門的適性についての質問事項に詳細な意見をつけた証明書を発行しなければならない。証明書は以下のことについて述べていなければならない:

  1. 行なわれた卒後研修期間の長さ、並びに病気、妊娠、特別休暇、兵役、その他による卒後研修の中断。

  2. この研修期間内に教えられ、また習得された知識、経験及び技能、診断及び治療において得た医師としての能力、並びにその他に教えられた知識についての詳細。

  (2) 卒後研修を受けた医師の要求または医師会の請求により、卒後研修の各1年経過後に、(1) の要求に相当する証明書が発行される。

 

§12 医師名称の認定

 

  (1) 卒後研修を完了した後、医師会による認定を受けた者は、§2 により専門科名称、重点領域名称または付加名称を標榜できる。認定の請求には、卒後研修中に発行された総ての証明書類を添付する。

  (2) 専門科または重点領域の名称の認定の決定は、提出された証明書とそれを補う試験委員会(§14)の前でなされた試験に基づいて医師会が行なう;申請者は§15 により受験ができる。

  (3) §2 (2) に規定された付加名称【診断治療専攻】の認定は、U章に特別の規定がないかぎり、原則として試験を行なわず、提出された証明書類に基づいて行なわれる。提出された証明書類が確実な判断を下すのに不充分であったり、または申請者の適性に疑いがあれば、試験を行なうことができる。

 

§13 自由選択卒後研修及び診断治療専攻の習得のための卒後研修に関する証明書

 

専門科の中の自由選択卒後研修、または専門科の中の特定の診断及び治療方法のための診断治療専攻の習得のための卒後研修を成果を収めて修了したことに関する証明書は、医師が申請し医師会から受け取ることができる。自由選択卒後研修の認定の決定のために、§12 (2) が準用される;診断治療専攻の習得の認定の決定は、§12 (3) が同様に適用されて行なわれる。

 

§14 試験委員会及び異議審査委員会

 

  (1) 医師会は試験の実施のために試験委員会を設ける。必要に応じて多数の試験委員会を設けることができる。

  (2) 医師会は試験委員会の委員とその代理人を定める;その場合代理人の序列を決定することができる。試験委員会は、少なくとも3名の医師からなる人員が割当てられて決定を行なうが、そのうちの2名は試験をする専門科、重点領域または特殊領域の認定を有する者でなければならない。これは、自由選択卒後研修または診断治療専攻習得の卒後研修を効果を収めて修了したことの認定を行なう試験にも適用される。

  (3) 医師会は試験委員会の委員長を決定する。

  (4) 試験委員会は単純多数で議決する。同票のときは委員長の票が決め手となる。

  (5) 試験委員会の委員は独立して決定し、他から指示を受けることはない。

  (6) 試験の決定に対して出された異議に関して決定を下す審議のために、医師会に異議審査委員会を設ける。委員の任命と委員長の決定のために (2) 1 節並びに (3)、また異議を決定する異議審査委員会の構成のために (2) 2及び 3 節が準用される。

  (7) 試験委員会の委員、その代理人及び委員長、並びに異議審査委員会の委員、その代理人及び委員長の任命は、医師会が選出する役員の任期の期間とする。

 

§15 受験の許可

 

  (1) 受験の許可については医師会が決定する。卒後研修が規則に従って完了し、かつ§11 による証明書類が添付されているときに許可が与えられる。許可の拒否は申請者に理由を付けて書類で伝えられる。

  (2) 卒後研修規則T章とU章によって要求されている基本的及び深い卒後研修が行なわれ、それが証明されているか、特に知識、経験及び技能が習得され、それが証明されているか、についての決定は、一般管理規則に基づいて医師会によってなされる。医師会はそのさいに連邦医師会の該当する勧告を考慮する。

  (3) 許可は、その前提条件が不正に提出されたと受け取れる場合には撤回することができる。

 

§16 試験

 

  (1) 医師会は試験委員会の委員長との合意によって試験の期日を決定する。試験は許可後適切な期限内に行なわれるべきである。申請者は決定した期日に最低2週間の期間をおいて呼出される。

  (2) 試験は口頭である。試験はどの申請者にも原則として30分とする。

  (3) 卒後研修の内容、範囲及び成績は個々の項目において提出された証明書によって証明される。卒後研修中に習得した深い、または特別な、または専門的な知識は、試験委員会によって専門的試問の中で審査される。試験は医師としての技能の試験に及んでもよい。試験委員会は、規定の卒後研修が成果を収めて完了したか、また専門科重点領域または特殊領域、または自由選択卒後研修、または努力した診断治療専攻の深い、特別な、または専門的な知識、経験及び技能を習得したかどうかを、提出された証明書と試験結果に基づいて決定する。

