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T608

ドイツの臨床初期研修医と給料

 

ドイツの現行医師免許規則によると、医学部6年の課程を終えて国家試験に合格すると医師の仮免許に相当する資格が与えられ、実地研修医師Arzt im Praktikum(AiP)として18ヶ月臨床初期研修を受けなければならない。

AiPという制度は1988年に始まったが、問題視されることが多かった。最近は卒前の臨床教育が充実してきたので、このような臨床初期研修が必要でなくなってきたこと、AiPは身分的に中途半端な医師であり、給与が低いことなどから、何年も前から医師会をはじめとして、その廃止を求める声は多かった。そして労働搾取という激しい表現さえ使われる情況である。最近の若い人は、責任が重く、きつい職業である医師を敬遠するようになり、かつては医師過剰が心配されていたのに、3年くらい前から急に病院での医師の欠員が目立つようになってきたので、医師を魅力ある職業に取り戻すためにもAiPの廃止が必要であるという声が大きくなっている。

2002年に医師免許規則が大幅に改訂されたが、AiPの規定は以前のまま残った。これをめぐって色々な議論や折衝が行われたようであるが、2003年10月5日の閣議後に、厚生大臣に相当する保健衛生社会福祉省のシュミット大臣が、2004年10月1日にAiPの廃止を決定すると発言した。この日付で廃止の法律が出ると思われるが、現実に何年からAiPが存在しなくなるかについては、正確な情報はまだ入手していない。しかし、いずれにしても、AiPが廃止されることは確実な状況となった。ある医師会長は政治の反応が遅すぎると述べている。

一見日本の現状との類似を感じさせるものがあるが、卒前教育、医師国家試験及び卒後研修規則などは日本とはかなり違っているので、単純に比較することはできないが、参考になる点はあると思う。

ところで、2003年8月のWestfaelisches Aerzteblattという州医師会雑誌に、AiPの給与額が載っていたのでご参考までに以下に紹介しよう。

金額の単位 ユーロ

 

AiP

給与、月額

既婚者手当

2003年

1年目

2年目

1161.92

1323.96

61.84

2004年

1年目

2年目

1173.54

1337.20

62.46

2005年

1年目

2年目

1185.28

1350.57

63.08