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訳者解説(末尾)をご覧下さい

D101

ドイツ医師のための職業規則

1993年版

 

ドイツ医師のための職業規則1976年第79回ドイツ医師議で議決され、

その後197719791983198519881990及び1993年の医師議で

改訂が行なわれ、現在効力を有するのは下記の版である:

ドイツ医師雑誌 91(1/2),

A:5362; B:39-48; C:38-47,1994110.

【この規則1956年に制定されたが、1976年に包括されていた卒後研修規則を切り離した】

 

ホームページ1970年版(D1181997年版(D119掲載しています

 

Berufsordnung fuer die deutschen Aerzte

Aufgrund der Beschluesse des 79. Deutschen Aerztetages 1976 und gemaess den Aenderungen der Aerztetage 1977, 1979, 1983, 1985, 1988, 1990 und 1993 wird nachfolgend die Berufsordnung fuer die deutschen Aerzte in der zur Zeit gueltigen Fassung veroeffentlicht:

Deutsches Aerzteblatt 91(1/2), A:5362; B:39-48; C:38-47, 10.Januar 1994.

 

誓約


私は私の師及び同僚当然なすべき尊敬を表します。私はこれらのすべてを私の名誉以下誓約は総ての医師適用される:

『私が医師という身分採用されるに当り、私の生命人間奉仕に捧げることを私は厳粛誓約いたします。

私は私の職業良心尊厳をもって実行いたします。

私は総ての私に委託された秘密患者の死んだ後も守ります。

私は私の全力をもって医師としての職業名誉品位ある伝統維持し、私の医師としての義務を行なうに当り、宗教国籍民族さらに派閥または社会立場によって差別することはいたしません。

私はあらゆる人の生命に対して畏敬の念を持ち、たとえ脅迫を受けたとしても人間の掟に反することなく私の医術行使します。

私は私の師及び同僚当然なすべき尊敬を表します。

私はこれらのすべてを私の名誉にかけて厳粛約束いたします。』


 

 


§1 職業活動

 

 (1) 医師個人および国民全体健康奉仕する。医業営業ではない。医業はその本質からみて自由である。医師職業は、医師自己良心医師道徳の掟に従ってその使命を果すことを要求している。【訳者注:自由業】

 

 (2) 医師使命生命維持し、健康を守り回復させ、並びに苦痛を和らげることにある。医師人間の掟に従って職務を行う。医師はその使命と相容れない、または従うことに責任をとれないような主義を認めてはならないし、そのような規定指示に従ってはならない。

 (3) 医師はその職務良心に行い、職務関連して寄せられる信頼に応えなければならない。

 (4) 医師は、人体臨床実験、または個人データに関係した疫学研究を行なう前に、計画関連した職業倫理的及び職業規則問題について、医師または医学に設けられている倫理委員審議を求めなければならない。

 (5) 研究目的人間の胚を作ること、並びに胚への遺伝導入及び人間の胚及び全型発育能の細胞での実験は禁じられている。女性臓器移植する前に、胚について診断を行なうことは禁じられている;胚保護法§3 での性と関連する重大疾患排除するための手段の時は別である。医師は、生きている配偶と生きている組織を用いた実験をする前に、計画関連した職業倫理的及び職業規則問題について、医師または医学に設けられている倫理委員審議を求めなければならない。

 (6) (4) 及び (5) による審議を行なう場合に、1975年(東京)、1983年(ヴェニス)及び1989年(香港)で改訂版された1964年(ヘルシンキ)の世界医師宣言基礎に置く。

 (7) 医師は、職業活動適用される規則を知り、遵守する義務がある。

 (8) 医師場所を移しながら医業を行ってはならない。医師個人に対する医学相談あるいは治療手紙新聞雑誌、テレビやラジオを通じて行ってはならない。

 (9) 医師はその職業を行う場合自由である。医師自分患者との間に必要信頼関係存在しないと確信したときなどには、診療拒否することができる。救急場合救助するという義務はこれに該当しない。

(10) 医師原則として同じ専門科の医師だけに代理をさせるべきである。

 