  (4) 試験委員会の多数が、申請者が規定の卒後研修を成果を収めて完了していないという結果になった場合には、委員会は必要であれば申請者の卒後研修期間をどの程度延長できるか、またこの延長する卒後研修にどのような特別の条件を付すかについて決定する。

  (5) 延長の期間は専門科においては最低3ヵ月、最高は2年である。重点領域及び特殊領域、同様に自由選択卒後研修または診断治療専攻ではそれは最高1年である。特別な条件は試験で確認された欠陥に関係していなければならない。それは、特定の卒後研修内容を果たす、特定の医師としての勤務を指導の下で行なう、及び知識の欠落を補う、という義務を内容として含むことができる。

  (6) (4) の中に該当するケースがあれば、試験委員会は再試験のための前提条件として、卒後研修の延長の代りに、理論的知識で確認された欠陥を知識の学習で補うという義務を言い渡すことができる;これについて委員会は期限を設定するが、3ヵ月を下回らないものとする。

  (7) 試験の申請者が十分な理由なくして欠席したり、または十分な理由なくしてやめたりした場合には、試験は不合格とする。

  (8) 試験について記録を作成する。それは以下のものを含まなければならない

1.     試験委員会の人員割当

2.     受験者の名前

3.     試験の対象

4.     出された問題とその回答に対する覚え書き

5.     試験の場所、開始と終了

6.     試験が不合格の場合には、試験委員会によって下された追加の卒後研修の期間と内容に関する付帯条件。

 

§17 試験の決定

 

  (1) 試験委員会の委員長は医師会に試験の結果を報告する。

  (2) 試験に合格した場合は、医師会は申請者に医師名称標榜の権利に関する証書を出す。

  (3) 試験に不合格の場合は、医師会は申請者に書面で、その理由と§16 (4 から 6) に基づいて試験委員会が決定した課題を含めて通知する。

  (4) (3) による医師会の通知に対して、申請者は行政裁判所規則§§69 から 73 に従って異議を申立てることができる。医師会は異議に関して異議審査委員会から聴取したのち決定をする。

 

§18 再試験

 

不成功に終った試験は、早くても3週間以後に再度繰り返される。再試験には§§14 から 17 が適用される。

 

§19 同等の卒後研修の認定

 

  (1) 卒後研修規則§4 及びT章とU章とは異なった卒後研修過程によって卒後研修を完了した者は、卒後研修が同等であれば、申請により医師会から認定が受けられる。認定の手続については、§§14 から 18 が同様に適用される。

  (2) 完了していない、本卒後研修規則§4及びT章とU章とは異なる卒後研修は、本卒後研修規則の規定により、それまでに行なった卒後研修期間がそのまま全部、または部分的な形で算入されることになる。それまでに行なわれた卒後研修期間の算入については、医師会が試験委員会から聴取して決定する。

 

§20 ドイツ連邦共和国以外での卒後研修

 

  (1) ヨーロッパ共同体加盟国の国民として、ドイツ連邦共和国以外の加盟国で習得した専門科重点領域または特殊領域に対する専門関連の証書、試験証明書、またはその他の専門関連の能力証明書を有する者は、本卒後研修規則によりこの専門科重点領域、または特殊領域において対応する認定が可能であれば、申請により、対応する専門科、対応する重点領域または特殊領域の認定及び対応する名称を標榜する権利が得られる。その場合ヨーロッパ共同体の指針による卒後研修の最低期間が満たされていないときは、医師会はその医師から、卒後研修の事実上の期間と先に述べた卒後研修の最低期間の差の2倍に相当する期間を、事実として、また適法に医師として勤務していたことを示す、母国または出身国の当該機関の証明書を提出させることができる。

  (2) ヨーロッパ共同体加盟国の国民が他の一加盟国において行なった卒後研修の期間で、(1) 1 節によりまだ資格証明が実施されていないものは、§19 (2) により、本卒後研修規則の適用範囲の中で規定された卒後研修期間として全部または部分的に算入される。

  (3) ヨーロッパ共同体加盟国以外の外国での卒後研修は、それが本卒後研修規則の原則に相当し、連邦共和国内で最低12ヵ月の卒後研修が、目指している専門科重点領域、または特殊領域、または自由選択卒後研修の中で行なわれているときに、全部または部分的に算入される。ヨーロッパ共同体加盟国内での卒後研修が、加盟国の国籍を所有しない医師によってなされた場合も同様である。

