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「生涯研修の罰則付き義務化」に関連する資料

ドイツの医師には生涯研修が医師職業規則によって義務付けられていたが、20046月から罰則付きの義務化に改められました。

そこで義務化と罰則に関連する以下のような資料を紹介することにしました。

M422     生涯研修の罰則付き義務化と実施状況についての概説

D133     法律(生涯研修の義務と罰則を規定した公的医療保険の法律の条文)

D134 本資料 生涯研修の実施と評価を規定した州医師会の規約

 

 なお、以前に数編の生涯研修を扱ったファイル(D109M404M418P501T605)を載せています。その中には現状と合わなくなっているものもありますが、時代の流れを知るということでは意味があるかもしれません。

編集と翻訳 岡嶋道夫

 

D134

生涯研修と生涯研修修了証書の規約(原型)

Muster-Satzungsregelung Fortbildung und Fortbildungszertifikat

 

§1 生涯研修の目標

医師の生涯研修は、専門的能力を保持し、これを常に最新のものとするのに役立つ。

§2 生涯研修の内容

生涯研修によって、科学的知識と新しい医学的方法を考慮しながら、能力の保持と進展に必要な医学の知識と医学的技術が伝達されなければならない。生涯研修は専門科固有ならびに専門科間及び専門科を包括する知識と臨床実務的能力の習得を包含しなければならない。生涯研修はその場合、全ての医学の専門方向に均衡を保って広がるものでなければならない。医師の生涯研修はコミュニケーションや社会的な能力の改善も含んでいる。医師の生涯研修はさらに質保証、質のマネジメント及びevidence based medicineの方法を取り入れる。生涯研修を適正な範囲に及ぼすために連邦統一の基準を考慮しなければならない。

§3 生涯研修の方法

(1)       医師は各自の生涯研修の種類を選ぶのは自由である。知識習得の仕方は、個人によって異なった学習様式を採用してよい。

(2)       生涯研修が(3No.2による生涯研修企画への参加によるものであれば、医師は医師会が認定した生涯研修方法を遵守してその義務を果たさなければならない。

(3)       生涯研修の適切な方法は主として:

1.    メディアによる自己学習(例えば、専門文献、視聴覚教材、構築された対話形式の生涯研修);

2.    生涯研修の催しへの参加(例えば、コングレス、セミナー、練習グループ、クルズス、コロキウム、質のサークル);

3.    臨床生涯研修(例えば、病院実習、症例呈示);

4.    カリキュラムが作られていて伝達される内容、例えばカリキュラム生涯研修、卒後研修クルズス(専門医研修のための卒後研修規則によって規定されているもの)、付加的学習過程【これは特別な診断治療技術を学んで付加的資格を取得するための学習】。

§4 生涯研修証明の企画運営

(1)       職業的生涯研修義務を証明する基本として、医師会は独自に生涯研修を提供し、かつ適切な生涯研修の認定よって、会員の生涯研修を促進する。

(2)       医師会の生涯研修修了証書(§5)は生涯研修義務とその証明を支援するものであるが、生涯研修修了証書は各医師から以下の規定で定められた条件を満たしたという申請を受けて医師に交付されるものである。

§5 医師会の生涯研修修了証書

生涯研修修了証書は、医師が申請を提出するまでの5年の期間内に生涯研修を完了したときに交付されるが、これは規定§6により算出された最低値が合計で250点に達しているということである。

生涯研修修了証書の取得に対しては、§6(2)に規定された生涯研修方法だけが認められる;さらに§7により算入可能な生涯研修方法が予め認められていることが条件となる。§12については触れない。認定の手続は§7-§11に従う。

§6 生涯研修方法の評価

(1)       生涯研修は点数で評価される。基本は45分間の「生涯研修単位」である。カテゴリーと評価の段階は(2)に個別に示した。

(2)       生涯研修方法の以下の種類は生涯研修修了証書に適合するものであって、評価は以下の通りである:

 

カテゴリー A:

講義と討論

生涯研修単位に対して1点、18点が最高;

 

カテゴリー B:

国内及び国外の数日間にわたるコングレス、カテゴリーAあるいはカテゴリーCに相当する個々の証明が得られないときは、半日に対して3点、あるいは1日に対して6点;

 

カテゴリー C:

各参加者が予め構想をもって協力する生涯研修(例えばワークショップ、作業グループ、質のサークル、Balintグループ【訳者は内容を知らないが、職業に関連した対人的な問題を討議によって片付けたり克服したりする教育方法で、解説した書物が出ている】、小グループ作業、supervision、症例カンファレンス、文献カンファレンス、実地練習)

1.生涯研修単位につき1点、4時間までの実施に対して1追加点。

. 1日につき最高2追加点;

 

カテゴリー D:

印刷物、オンライン・メディア及び視聴覚メディアによる組織構成された対話形式の生涯研修で、書類の形式で学習成果が評価されるもの。

学習単位につき1点;

 

カテゴリー E:

専門文献及び専門書ならびに教材による自己学習。カテゴリーEに入るものは、5年の期間に最高50点まで認定される。

 

カテゴリー F:

学術的発表及び講演

1.著者は1論文につき1

2.講演者/質のサークルのモデレータは、参加者としての点数のほかに、一つのプレゼンテーション/ポスター/講演につき1点を追加取得する。

 

カテゴリー G:

病院実習
1
時間につき1点、一日につき最高8点;

 

カテゴリー H:

カリキュラムによって伝達される内容、例えばカリキュラムを組んだ生涯研修方法、専門医研修のために作られている卒後研修規則によって規定されている卒後研修クルズス、付加的学習過程。
生涯研修単位につき1点;

 

学習成果の
チェック:

これを行った場合、カテゴリーA及びCでは1追加点。

 

§7 生涯研修方法の認定

(1)       基本的には§62)のカテゴリーAからD、GからHの生涯研修方法だけを生涯研修修了証書の交付の根拠とすることができるが、これらは実施前に州医師会によって認定されていなければならない。§6(2)のカテゴリーFに関しては、医師は生涯研修修了証書の交付申請を提出するときに適切な証明を添えなければならない。

(2)       他の企画者による生涯研修方法は§8及び9によって認定されなければならない。

§8 生涯研修方法の認定の条件

(1)       生涯研修方法の認定は、提供される生涯研修内容が条件となる

1.    職業規則とこの生涯研修規約の目的に合致する;

2.    医師の生涯研修の質保証に対する連邦統一の医師会勧告(医師生涯研修のための連邦医師会勧告)を考慮している; 【この勧告は2003年に作成されたが、教育学的な観点からの詳細な指示なども含んでいて、本規約の3.3倍の内容がある。連邦医師会の版権があるが、翻訳と許可が完了したら紹介したいと思っている】

3.    経済的利害と無関係である。

生涯研修は原則として医師に公開されていなければならない。企画者と担当者は企業との経済的結び付きを医師会に公開しなければならない。

(2)       §62)のカテゴリーAからD、G及びHの生涯研修方法に対しては、学術的責任者として原則として医師が選任されなければならない。

§9 生涯研修方法を認定する手続

(1)       認定は企画者の申請によってなされる。申請では§82)による責任者を指名する。

(2)       認定手続きのために医師会理事会は指針を決定する。指針は、§62)のカテゴリーAからD、G及びHで考慮される全ての方法に対して、連邦医師会の基準に基づき以下の諸点に配慮して認定の条件を統一的に定める:

1.申請期限;

2.申請内容;

3.学習成果をチェックする方法;

4.参加者リスト;

5.参加者証明書;

6.生涯研修の種類による認定に対する特別規定。

(3)       企画者は書面によって§8(1)2 による連邦医師会の勧告が守られていることを説明しなければならない。

(4)       企画者は、参加する医師の同意を得て、認定された生涯研修の催しに参加した証明を医師会に直接届けることを、医師会から委任してもらうことが可能である。

§10 生涯研修企画の認定

適格な企画者は、申請により、その者によって実施される全ての企画または特定企画に対して、生涯研修企画が個別に審査を受けなくても認定が得られるという承認を医師会から付与してもらうことができる。この承認は条件づきである。その場合、企画者が企画の選択及び評価にあたり、この規約の規定に明らかに準拠していることが保証されなければならない。

§11 生涯研修方法の相互認定

医師会(州)は相互に、他の医師会によって認定された生涯研修方法を生涯研修修了証書の交付の根拠として認定する。

§12 外国における生涯研修

(1)       外国で行われた生涯研修方法は、それがこの生涯研修規約の条件に本質的に該当するものであれば認定される。事前に認定しなくてもよい。

(2)       医師は、§8による基準が守られていることを審査できるような生涯研修の種類に関する証明を持っていなければならない。