§2 説明義務1)

 

 医師患者自己決定尊重しなければならない。医師処置に当って患者同意必要とする。同意基本的には個人会話による説明前提となる。

 

§3 守秘義務

 

 (1) 医師は、医師資格で委ねられたり、知らされた事柄について秘密を守らなければならない。これには患者書面による報告患者に関する記録、X線写真、その他の検査所見も含まれる。

 (2) 医師自分家族に対しても守秘義務を守らなければならない。

 (3) 医師は、その補助、および医療業務従事するための見習者に対して秘密保持法的義務を教え、これを文書として残しておかなければならない。

 (4) 医師守秘義務から解かれたとき、または公表することがより高い法益を守るために必要とされる場合には、秘密を明らかにする権限が与えられる。法的証言−及び届出義務関係がない。

 (5) 医師第三から公的または私的委託されて従事する場合医師によって確認された事項がどの範囲第三報告されることになっているかについて、験者検査処置を受ける前に知らなかったり、知らされていなかった場合には、医師には守秘義務がある。

 (6) 数名の医師同時または相次いで同一患者診察または処置した場合には、患者同意が得られれば、医師たち相互の間に秘密保持義務はない。

 (7) 科学研究および教育目的のためには、患者匿名確保されるか、またはこのことが明白同意された場合に限り、守秘義務該当する事実所見発表して差し支えない。2)

 

§4 医師共同作業

 

 (1) 医師は、同じ患者同時または前後して診察または治療する医師と、同僚として共同作業をする義務がある。

 (2) 医師は、自分医師としての知識からそのように感じ、患者がそれを了解するかまたは了解が得られたと受け取れた時には、他の医師意見を求めたり、患者を他の医師に回す義務がある。診療している医師は、他の医師意見を求めてほしい、または他の医師に回してもらいたいという患者またはその家族の願いを原則として拒否すべきではない。

 (3) 医師は、患者承諾すれば、処置前、処置中、または処置後の医師に、依頼があれば得られている所見を渡し、それまでの処置を知らさなければならない。専門への紹介病院への紹介及び病院からの退院の時には、はっきりとした依頼がなくてもこれは適用される。オリジナル書類返却するものとする。

 

§5 卒後研修義務

 

 卒後研修をする権利を与えられた医師は、医師協力者という与えられた機会身分】の枠内で、その義務を損うことなく、卒後研修規則に従って選択した卒後研修課程において、卒後研修をすることに努めななければならない。

 

§6 未出生生命維持

 

 医師は未出生生命維持することを原則として義務づけられている。妊娠中絶法律の定めるところによる。医師妊娠中絶強制することはできない。

 

§7 死んだ胎児保護

 

 妊娠中絶実施または流産を扱った医師は、死んだ胎児が決して誤った利用をされないように注意を払わなければならない。

 

§8 避妊手術

 

避妊手術医学的、遺伝的または社会理由により許される。

 

§9 人工受精移植

 

 (1) 母体外での細胞人工受精とそれに引き続く子宮内への胚の移植、または配偶あるいは胚を遺伝的に母親である者の卵管に入れることは、不妊治療方法として医師業務であるが、医師がこの職業規則構成要素としている指針枠内においてのみ許可される。

 (2) この方法実施しようとし、それに包括責任を有する医師は、その計画医師に届け出て、職業法規上の条件を満たしていることを証明しなければならない。

 (3) 医師に対して、人工受精または移植協力することを義務づけることはできない。

 

§10 生涯研修

 

 (1) 職業従事する医師には、職業上の生涯研修を行ない、そのさいに職業を行なうに当って適用される規則を知る義務がある。

 (2) 生涯研修に適した方法以下の通りである:

  a) 一般または特別生涯研修行事参加する(コングレスセミナー訓練グループ講習、コロキウム)、

  b) 臨床生涯教育講義見学展示及び訓練)、

  c) 専門文献学習

  d) 視聴教材利用

 (3) 医師は上に示した生涯研修機会範囲で、自分職業を行なうために必要専門知識維持発展必要とされるものを利用しなければならない。

 (4) 医師医師に対して、(1)から(3)までに相当する生涯研修適当な形で証明できなければならない。

 

