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D132

体外受精問題に対する倫理委員常置委員

Staendige Kommission fuer Fragen der In-vitro-Fertilisation

 

Tätigkeitsbericht der Ärztekammer Nordrhein 2004

ノルトライン州医師活動報告200497-100頁 より

 

 

訳者解説

ここに掲載した翻訳は、ドイツの「ノルトライン州医師活動報告2004」に倫理委員活動報告として発表されたものである。これを見ると、倫理委員審査承認だけでなく、届出内容分類統計評価を行っていることが分る。

活動報告についてはファイルD131訳者解説簡略紹介しているように、2002年から毎年報告されている。ここに紹介する2004年版のサイトは:

報告作成アクセスできない状態になっている。一時のものと思われるので、後日掲載することにする。

ドイツ連邦医師体外受精に対する指針作成しているが、1991年の連邦法「胚保護法」制定に合わせて作成された指針卵管配偶移入移植を伴う体外受精、及び他の類似方法実施のための指針」は翻訳されて「ドイツの公的医療保険医師職業規則」(信山社、1996)に発表されている。この指針はその後改定され、現行のものは1998年版で「補助生殖実施のための指針」と名称を変えているが翻訳されていない。しかし、指針基本構成1991当時のものと同じである。現行指針のサイトは:
http://www.bundesaerztekammer.de/30/Richtlinien/Richtidx/Kuenstbefrucht_pdf.pdf

訳者はこの方面専門知識十分であるため、不適切な訳語などがあると思うが、読者の方で補っていただくか、あるいは当方にご連絡ください。

In-Vitro-Fertilisation (IVF) 体外受精と訳した;
Embryotransfer (ET);
Gamete-Intrafallopian-Transfer (GIFT);
Embryo-Intrafallopian-Transfer (EIFT);
Zygote-Intrafallopian-Transfer (ZIFT);
Intracytoplasmic-Sperm-Injection (ICSI)

訂正:「業務報告」を「活動報告」に訂正しました。

2004725

岡嶋道夫訳者

 

 

 

1978年に、体外での卵子受精によって存在が始まり、そのあと子宮移植されてできた最初子供英国で生れたという報道に驚かされた。子供を望むが卵管欠如又は閉鎖のある女性純粋医学治療最初理解されていた方法が、止まるところを知らない予期しない急速展開を導くに至った。卵子男性配偶自由に使えることは、人間生命の始まりに深く関わる干渉をもたらすことになった。

 

乱用されるようになるかも知れないという認識は、体外受精指針作成によって高度の質基準に努め、乱用予防するという医師組織努力を導いた。すでに1985年に、ドイツ連邦医師によって指針発表され、各州医師採用するように勧告された。ノルトライン州医師(ÄkNo)1986年にはすでに職業規則に取り入れ、その後規則生殖医学領域の新しい発展適応させてきた。

 

1990年に、2年間協議のあと胚保護法が発効したが、これには不遵守場合刑法による懲罰を定めた規定が書かれている。とくに、3個の卵子だけしか受精してはならないという決定は、国際には存在していない制限と受け止められ、これは多くの同僚によってドイツの生殖医学欠点とみられたが、3体以上胎児多胎妊娠出現不可とし、過剰な胚を防いだ。

 

補助生殖指針を書き換えるために、ÄkNoでは1986年に“体外受精試験受精問題常置委員”が設立された。委員Prof. Dr. Dieter Krebsのこの委員は、連邦医師指針適応するIVF-チームの施設人員配置審査し、ÄkNo理事長に、決定に当る場合議決提供するという任務を有している。体外受精問題常置委員は、職業規則による申告義務として提出されるデータをもとにして補助生殖の質を審査する。補助生殖細部条件は、ノルトラインの医師職業規則の中に書き記された。新しい治療機会が出ると、職業規則はこれに適応させている。現在効力のある2003322日の職業規則2003820発効)は職業規則の第III章に体外受精を取り入れている。

 

以下医師職業規則の第III§13

§132) 特殊医療手続

  (1) 倫理問題が生じていて、それに対して医師適応設定及び実施のための勧告を定めているような特殊医療処置または手続場合には、医師勧告を守らなければならない。

  (2) 医師要求するものであれば、医師はそのような処置または手続医師届出なければならない。

  (3) そのような業務採用される前に、医師医師要求により、人的及び物的条件勧告を満たしていることを証明しなければならない。

 

 

