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T609

EU加盟国拡大と医療の質

 

2004年5月1日にポーランドを始めとする10ヶ国がEUに加入することになりました。

EU加盟国の間では、医師が国境を越えて自由に医療に従事できることになっています。その場合、例えば開業する国の制度に従うことなどの制約があり、また専門医の標榜名や教育レベルを相互に調整する努力がなされています。しかし、今までは他の加盟国に移住して医療に従事する医師は、言葉の制約などもあり、あまり目立たなかったようです。

しかし、間もなくEUが拡大することにより、ポーランドなどの医師の中には、現在のEU加盟国への移住を考えている人が少なくないとのことです。

そのような状況の中で欧州議会の対応について、2004年3月8日のドイツ医師会雑誌のオンライン・ニュースは次のようなことを伝えています。

 

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欧州議会は、EU内の相手国に移動して開業したいと考える家庭医と専門医に申告義務を課すことに同意した。それにより、転出希望の医師は原則として相手国の医師自治の規定の支配下に入る。

多数のEU諸国は欧州議会の決定を歓迎した。登録義務は保健医療の質保証に大きく寄与するというのが、多数のヨーロッパの医師職業組織が持っている支配的な考え方である。
 EU内の他の国で開業する医師はこれからの数年間に顕著に増加するであろうと保健医療政策の人は予測している。5月1日にEUに加盟するポーランドや他の諸国での医師と他の保健医療関連職へのアンケートによると、それらの国では移動への準備が大きいという。
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EU諸国にとっては、医師の国境を越えた移動により自国の医療の秩序や質が影響を受けることを心配して、このような欧州議会の決定がなされたと思います。

日本には直接関係のないことですが、医療の質を考えた場合、このような国際的な動きに無関心であってはならないでしょう。