§11 質の確保

 

 医師には、医師業務の質を確保するために、医師によって導入された方法実施する義務がある。

 

§12 賠償責任保険

 

 医師は、職業上の業務枠内で、賠償責任請求に対して十分保険をかける義務がある。

 

§13 診療実施

 

 (1) 病院認可された私的病院を含む)以外外来診療医師業務を行なうことは、法律による別途許可がなければ、自分診療開業するということになる。

 (2) 開業は§34 該当する診療看板によって公示することができる。その場合医師は、診療場所専門事項並びに時間確定し、診療看板診療時間を示す義務がある。

 (3) 医師複数場所において診療時間を設けることは許されない。医師は、住民医療給付確保するために必要場合には、支所診療診療時間)の許可を与えることができる。

 (4) 医師は、開業場所と時、並びに総ての変更遅滞なく医師報告しなければならない。

 

§14 契約

 

 (1) この職業規則原則が守られるならば、医師によって雇用契約締結されてもよい。契約は、医師医師業務において、非医師による指揮を受けないことをとくに保証しなければならない。医師による指揮限が医師に対して存在する場合に、指揮を受ける医師はそれによって医師としての責任免除されることはない。

 (2) 職業上の利益が守られるかどうかを審査できるようにするために、医師は、医師業務に関するすべての契約を、その締結の前に医師提出しなければならない。

 

§15 医師記録

 

 (1) 医師は、職業実施のさいに確認されたこと及び行った処置について必要記録作成しなければならない。医師記録医師のための単なる備忘ではなく、規定に従った記録作成によって患者利益にも役立つ。

 (2) 他の法律規定によってそれより長期保存義務存在しなければ、医師記録診療終了後10年間保存される。医師経験から必要なときは、それより長期保存必要である。

 (3) §3 原則によって許される医師記録、カルテ、剖検記録、X線写真及び他の検査所見の引渡しは、報告書または意見鑑定)の作成関連して、これらの資料理解することが必要である場合に、これを行う非医師の職または診療に係わらなかった医師に対してもなされるものとする。

 (4) 医師はその診療記録検査所見が、診療を止めたあと管轄監督移管されるように心を配らなければならない。診療閉鎖または診療委譲に当って、患者に関する医師記録監督するために渡された医師は、これらの記録を鍵をかけて保管し、患者同意を得たときにのみ目を通すか、または譲り渡すことができる。

 (5) 電算記憶媒体または他の記憶媒体による (1)意味での記録は、その変更消去または合法使用を防ぐために、特別保管及び保護処置必要とする。

 

§16 意見及び証明作成

 

  1医師としての意見鑑定)および証明作成する場合には、医師必要注意を払い、良心に従って医師としての自分確信表明しなければならない。文書目的およびその受領者を明記しなければならない。医師作成義務づけられている、または作成を引受けた意見証明は、適切期限内に提出されなければならない。

 協力者及び卒後研修中の医師評価する証明は、申請または転出後3ヵ月の期限を超えてはならない。

 

§17 協力者の教育

 

 医師は、協力者の教育にさいして、職業教育のための法的規定注意を払わなければならない。

 

§18 医師報酬

 

 (1) 医師報酬請求適切でなければならない。算定に当っては医師報酬規則連邦法】が根拠となる。そのさいに医師は、個々のケースの特別事情、とくに給付難易時間消費衡平裁量考慮しなければならない。その場合医師不当方法によって通常金額より低くしてはならない。報酬協定を結ぶさいに、医師は支払義務収入及び経済状態考慮しなければならない。

公的医療保険報酬医師報酬規則で定められているので、この条文規定自由診療場合適用される。】

 (2) 医師親戚同僚、その家族および資力のない患者からの報酬全額または部分免除することができる。

 (3) 医師報酬請求通常少なくとも四半ごとに行うものとし、審査可能にするために、記録に基づいて分類するものとする。

 (4) 医師は、官庁委任または医師承諾があった場合にのみ、他の医師報酬請求妥当について鑑定をすることができる。

 