  (4) ドイツ国籍は有しないが、基本法 Art.116 (1) の身分に属する医師によって、基本法の適用範囲外でなされた卒後研修は、それが本卒後研修規則による卒後研修と同等と認められるときは算入される。同等でないか、または完了していない卒後研修の場合は、卒後研修期間の算入には§19 (2) が準用される。

 

§21 医師名称の剥奪

 

  (1) 医師名称の認定は、認定に必要な前提が存在しなくなった時に取下げることができる。取下げについて医師会が決定する前に、§14 によって作られた試験委員会及び医師から聴取することができる。

  (2) 取下の通知の中で、規定通りの卒後研修を証明するためには、該当医師が卒後研修のどの部分を行なわなければならないかを明確にする。取下通知と手続に対しては、その他の点では§17 (3 及び 4) を準用する。

  (3) 専門科の中の自由選択卒後研修、または専門科の中の特定の診断及び治療方法の診断治療専攻を習得するための卒後研修を成果を収めて完了した認定の取下に対しては、(1)及び(2)が準用される。

 

§22 医師の義務

 

専門医名称を標榜する者は、原則としてこの専門科だけで従事することが許される。重点領域の名称を標榜する医師は、重点領域の中で従事しなければならない。同様のことは、1つ以上の専門科名称または重点領域名称を標榜する医師にも適用される。

 

§23 移行規定

 

  (1) 従来出されている医師名称の認定は、本卒後研修規則で規定された対応する医師名称を標榜できることになるので、引続き効力を有する。

  (2) 本卒後研修規則の発効前に、従来の卒後研修で専門科重点領域または特殊領域の卒後研修を始めた者は、この研修を従来の卒後研修規則で完了することができる。医師名称の認定には (1) が準用される。

  (3) 本卒後研修規則の新しい医師名称が導入されたときに、この医師名称の導入に該当する専門科重点領域または特殊領域において、導入より遡って8年以内に、卒後研修の各最低期間に相当するものと少なくとも同じ期間を、規則正しく卒後研修機関または同様の機関で従事した者は、申請によりこの医師名称標榜の認定を得ることができる。相違点は、卒後研修規則T章及びU章に各専門科重点領域または特殊領域ごとに定められている。申請者は、各専門科重点領域または特殊領域において 1 節に述べた最低期間を規則正しく従事したことの証明をしなければならない。証明書から、申請者がその期間該当する専門科重点領域または特殊領域で優先的に従事したこと、及びそのさいに包括的な知識、経験及び技能を習得したことが分らなければならない。

  (4) 専門科自由選択卒後研修の導入、並びにそれに関係して該当する証明書を申請する場合に、(3) が準用される。専門科の中の診断治療専攻の導入にさいして、導入より遡って4年以内に、相当する業務を十分に行ない、そして必要な知識を習得しているときには、医師は申請により該当する証明書を得ることができる。申請者は十分な業務と必要な知識及び経験を医師会に証明しなければならない。

  (5) 本卒後研修規則の発効のさいに、外科専門科において、従来の専門科名称と一緒に従来の[旧]専門分科名称(血管外科、小児外科、形成外科、胸部及び心臓血管外科、災害外科)を標榜している者は、それを保持することができる。このような者は、[旧]専門分科名称を標榜する権利をすでに有しており、この[旧]専門分科で少なくとも2年間主として従事しているときには、申請により、「外科専門医Facharzt fuer Chirurgie」「外科医師Arzt fuer Chirurgie」または「外科医Chirurg」の名称及び従来標榜してきた[旧]専門分科名称を放棄して、下記の専門医名称の一つを標榜する権利を得る:

      [旧]専門分科名称「小児外科」は、専門医名称「小児外科」;

      [旧]専門分科名称「形成外科」は、専門医名称「形成外科」;

      [旧]専門分科名称「胸部−心臓血管外科」は、専門医名称「心臓外科」。

  (6) 本卒後研修規則の発効のさいに、[旧]専門分科名称「音声医学及び小児聴覚学Phoniatrie und Paedaudiologie」を標榜していた者は、それを保持することができる。申請により、「音声医学及び小児聴覚医学専門医Phoniatrie und Paedaudiologie」の名称を標榜することができる。