委員設立後に、多数診療病院がチームの装備人的構成について審査を受け、また診療病院巡回視察実施されたり、新しいスペース視察された。チームの変更は高い数になり、また新たにチームに採用された同僚はかれらの質が審査された。

最初からの助言の数

新規申請 53

変更届出62【数合わない64?】


申請の数は表5に示したとおり:

表5

一覧 1987-2003

1987

4

新規申請1985/86 開始助言 1987

1996

4

新規申請

5

変更届出

3

新規申請1987

1

届出 未婚ペアによるIVF

6

届出 夫婦(結婚)において第三者の精子による体外受精heterologe IVF

1

届出 夫婦heterologe IVF

(卵子提供について問合せ)

1997

1

新規申請

6

変更届出

1988

5

新規申請

2

届出 未婚ペアによるIVF

2

変更届出

1988

3

新規申請

5

届出 夫婦heterologe IVF

3

変更届出

2

届出 未婚ペアによるIVF

3

届出 未婚ペアによるIVF

1989

4

新規申請

1999

4

新規申請

1

届出 夫婦heterologe IVF

2

変更届出

1990

3

新規申請

4

届出 未婚ペアによるIVF

1

変更届出

1

異議審査手続

3

届出 夫婦heterologe IVF

2000

1

新規申請

1991

2

新規申請

13

変更届出

1

届出 夫婦heterologe IVF

2

届出 夫婦heterologe IVF

3

届出 未婚ペアによるIVF

10

届出 未婚ペアによるIVF

1992

1

新規申請

2

異議審査手続

1

変更届出

2001

3

新規申請

1

届出 夫婦heterologe IVF

7

変更届出

4

届出 未婚ペアによるIVF

2

届出 夫婦heterologe IVF

1993

3

新規申請

15

届出 未婚ペアによるIVF

6

変更届出

2

異議審査手続

1

届出 夫婦heterologe IVF

2002

4

新規申請

1

届出 未婚ペアによるIVF

5

変更届出

1994

2

新規申請

12

届出 夫婦heterologe IVF

4

変更届出

34

届出 未婚ペアによるIVF

6

届出 未婚ペアによるIVF

2003

2

新規申請

1995

4

新規申請

5

変更届出

5

変更届出

15

届出 夫婦heterologe IVF

4

届出 未婚ペアによるIVF

47

届出 未婚ペアによるIVF

1

異議審査手続

 

 

 

1

卵子提供予定の問合せ

 

 

 

1

職業法上の留保

 

 

 

 

委員会は、結婚していないペアにおける体外受精実施前の医師からの申請に取り組まなければならないが、その数は増加している。これらの申請において申請を出した医師は、強制的に義務づけられてはいないが、委員会の勧告に従うようにと助言される。

ÄkNo理事会の体外受精問題の常置委員会は2000年に、未婚のペアにおける体外受精を実施する場合及び他人の精子を使用する場合における医師の助言は、医師が自主的に処理できるように任せることにした。

申請では子供の福祉を守るために以下の諸点に関して情報を求める:

 

1.        家族状態の報告

2.        医学的適応/禁忌の審査

3.        ICSI治療実施の申請の場合:家系分析と場合によっては遺伝学的助言

4.        法律相談を含む公証人の証書

5.        親としての条件:安定したペア関係とペアの精神身体的助言の提供。

 

他人の精子を用いる場合、体外受精問題の常置委員会の議決を肯定的することを守らなければならない。申請は審査されるが、以下の条件が要求される:

 

          ペアと精子提供者は、精子提供者の名前を名のるという子供の既存の権利について説明を受けなければならない。医師に対して該当する情報提供が求められたときには、精子提供者は自分の名前が知らされるということに明確に同意したことを認めなければならない。

          医師は、自分が精子提供者に説明し、同意を得て、そして精子提供者の個人的データを記録したことを確認する。

          精子提供の法的結果について夫婦/夫婦でないペアに公証人による相談と教育を行うこと、及び200249日の子供の権利改善法(Kinderrechteverbesserungsgesetz (KindRVerbG)により社会的父親【生物学的に父親でないが法律的には父親である】が父権に対する否認権を失うことについて教えること。
【上記の子供の権利改善法は民法の§1600として次のような表現で書かれている:子供が男と母親の同意によって第三者である精子提供者による人工受精で生れたときは、男または母親による父権の取消は排除される。】