§19 同僚関係

 

 (1)  1医師相互同僚としての、また思いやりのある態度をとらなければならない。 2§16 1 項による医師義務は、意見並びに他の医師診療方法に関しても、良心をもって医師としての確信表明するのであれば、これに抵触しない。 3他の医師診療方法または職業上の良心について、事実に基づかない批判をすること、並びにその人物をけなす発言は、職業倫理に反することである。

  4同僚不正行為で、その診療業務から、または競争者として排除することは職業倫理に反することである。

  5実地修練医【医師免許取得前の修練、すなわち卒後の初期研修を行なう者】」、保険業務をするのに必要研修期間修了するための助手医師または代理医、または卒後研修助手医師が、それを行った診療所有者の同意なくして、そこで少なくとも3ヵ月行なった業務と同じ標榜診療を、その居住圏内において、2年以内開業することは、特に職業倫理に反することである。

  6医師は、職場を求めている同僚(特に卒後研修中)の苦境を、適用される労働契約や他の法規範をごまかしたり違反して職場提供する(例えば客員医師契約濫用)ことによって、利用してはならない。 7同じことは、数名の医師排除競争の中に引き込んで、雇用関係提供または促進することにも適用される。3)

 (2) 医師業務のために他の医師患者のところに呼んだ医師は、その医師が支払いを請求した場合にのみ、この医師相応の支払いをする義務がある。

 (3) 患者および医師でないものがいるところでは、医療行為に対する異議及び叱責するような教訓はやめるべきである。このことは上役及び部下としての医師、及び病院勤務場合にも適用される。

 (4) 医師にかかっている労働能力のない患者を、他の医師労働能力について再検査することは、主治了解を得たときにのみ可能である。社会保障、または公衆衛生機関任務の中の健康保険審査医業務の規定は、これに抵触しない。

 

§20 他の医師患者診療

 

 (1) 医師はその診療時間内にすべての患者診療することができる。他の医師治療を受けている患者から請求されたときは、医師は、患者またはその家族から、前にかかった医師に、そのことを伝えるようにさせなければならない。

 (2) すでにかかっている医師連絡が取れない状況にある患者のところに救急呼出された医師は、救急処置の終った後可及的速やかに、もとの医師報告し、その後の処置を任せなければならない。

 (3) 病院での治療が終ったあと、患者入院指示される前に治療に当っていた医師に戻されるべきである。外来治療または監視への再予約は、患者診療を受け持っている医師同意があるときにだけ許される。

 (4) 医師は他の医師から頼まれた援助を、止むを得ない理由がない限り断ってはならない。

 (5) 医師は、他の医師から送られた患者が、同人治療業務終了後も引続いて処置必要とするときは、再び戻さなければならない。

 (6) 対診場合関与した医師たちは患者家族のいる前で相談してはならない。医師たちは、誰が対診結果を伝えるかについて、意見一致させるものとする。

 

§21 代理医と医師協力

 

 (1) 医師自分診療を自ら行わなければならない。

 (2) 医師たちは基本的に、相互代理をすることを心掛けるべきである;引受けた患者は、代理が終ったら戻されなければならない。

 (3) 代理必要とする支障合計で3ヵ月以上12ヵ月以内に及ぶ場合には、代理診療従事することを医師に届け出るものとする。

 (4) 代理依頼しようとする医師は、代理人物規則で定められた代理に関する条件を満たしていることを確認しなければならない。

 (5) 死亡した医師診療は、亡人または扶養を受ける権利のある親族のために、通常歴年四半終了後3ヵ月の間は、他の医師によって継続することができる。

(6) 医師協力者【この医師の下で職業教育を受ける者】の業務は、開業による診療指導前提となる。これは医師に届け出るものとする。

 

§22 報酬による紹介禁止

 