  (7) 本卒後研修規則の発効のさいに、付加名称「輸液医学」を標榜していた者は、それを保持することができる。申請により、付加名称「輸血医学」を標榜する権利が得られる。旧付加名称「輸液医学」の所有者に対する「輸血医学専門医」としての認定は (3) による。

  (8) 本卒後研修規則の発効のさいに、精神科医の名称を標榜していた者は、それを保持することができる。付加名称「精神療法」の標榜が許されていたときは、申請により、「精神科及び精神療法専門医」の専門医名称を標榜する権利が得られる。本卒後研修規則の発効のさいに、小児−及び思春期精神科の専門医名称を標榜していた者は、申請により、「小児−及び思春期精神科及び−精神療法」の専門医名称を標榜する権利が得られる。

  (9) 本卒後研修規則の発効のさいに、付加名称「精神分析」または「精神療法」を標榜していた者は、それを保持することができる。付加名称を取得した後最低5年の期間主として精神療法に従事してきたときは、申請により、「精神療法医学専門医」の専門医名称を標榜する権利が得られる。

  (10) 連邦医師法§10a により顎外科専門医として口腔−顎−顔面外科の医師としての職業を行なうことを無期限に許可されていた者は、申請により、「口腔−顎−顔面外科専門医」または「口腔−顎−顔面外科医」を標榜する権利が得られる。連邦医師規則§10a による認可を有する他の歯科専門医は、同等の資格を証明し、その専門領域で十分に幅広く従事することが許されているときは、申請により、その許可内容に相当する専門医名称を標榜する権利が得られる。

  (11) 本卒後研修規則の発効のさいに、個人診療に従事し、最近8年間に少なくとも6年間一般医として従事した医師(開業医を含む)で、専門医名称を有しないものは、申請により、「一般医学専門医」の名称を標榜する権利が得られる。申請者はこの期間規則通り従事したことを証明する必要がある。そのさい、本卒後研修規則のT章により一般医学に算入可能なものであるならば、病院で勤務したことも認められる。

  (12) 本卒後研修規則発効の時点で効力のある移行規定により、旧東ドイツの専門医規則またはサブスペシャルティ規則による医師名称を合法的に標榜しているものは、それが従来の卒後研修規則による対応する医師名称、または本卒後研修規則による対応する医師名称に変換できないときは、それらの名称を引続き標榜して差支えない。(これは Berlin, Brandenburg, Mecklenburg-Vorpommern, Sachsen, Sachsen-Anhalt,Thueringen【訳者注:これらは旧東ドイツの州】の州医師会における卒後研修規則だけに効力を有する。)

  (13) この移行規則による申請は、本卒後研修規則発効後2年以内に提出されなければならない。

以上

 


I. 専門科、診断治療技術(A)、自由選択卒後研修(B)、重点領域(C)、特殊領域の一覧2002

【訳者解説(上記)に述べたように、2003年の改定により自由選択卒後研修と診断治療専攻は姿を消し、別の能力証明書となる可能性がある。従って以下の記述は大幅に変更される運命にあるが、一方においては、ドイツが専門医制度の改革に努力してきた経過を伝える歴史的な記録とも言える。内容的には古くなっても、時代に即した対応を続けているという姿勢は、私たちに大きな教訓となるのではないだろうか。訳者】

1.      一般医学

       1.A.1検査室検査

       1.B.1臨床老人医学

2. 麻酔

       2.A.1 検査室検査

       2.B.1 専門的麻酔学的集中医療

3. 解剖学

4. 労働医学

       4.A.1 検査室検査

5. 眼科

       5.A.1 検査室検査
5.A.2 レーザー外科
5.A.3 高難度レーザー外科
5.A.4 高難度眼球処置
5.A.5 高難度眼筋肉外科

6. 生化学

7. 外科

       7.A.1 検査室検査
7.A.2 食道−胃−十二指腸内視鏡検査

       7.B.1 専門的外科的集中医療
7.C.1
血管外科
7.C.2 胸郭外科
7.C.3 災害外科
7.C.4 内臓外科

8. 診断放射線学

       8.A.1 女性性器のソノグラフィー
8.A.2 乳腺のソノグラフィー
8.A.3 顔部軟部のソノグラフィー
8.A.4 腹部及び後腹膜血管のソノグラフィー

       8.C.1 小児放射線学
8.C.2 神経放射線学

9. 産婦人科

       9.A.1 検査室検査
9.A.2 婦人科的剥離細胞学
9.A.3 性器及び乳房の婦人科的吸引及び穿刺細胞学
9.A.4 乳腺のソノグラフィー
9.A.5 マンモグラフィー
9.A.6 女性生殖器系の血管のソノグラフィー
9.A.7 胎児血管のソノグラフィー