          混合精子を用いないこと及び精子提供者は限定された数の妊娠に対してのみ協力させられることを保証。

体外受精問題の常置委員会は月の間隔で会議を開く。必要な書類が提出されているときは、委員会は投票によって決定し、医師に助言結果を書面で通知する。

委員会の勧告または留保はしばしば規制として解釈されるので、そのために生殖医学の法的規定が求められる。一方、大多数の医師は医師の自主管理の枠内で行う助言を補助的なものと判断している。

 

手続と質のコントロール(年報)

 

さらに体外受精問題の常置委員会は、報告義務により提出されたデータを手がかりにして、職業規則に準拠して補助生殖の質を審査する。

年に1回体外受精問題の常置委員会宛に,補助生殖の数(IVF/ETGIFT/EIFT/ZIFTICSI)、患者、処置、穿刺、卵子、受精卵、胚、胚移植、胚移植率、臨床的妊娠、妊娠率/周期(Zyklus, cycle)、妊娠率/ET、妊娠率/胚、分娩、Kryozyklenに関する質のデータの報告を行わなければならないことが定められている。

In-Vitro-Fertilisation (IVF);
Embryotransfer (ET);
Gamete-Intrafallopian-Transfer (GIFT);
Embryo-Intrafallopian-Transfer (EIFT);
Zygote-Intrafallopian-Transfer (ZIFT);
Intracytoplasmic-Sperm-Injection (ICSI)

 

体外受精問題の常置委員会は、義務づけられたデータを含んだ記入用紙を1992年に作成した。その他にIVF−チームの作業に関するより詳しい様子を入手するために、自由意志によるデータも集めた。最近の結果は表に示したとおりである。喜ばしいことに、妊娠率は過去3年の間に顕著に上昇したが、診療所や病院ごとの変動は大きい。

 

6

項目

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

患者

3.987

4.865

6.651

6.325

6.706

5.457

6.140

処置

7.244

8.217

9.121

9.522

9.540

7.352

8.169

穿刺

6.788

7.988

8.373

8.376

8.724

7.018

7.678

卵子

54.236

55.065

66.003

61.326

65.855

58.142

67.915

受精卵

24.700

24.618

33.451

33.501

35.520

29.980

35.262

13.658

15.149

18.962

18.075

18.564

13.882

14.919

胚移植

5.516

6.872

7.429

7.511

7.839

5.902

6.706

臨床的妊娠

1.343

1.688

1.776

1.847

1.957

1.596

1.971

分娩

686

804

931

795

1.213

1.199

1.263

 

表7

自由意志での報告

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

多胎妊娠

244

412

550

345

365

524

364

早産

106

51

91

128

80

162

202

流産

277

311

280

410

382

390

425

子宮外妊娠

27

29

22

31

44

82

26

形成異状

14

18

21

22

33

26

25

 

 

1999-2001年の統計の比較

 

処置数に変化のないことが目立っている。1回の穿刺での卵子採取数は、1999年の7.38卵子から2000年の8.16卵子を経て、今や8.8卵子に上昇した。それに反して、胚に成長した卵子のパーセントは低くなった:199928.37%;200024.26%200121.97%。数の上昇に伴って卵子の質はむしろ悪くなる、と言えるかもしれない。

 

喜ばしいことであるが平均妊娠率がたえず上昇していることが注目される。胚移植に対する臨床的妊娠の数が24.28%から26.47%を経て2001年には28.61%に上昇した。これはBaby-Take-Home-Rateに影響があり、1999年:14.16%2000年:14.53%を経て、現在は16.45%に上昇した。この場合従来と同様に、開始された妊娠の経過に関するRückmeldung(「事後の報告」という意味か?)がきわめて少ないことを考慮しなければならない。1971例の臨床的妊娠のうち283例において妊娠の結果に関して何も記録されていない。それにより形成異状、早産その他に関する証言が損ねられているため、Rückmeldung(事後報告?)のシステムの改善は早急に必要であると思われる。

 

臨床妊娠数に対する流産の数は21.52%で、Rückmeldungが悪いことを考慮に入れても、低いことは喜ばしい。早産の数が出生児の15.99%であることはきわめて高い。6つの作業グループ早産1例も報告していない。Ludwig研究が述べているように、早産になることは多胎だけを原因にすることはできない。早産の率の上昇補助生殖後の単胎児に対しても該当することを示していると思われる。コントロール研究では早産になる率はコントロールの2−3倍であった。したがって、早産になる率が高くなることを説明に取り入れるかどうかについては熟慮する必要があるだろう。

以上