 医師には、患者または検査材料紹介することによって報酬その他の便宜約束または供与させたり、または自ら約束または供与することは許されていない。

 

§23 医師業務共同実施

 

 医業共同実施診療場所診断及び治療設備共同使用するための医師たちの提携は、医師に届け出るものとする。

 共同での医業実施場合、【患者が】医師自由選択できることが保証されていなければならない。

 

§24 医師救急業務

 

 (1) 開業救急業務参加する義務がある。医師は、重大理由のある場合には、申請によって救急業務から全部部分または一時免除され得る。これがとくに適用されるのは:

− 身体障害のためそれができない状態にある、

− 特別負担のかかる家庭義務により参加要求できない、

− 救急サービスをともなった臨床待機業務参加すること;

− 女医場合には出産の少なくとも3ヵ月前と少なくとも6ヵ月後

 (2) 個々の救急業務制度実施については、医師発行した指針4)によって決定される。救急業務参加義務は、定められた救急業務地域適用される。

 (3) 救急業務制度は、現に診療に当っている患者のために、その病状必要としているケアーを担当するという義務から、医師免除するものではない。

 (4) 医師は、(1) により救急業務参加から免除されない間は、救急業務のための生涯研修もしなければならない。§10 準用される。

 

§25 宣伝推奨5)

 

 (1) 医師には、自分のため、または他の医師のためのいかなる宣伝も禁じられている。医師は禁じられている宣伝他人によってさせたり、これを容認したりしてはいけない。このことは、トリウム病院機関または他の事業における案内の中で、医師個人または業務推奨されるような形で取り上げられることにも適用される。

 (2) 医師は、同人医師業務に関して宣伝性格を有する報道及び写真報道が、同人名前写真または住所使用して公表されることを容認してはならない。

 

§26 医師間の情報

 

 医師自分業務供給できるものを他の医師に伝えてよい。この情報提供は、地理的に見て開業場所を取り巻く相応地域限定され、自分業務供給用意しているもの及び業務供給しているものについての知らせに限定されなければならない。情報は、権威のある卒後研修規則によって習得したが、標榜は許されていない資格自由選択卒後研修専門分域)の通知に及んでも宜しい。情報提供場合に、自分業務宣伝的な強調はいずれも禁じられている。

 

§27 社会での職業活動

 

 医師発表協力客観情報限定され、個人並びに医師行動宣伝的に強調されないのであれば、新聞、ラジオ、テレビにおける医学内容発表または医師協力は許される。その場合医師は、責任自覚した客観を持つ義務がある。同じことが医学内容一般への講演にも適用される。

 

§28 患者への情報提供

 

 医学内容客観情報及び患者治療のための組織作りの示唆のようなものは、医師やその能力宣伝的に強調するのでなければ、医師診療内で患者に教えて差支えない。

 

§29 医師と非医師

 

 (1) 医師は、医師でない者、及び職業従事する協力者に属しない者と一緒診断または治療を行なってはならない。医師は、このような者を見物として医師仕事の場に立入らせてはならない。医師の職または医療補助の職につくための教育を受けている者はこれに該当しない。患者近親者及び他の者は、医学根拠があり、患者同意するときには、同席しても構わない。

 (2) 医師患者治療効果目的で、医療技術慣例により、非医師との協力必要と考えられ、医師と非医師責任範囲明確に分かれているときは、(1) 意味での許可共同作業とはならない。

 (3) 医師は非医師代理をさせてはならないし、非医師自分名前患者治療または検査をさせてはならない。

 

§30 医薬療法及び装具処方推奨

 

 (1) 医薬療法及び装具処方に対して、製造者または販売者から報酬またはその他の経済便宜請求したり、または受領することは、医師には許されていない。

 (2) 医師医療商品見本有償で他に回してはならない。

 (3) 医師はその処方濫用助長してはならない。

 (4) 医師患者に、しかるべき理由なくして、特定薬局または商店指示してはならないし、また医薬療法及び装具仮名や明らかでない記号処方することを、薬局商店協定してはならない。医師医薬療法及び装具処方にさいして、客観に示せる理由なしには特定製造者の製品指名すべきではない。