       9.B.1 婦人科的内分泌学及び生殖医学
9.B.2
専門的産科及び周産期医学
9.B.3
専門的手術的婦人科学

10. 耳鼻咽喉科

       10.A.1 検査室検査

       10.B.1 専門的耳鼻咽喉の外科

11. 皮膚性病科

       11.A.1 検査室検査
11.A.2 四肢血管のソノグラフィー
11.A.3
陰茎血管及び陰嚢血管のソノグラフィー

12. 心臓外科

       12.A.1 検査室検査
12.A.2 超音波心臓動態診断

       12.B.1専門的心臓外科的集中医療

       12.C.1胸部外科

13. 人類遺伝

       13.A.1 細胞遺伝学的検査室診断
13.A.2 分子遺伝学的検査室診断

14. 衛生及び環境医学

15. 内科

       15.A.1 検査室検査
15.A.2 内科医的レントゲン診断
15.A.3 シグモイド−コロンスコピー
15.A.4 頭蓋外脳血管のソノグラフィー
15.A.5 気管支鏡検査
15.A.6 超音波心臓動態診断

       15.B.1 臨床老人医学
15.B.2 専門的内科的集中医療

       15.C.1 血管学
15.C.2 内分泌学
15.C.3 消化器学
15.C.4 血液学及び内科腫瘍学
15.C.5
心臓学
15.C.6 腎臓学
15.C.7 肺臓学
15.C.8 リューマチ学

16. 小児外科

       16.A.1 検査室検査
16.A.2 運動器官のソノグラフィー
16.A.3 乳児腰部のソノグラフィー
16.A.4 食道−胃−十二指腸鏡検査
16.A.5 シグモイド−コロンスコピー
16.A.6 気管支鏡検査

       16.B.1 専門的小児外科的集中医療

17. 小児科

       17.A.1 検査室検査
17.A.2 副鼻腔のソノグラフィー
17.A.3 甲状腺のソノグラフィー
17.A.4 顔部及び頚部の軟部のソノグラフィー
17.A.5 胸部器官のソノグラフィー
17.A.6 胃腸のソノグラフィー
17.A.7 女性性器のソノグラフィー

       17.B.1 専門的小児科集中医療

       17.C.1 小児心臓学

       17.C.2 新生児

18. 小児−思春期精神病学及び精神療法

19.  臨床薬理学

20. 臨床検査医学 

21. 微生物学及び感染疫学

22. 顔面外科

       22.A.1 検査室検査
22.A.2 頭蓋外脳血管のソノグラフィー

23. 神経病学

       23.A.1 検査室検査

       23.B.1 臨床老人医学

24. 神経外科

       24.A.1 検査室検査

       24.B.1 専門的神経外科的集中医療

25. 神経学

       25.A.1 検査室検査

       25.B.1 臨床老人医学
25.B.2 専門的神経学的集中医療

26. 神経病理学

27. 核医学

       27.A.1 磁気共鳴断層撮影−スペクトロスコピー

28. 公衆衛生

29. 整形外科

       29.A.1 検査室検査

       29.B.1 専門的整形外科的外科

       29.C.1 リューマチ学

30. 病理学

       30.B.1 分子病理学

31. 薬理学及び中毒学

32. 音声及び小児聴覚学

33. 理学的及びリハビリテーション医学

34. 生理学

35. 形成外科

       35.A.1 検査室検査

       35.B.1 専門的形成外科的集中医療

36. 精神科及び精神療法

       36.A.1 検査室検査

       36.B.1 臨床老人医学

37. 精神療法医学

38. 法医学

39. 放射線治療

40. 輸血医学

41. 泌尿器科

       41.A.1 検査室検査

       41.B.1 専門的泌尿器科的外科

 

 

II 特殊領域付加称号

1.アレルギー学

2.温泉学及び医学気候学

3.企業医学 

4.輸血 

5.カイロプラクティック 

6.航空医学 

7.手の外科 

8.ホメオパチー 

9.医学遺伝学 

10. 医学情報学 

11. 自然療法 

12. 静脈学 

13. 理学療法 

14. 形成手術

15. 精神分析 

16. 精神療法 

17. リハビリテーション 

18. 社会医学 

19. 専門的疼痛治療

20. スポーツ医学 

21. 発声言語障害 

22. 熱帯医学 

23. 環境医学