 (5) 医師治療詐欺への戦いに協力すべきである。

 (6) 産業において医師科学として協力している者の業務は、医薬療法及び装具作用使用方法に関する医師への専門情報提供限定すべきである。このような医師には、薬局販売人または他の非医師の下で注文のために宣伝することは許されない。

 (7) 医師には、自分処方業務から判明した好ましくない医薬作用をドイツ医師医薬委員報告する義務がある。

 

§31 医薬療法及び装具についての鑑定

 

 (1) 医薬療法及び装具身体介護器具または類似商品に関して宣伝講演をすること、宣伝利用されるかもしれない意見または証明を出すことは、医師には許されていない。医師は、自分意見及び証明がそのように利用されることを、受領者に対して明確禁止しなければならない。

 (2) 医師には、医師職業上の肩書を付した自分名前不正方法宣伝目的のために、例えば会社名または医薬表示提供することが禁じられている。

 

§32 医師産業

 

 (1) 医師医薬治療器具装具または医療機器製造者のために仕事を行なった場合(例えば、開発治験及び鑑定)、このために定められる報酬相応範囲を超えてはならず、また行なった仕事相当するものでなければならない。

 (2) 医師には、そのような製造者からのあらゆる種類宣伝贈物を受け取ることは禁じられている。これは僅かな価値の物に対しては適用されない。

 (3) そのような製造者の情報提供行事のさいには、ただ情報交換主体であって、もてなしのために相応費用及びこれに相当する便宜(例えば旅行費用)が提供されないように、医師注意をしなければならない。

 

§33 公示名簿

 

 (1) 開業または認可についての日刊新聞での公示は、診療アドレスの他に、医師看板に認められた事項だけを含み、開業または保険診療採用後の3ヵ月以内に、同じ新聞に3回だけ公示することができる。開業及び認可に関するそれ以外公示禁止されている。

 (2) その他として、診療閉鎖診療引渡し、診療からの長期不在または病気、並びに診療移転及び診療時間または電話番号変更場合にのみ、日刊新聞公示することが許される。このような公示最高2回まで出してよい。

 (3) 新聞公示形式内容は、その地方慣習に従わなければならない。

 (4) 医師は、以下条件適合するなら、公的に定められた情報媒体登録して差支えない。

   1. それは、総ての医師に対して同じ条件で、同じように無償登録提供していなければならない;

   2. 登録公示できる標榜限定されていなければならない(§34);

   3. リストまたは医師登録予定した箇所には、医師だけを掲載しなければならない。

 これらの条件相当しないリストの作成医師協力してはならない。

 

§34 診療看板

 

 (1) 医師診療看板名前医師称号、または卒後研修規則によって標榜を許された称号表示し(専門称号重点領域称号または付加称号)、診療時間公示しなければならない。取得した専門称号重点領域称号及び付加称号は、卒後研修規則によって許可された形式であること、そして医師該当する専門領域重点領域または特殊領域従事するときにのみ標榜することができる。

 (2) 患者直接関係する業務従事しない医師は、医師通知すれば、診療看板による開業公示をしなくてもよい。

 (3) 看板には、(1) による表示の他に、医学アカデミック学位医師肩書自宅及びその電話番号を含めてよい。他のアカデミック学位は、学部名と結びついたものだけを示してよい。

 (4) 以下表示は、条件存在するならば、診療看板に示してよい:

   a) 保険認可

   b) 一期間だけの医師

 (5) 1Professor 」の称号は、それが医学提起し、該当する州の省によって授与されたものであれば、標榜してよい。 2外国大学医学から授与された称号は、医師判断によってドイツの「Professor」の称号同等である場合には、同様適用される。

 (6) (5) 2項によって標榜できる外国取得した称号は、外国授与証書版に掲載されている。

 (7) 共同診療従事している医師は、「共同診療」と付け加えて表示しなければならない。

 (8) その他の付加表示禁止されている。

 

§35 看板設置

 

 (1) 診療看板は、医師診療住民に伝えるものでなければならない。それはどぎつい体裁設置されてはならないし、通常寸法(約35×50p)を超えてはならない。

 (2) 特別事情がある場合、例えば診療入口が隠れた場所にあるときは、医師医師同意を得て更に医師看板設置することができる。

 

 (3) 診療移転のさいは、医師はその旨を記した看板半年期間まで元の家屋設置することができる。

 (4) 医師必要場合には、医師承認を得て、開業住所にはなく、専ら特殊検査または治療目的使用する(例えば手術診療場所を、指示看板表示することができるが、それには名前医師称号及び「検査場所」または「治療場所」の指示を、他に何も付け加えずに示してよい。

 

§36 便箋処方用紙スタンプ及びその他の文書往復記載

 

 便箋処方用紙名刺及びスタンプ並びにその他の文書往復記載には§34準用される。医師職務名称文書往復において示して差支えない;卒後研修規則によって業務場所でのみ標榜できる称号にも同様適用される。

 

§37 ヨーロッパ共同域内での自由職務遂行交流

 

 この職業規則は、ヨーロッパ共同の他の加盟国の国籍所有し、この職業規則適用地域において一時職務を行なう医師にも適用される。

 

§38 移行規定

 

この改訂発効のさいに「Professor」の称号標榜する者は、その称号がドイツの官庁から授与されたものであれば、引き続いて標榜できる。外国取得した「Professor」の称号に対しては、§34 (5) 該当する規定が、この規則発効の前に標榜されていた称号にも適用される。

 


本文

1)  §2 説明義務」に記した「患者への説明のための提案」は Deutsches Arzteblatt (ドイツ医師誌)1990419日、16号、に発表されている。

2)  §3 (7) に記した指針199138日のドイツ医師理事会の会議によって決定した。

3)  §19 (1) 6 7 項に対する連邦医師理事会の注解

連邦医師理事会は、ドイツ医師議の決議表明された意志形成傾向内容的には承認した。しかし、連邦医師理事会は、ドイツ医師議で可決された本文法規として職業規則採用することに関しては、職業規則委員委員法律顧問によって表明された懸念も取り入れて、提出された原稿表現法的規定要求には十分であるという意見を示した。ドイツ医師議で採択された原文は、決議性格を有し、そのようなものから部分引用されたものである。しかし、職業規則のなかで医師義務確立するという、医療職法(Arztekammergesetzen 医師法)から医師への権限付与は、規則を作るという任務である。これは職業規則規定を、職業裁判上の判決基礎となりうる構成要件編集することを意味する。職業規則§19 (1) 議決された本文は、この要請には十分である。

法律相談会議は、職業規則§19 (1) に対して、職業規則採用されることを州医師に勧める下記のような表現提案作成した:

職業規則§19 (1) の中に、4 項に続く文章挿入する:「同僚不正方法通常報酬以下または無報酬従事させる、またはそのような従事に手を貸すことも、職業倫理に反することである」。

4)  医師救急業務のための指針」の提案 Deutsches Arzteblatt 1978720日、29号に発表された。

5)  医師発表活動のための指針」は

Deutsches Arzteblatt 1979111日、2号に発表された。

 


 

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訳者


【この規則で述べられている自由営業内容は、日本感覚とは違いがある。Creifelds:法律辞典によると、自由種類以下自立した職種となっている:医師歯科師、獣医師、療法医療体操士、助産治療マッサー士、心理資格弁護会員弁理公認会計税理士国民経済及び企業経済顧問専門宣誓した会計税務代理技師建築商業化学水先案内人、専業鑑定ジャーナリスト写真報道家、通訳者、翻訳者及び類似の職、並びに科学芸術文筆教師及び家庭教師。しかし、これらの自由職種商店手工などの自立営業者との区分は、必ずしも統一されたものではなく、他の国にはないドイツに特有分類であるという。】


 


訳者解説

200712月に一部記述修正

 


開催して医師に関する重要案件討議して議決を行う。連邦医師理事会に ここに示した「ドイツ医師のための職業規則」は、医師の守るべき義務及び倫理を示したものである。この職業規則は、戦後組織された連邦医師中心課題として1956年に制定されたが、その後頻繁改定が行われ、1997年の改定によって現在のような内容体裁に改められた。その後も頻繁改定が行われているが、ここに紹介するのは2003年版のものである。

 この職業規則については、1970年版D1181993年版D1011997年版D1192003年版D129をこのホームページ掲載している。

 この規則改訂は、定例的に5月に開催されるドイツ医師議(ドイツ連邦医師代議会)において議決され、その内容はドイツ医師雑誌Deutsches Ärzteblatt掲載される。この会議議決された職業規則は「雛形原型Muster」と称せられる。この雛形職業規則は、その後各州の医師において議決され、その州の監督承認することによって法的効力を持つことになる。現実として、総ての州において、この職業規則がほぼ原形のまま採用されている。

 ドイツの州医師医師自治組織であるが、州政府から医師監督委譲されている。州の医療職法は州医師組織任務などを規定しているが、それに従って州医師医師職業規則をはじめ卒後研修規則生涯研修規則救急業務規則裁判紛争処理関連する規則など、各種規則を州政府承認の下に作成して実行し、各種医療行政関連法規で定められた諸事項も実施する。州医師自治組織でありながら、自主管理の形で行政行為も行うという特殊任務を果たしている。そして州政府は、それが適切に行われているかどうかを監視する立場にある。

医師業務会員医師会費各種手数収入によって運営され、州政府からは財政的な援助を受けない。会費の額は医師としての収入対応し、その率は各州医師会費規則によって定められているが、医師としての収入0.5前後で、州によって異なる。医師免許所有者は州医師会員になる義務がある。しかし、監督所属する医師には加入義務はない。

 連邦医師は州医師作業共同といった性格を有する。各州からの医師代議(医師数に比例)によって構成されているが、州医師と異なり私的組織であって、ドイツ医師議をよって医師職業規則や卒後研修規則をはじめとする各種規則指針勧告などが企画立案され医師議で議決される。連邦医師経費医師個人からではなく、州医師からの拠出による。

 一方連邦医師医師免許規則(医学の卒前教育医師国家試験規定)などは、連邦社会福祉保健医療省(厚生相当)の管轄となっている。

医師監督医師との間、医師相互間、医師患者との間で、医師職業義務違反倫理違反などでトラブルが生じた場合に、医師における懲戒委員医師職業裁判、あるいは通常裁判審理されるが、この職業規則重要判断基準となり、強い拘束を有している。

ドイツには医師職業裁判という制度があり、その手続等を規定した法律は各州ごとに制定されているが、その基本共通していて、裁判職業裁判医師から選出された名誉裁判とで構成される。そのような法律として、本ホームページD107医療職法」にノルトライン−ヴェストファーレン州のものを掲載した。

医師職業裁判医師義務違反倫理違反審査し、医師違反が認められれば注意戒告罰金医師免許停止剥奪、あるいはそれらの併科処罰として決定する。その判決集も出版されているが、判決の数ケースをこのホームページM408紹介した。

医師職業規則をはじめとして、ドイツ連邦医師作成する各種規則指針勧告、また医師大会議事などは、連邦医師刊行するドイツ医師雑誌発表され、同時医師ホームページにも掲載される。この雑誌一般臨床医向、勤務医向などに分かれていて ABC の3種類の版があり、同時発行されるが、広告頁数が異なるため、記事掲載頁は異なっている。基本A版であるが、国内図書ではB版やC判を購入しているところがあるので、検索に当たっては注意必要である。1996以後記事ホームページ掲載されている。http://www.aerzteblatt.de/

なお、各州はそれぞれの州医師雑誌発行しているが、それには生涯研修プログラム、各医療における専門充足状況など、より現場医療密着した情報掲載されている。

 この医師職業規則1976年版の翻訳下記論文掲載されている。 

宇都木伸:西ドイツ医師職業裁判東海法学 第1号 127-195,1987

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